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【要約/ビジネス書】能力はどのように遺伝するのか・ブルーバックス【安藤寿康/講談社】



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『はじめに』
今年は暖冬と言われていますが、突然雪が降ったりポカポカ陽気になったりと、体調を崩しやすい日が続いております。しかし、部屋で読書に勤しむことはそういった外の気候が全く関係ありませんので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりしたビジネス本の感想を書こうと思います。
私に刺さった部分だけの要約ですので、内容に少しでも興味を持たれた方は、是非とも購入&全文の精読をおすすめ致します。

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今回は、ほんタメ2023年11月11日配信動画「積読本を解消します」で、ヨビノリたくみさんが紹介しており、それで気になり購入したビジネス本です。



上記動画内(17:48~)では、『結局結論はなんだったんだ。タイトルに答えてねーじゃん。ということで、本の感想は酷評されている』と説明されていました。

ただ、こういった感想を持っている方は、本作「はじめに」に書かれている、

最新の「行動遺伝学」とその関連領域の知見をふまえて、これまでにない緻密な考察をしてゆく。

P5ℓ6~7

危惧されるのは、こうした最新知見をもとにせっかく本書でしつこいほど緻密な考察をしても、「あぁ、要するに遺伝が大事ってことね」「ふんふん、遺伝といえば、生まれつき決まっていて、環境じゃ変えられなくて、親がこうだったら子もこうなるって話ね」で終わってしまうことだ。

P6ℓ10~13

ということを読まずに、購入してしまったのかなと思います。

ただ、これに関しては、出版社側にも大きな責任があると思います。

画像のように

「大谷翔平」や「藤井聡太」はどうして生まれるのか?


と帯に書いてしまっては、タイトルの答えを知りたい(大谷翔平や藤井聡太を生み出すためにはどうしたら良いのか)といった上記のような感想を持ってしまうことは不可避です。

自分の子供のためにどうしたら良いのかといった、具体的な手段・考え方を求めるのではなく、「遺伝と才能」について、最新の研究を基にした考察を知る(知識を深める)という目的のためには、大変有意義な一冊でした。

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本作の要点は以下になります

第一章 遺伝子が描く人間像

①遺伝子は多様でランダム
 一組の父と母から生まれうる遺伝子の組み合わせは、およそ「3の二万乗」通りあって、遺伝子のバリエーションが生まれる仕組みも、その伝達の仕組みもランダムであり、そこに人間の文化的な意味は元々一切含まれてはいません。

②遺伝子発現のダイナミズム
 DNA上にある遺伝情報は、時季と状況が来たときに発言スイッチが押されるものであり、外側から遺伝情報が書き換えられることは無いです。

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第二章 才能は生まれつきか、努力か

①「才能は生まれつきか、努力か」という問い
パーソナリティは「生まれつき」のもの(=非学習性の非能力)の代表的能力である。例として、「勤勉性」もあげられる。但し、生まれつきのものというのは、がちがちに固定されたものではなく、程度の幅は存在している。

②能力と生まれつき
 知識や能力は、学習する環境が無ければ獲得することは無いので、遺伝は無関係に感じる。しかし、学習するときに使う様々な「認知的機能」には遺伝的な影響があり、遺伝的個人差が発生する。

③「遺伝か、環境か」という問い
 親や自分が生まれ育った土地の風土・人が作り出す物理的・社会的世界など、子供の頃の環境については、親ガチャと言わざるを得ない。

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第三章 才能の行動遺伝学

①MRIが明かした脳の遺伝と環境
 一卵性双生児の脳の構造は、輪郭といい内部構造といいほとんど同一と言って良いほどよく似ている。さらに、こういった外部要件だけでなく、脳の各部位、つまり皮質の表面積や厚みや神経細胞の厚みについても極めて高い遺伝率が見いだされる。

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第四章 遺伝子が暴かれる時代

①日本人には日本人のサンプルが必要
 学歴とIQの間にはある程度の相関があり、サンプル数が100万規模になると、誤差を考慮してもなお知能の代替指標として使えることが分かったが、今の研究は西洋人のサンプルをもとにしており、日本人に同じような計算を当てはめるためには、日本人のサンプルが必要である。

②親ガチャは(ある意味・一部分では)正しいけれど
 「親の社会階層は子供の社会達成を左右する」という意味では、親ガチャは正しいと言わざるを得ない。ただし、遺伝はそれに影響されず、どんな環境でも個人差を生み(=格差をシャッフルさせる)、貧しい家庭に生まれたとしても、本人に遺伝的才覚があればのし上がれるということも正しい(逆もまたしかり)。

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第五章 遺伝子と社会

①「自立性を育てる教育」は必要か
 日本のノーベル賞受賞者数は、アジアで断トツの一位。21世紀からは、アメリカに次ぐ第二位。スポーツや芸術の分野でも、世界最高ランクに位置している個人も多々見られる。また、アフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲さんのように、国際社会で活躍している人も多いなど、今までの教育でも充分に良い未来を生み出しているのではないか。

②人間を救うのは自然の能力
人間の世界を本当に救ってくれるのは、確固とした遺伝的素質から生まれ出た「自然の能力」であって、環境や教育によって人為的に作り出されたものではありえないという、漠然とした、しかし、確固とした確信を筆者は持っている。

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本作は、上記のように、あまり評判は良くない一冊になってしまったようですが、実際に読了してみると、私にとっては、新しい発見があり大変興味深い内容でした。

特に、遺伝や才能といった、日常的に触れ合うことが多いにもかかわらず、それについてきっちり説明したり、今までに専門的な勉強をしてきたことが無いような、つまり、中々ぼんやりとしてしまう内容について、写真や図・グラフを交えて、数学的・医学的に説明されることは大変有意義でした。

「遺伝や才能」について理解を深めるためにも、皆さんも、じっくりと読みこんでみては如何でしょうか。

第五章の①は、私も常々思うところです。

確かに、自立した人間になることが出来れば、これからの社会がどのようなものになったとしても、それに対応して生活することが出来ます。

しかし、当たり前ですが、全員が全員自立した人間になることは難しいです。各人に合った生活を行なえば、無理に自立するということは必要ありません。
ある程度、現在の教育で成果も出ているのにも関わらず、わざわざ根本を変化するひつようがあるのでしょうか。

これは、「とにかくみんな一緒に同じ目標を目指しましょう」という、日本の良いところでもあり悪いところでもあるところが影響しています。

教育に正解も不正解もありませんから、「一つのスローガン」を掲げ猪突猛進するのではなく「様々な教育機会を提供する」ことが必要だと思います。



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