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社員が自主的に成長する「全員活躍チーム」の作り方 -はじめにー

 アベノミクス、中国マーケットの変調、TPPの大筋合意など、経済や産業は急速な環境変化が起こっています。そんな中で経営の生命線である人材の確保・育成・定着・配置などは、常に経営者の悩みの種です。グローバル化とIT化が進む中、企業の競争は激化している一方でチャンスも到来している昨今、多くの企業では「欲しい」人材の不足に悩んでいるのが現状です。少子高齢化による生産人口の減少や雇用のミスマッチなどを背景に、人材不足はどの業界にも共通の問題です。

 このような状況に対し、一人ひとりの労働生産性を向上させようと、自社の人材を育成することに力を入れている企業が増えています。実際、産労総合研究所の「2015年度教育研修費用の実態調査」では、48.7%の企業が教育研修費の予算を増やしたと回答し、実際、従業員1人当たりの費用は前年度から15.2%増加しました。

 一方で、働くことに対する社員の意識も変化しています。
雇用形態が多様化し、ワークライフバランスへの意識が高くなった近年では、特に若者世代で、会社のためよりも自分のために働く傾向が強まっています。そのため、「自分が必要とされている」「自分の力が発揮できる」といった満足感が得られないと、すぐに働く意欲を失ってしまいます。

 ところが、人材育成に費用をかけても、なかなか良い人材が育たないと頭を抱える経営者は少なくありません。実際、私に人材育成の問題を相談される経営者の方々からも、最初に口について出てくる悩みは「社員の自主性が育たない」「研修を実施しても思うような効果がなかなか上がらない」といった声を多く聞きます。
 こうした悩みを抱える経営者や人材育成担当者に共通しているのは、「人材育成」に非常に熱心ということです。しかし「人材」にばかり目がいくために、人を育てるための土壌、つまり「組織風土」に対しては、ほとんど目が向いていません。個々の人材育成は行っても、組織での「つながり」や「連携」を育てようとはしていないのです。「うちの会社は仲が良い」と言う社長もいるかもしれませんが、 「仲が良い」からといって「士気が高い」 、あるいは「業績が良い」とは限りません。社員同士の共通の目的や目標、それに対する協力体制がないため、個人の力が最大限に引き出されることもなく、組織力は上がらないままとなります。

 OECDの2013年調査では、日本人の労働生産性は加盟34カ国中22位、先進7カ国中最下位となっています。派遣問題やサービス残業にリストラなど、雇用や人材活用における我が国が抱える問題は枚挙に暇がありません。安定しない雇用環境に働く側もより良い職場を求めて転職を繰り返すなど、職場環境でのまとまりや一体感は一層薄れ、個々の人材が個の力だけを評価されることが増えています。さらに、せっかく自社で教育して良い人材に育てても、他に魅力的な職場があれば、すぐに転職されてしまうリスクも高まっています。
 このような状況で、組織として一体感があり、個人ではなくチームとしてのパフォーマンスを最大化させるには、どうすればいいのでしょうか。
 私はこれまで約20年間、現場では人材教育を行い、10年にわたる研修講師やコーチング等での人材育成・組織開発の現場経験を積んできましたが、一つ断言できるのは、これからは人材を「個々」に対して「育成」するのと並行して、「チーム」を育てなければならないということです。
 社員の一人ひとりが自らの役割を認識し、チームとして互いに連携しながら充実感を得ることができれば、人材も組織も自ずと成長していくのです。反対にどんなに「個々」の能力が高くても、「チームとしての力」がなければ、個々の能力も最大限に発揮されないのです。

 つい先日、日本中を沸かせたスポーツ界のニュースが飛び込んできました。ラグビー日本代表が4年に一度のワールドカップで、世界の強豪・南アフリカに接戦の末34対32で大金星をあげたことです。日本ラグビーといえばワールドカップ通算成績1勝21敗2分の勝てないチームだったそうですが、今大会ではなんと3勝もあげました。惜しくも決勝トーナメント進出は叶いませんでしたが、チームがこの4年間で大激変したのは間違いありません。

 その大躍進の要因の一つにテレビで取り上げられたのが“チームコーチング”でした。ビジネスにおけるチームコーチングをラグビー日本代表チームも実践して、チームの変化を促し、大きな成果に繋げたというエピソードに、あらためてチームを強くするポイントとは何かを再確認させられた出来事でした。

 そこで本書では、最新の組織開発手法「チームコーチング」の実務経験をもとに、社員一人ひとりが自らの役割を理解し、チームとして互いに連携しながら成果と成長を追求する「全員活躍チーム」の作り方を紹介します(本文中は、「真のチーム」「精鋭チーム」と呼ぶことがありますが同義と思って頂いて結構です)。この全員活躍のための「チーム制」導入の際の構造化や具体的なポイント、リーダーとしてのチームへの関わり方、また、その「在り方」など、読んですぐに実践できる具体的な内容や探求し続けていただきたいテーマを取り上げています。

 この本がきっかけとなり、皆さんと皆さんが所属するチームが活き活きと望む成果と成長を勝ちとり、事業を継続・発展させていただくことができれば、これに勝る喜びはありません。

2015年11月吉日
小笠原健

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