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政府の児童虐待防止策は子どもたちに届いているのか?


編集部 かわすみ かずみ

児童虐待が深刻化している。死に至る事件もある中で、政府は有効な対策を打てずにいる。被虐待児者の支援者に、児童虐待支援政策について聞いた。

今一生さん(56)はライター兼編集者で、被虐待児·者の支援活動を行う。虐待経験を手紙形式で集めた書籍「日本一醜い親への手紙」の出版によって、児童虐待の実態を伝えた。日本各地で「子ども虐待防止策イベント」を行うなど、精力的に活動する。

全国の虐待通報件数は毎年増加しており、大阪府は人口1000人あたりの相談件数が8.52件(福祉行政報告例2016)でワーストワンだ。今さんの調査によると、児童相談所への相談件数は2013年以後急増しているが、児童相談所や職員数は、全く不足している。

また、奈良で、成人した被虐待者の支援などを行う菊池啓さんによれば、児童相談所から養護施設などに保護されるケースは約1割で、ほとんど保護されていないという。菊池さんが最も不合理だと感じるのは、被害にあった子ども達が隔離され、加害者が放置されやすいことだ。子ども達は遠くの施設に隔離されると、それまでの人間関係が遮断され、孤立する。また、施設内での職員による虐待や里親先でのそれがあっても、他に行く場所がなく、耐える以外ない。

菊池さんは毎週、ツイッターのスペース機能(音声でリアルタイムで話せる場)を使って被虐待者と語り合う。各回平均20人前後の成人した被虐待者が集う。特に男性の性虐待被害者は、周囲に語ることができず、苦しむことが多いという。男性の場合、強要された性関係であっても、苦痛と感じてはいけないような風潮があり、虐待と捉えられないことも多い。女性でも、性的虐待の相談はしにくく、政府統計でも極端に相談件数が少ない。性的虐待は把握しにくく、対応も取りにくい。特に思春期以後、その意味を理解し始めた頃からは語れないという。

多くの死に至る虐待は、家庭への不介入を原則とする児相の対応の遅れと、家父長制を柱とする親権によって起こる。虐待相談件数増加に歯止めがかからないことや、支援策が当事者に届いていない現状から、今さんは政府の虐待防止策は効果がないと断言している。

被虐待者に必要な支援は何か?今さんは、①子ども達が経済的に自立できるシステムの構築、②親権をフリーにして、子どもが親を選べるようにする、③親権者に法的責任を果たさせるよう、同者に支援·治療·教育の機会を提供すること④保護の民間委託を実現すること、を提案する。菊池さんは実際に支援する中で、精神的ケアを保険適用し、負担は加害者が行うべきだと訴える。

現在、「子ども家庭庁」創設に向けた審議が進んでいる。被虐待者は「家庭」という言葉が虐待を思い出させることから、「家庭」という言葉を入れないでほしいと要望した。だが、家父長制を重んじる自民党はこれを却下した。親権が子どもの権利を奪っていることを知っている議員は少ない。「子ども家庭庁」が本当に「子ども真ん中」の政策を作れるのかは、不透明と言わざるを得ない。


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