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読書記録|百田尚樹『海賊と呼ばれた男』

読了日:2021年10月15日

 2014年初版の歴史小説。
 企業名や登場人物の名前は変えてはあるが、現在の出光興産の創設者の出光佐三氏の物語。

 第二次世界大戦末期の焼け野原の東京で、出光佐三(作中では国岡鐵造)がその光景を見ているところから始まる。
 国民に敗戦が知らされ、社員も意気消沈しているところに、

「この国は必ず立ち直る。今後日本には石油が必要になる。ひとりもクビにはせん」
 
 と立ち上がる。

 戦後のズタボロになった日本で、GHQや石油メジャー、それらに買われた役人などからの妨害にもめげず、死に物狂いで武器を持たずに戦った男たちがいた。
 今では平然と私達が消費している石油だが、これがなければ人々の生活はままならない。
 それを必死に守ってくれたのだ。

 第二次世界大戦後から1970年代まで世界の石油生産を独占していた、セブン・シスターズ7社の内の一社であるロイヤル・ダッチ・シェル(シェル石油)が1985年に昭和石油と合併し昭和シェル石油となり、その昭和シェル石油は2019年に出光興産と経営統合の運びとなる。
 時代の流れに合わせて物事は変化していくもので、その時代時代で最適解を選んだ結果が目の前に在るだけだが、出光興産のSSと、昭和シェル石油のSSが統合されたSS「apollostation」を見るたびに色々な思いが巡る。

 あの頃、日本の国民と日本の復興のために命を賭して石油を守り抜いた出光佐三の姿を想像すると、心からの感謝をせずにはいられない。

 物語の中で、同じ著者が書いた作品、多くの人を泣かせたあの『永遠の0』のゼロ戦乗りの宮部久蔵、がチラッと作中に出てくる。こういう遊び心があるのが面白い。

 『海賊と呼ばれた男』は映画にもなっていて、こちらは岡田准一さんが主演。
 彼は『永遠の0』の映画にも宮部役で出ていたこともあり、『海賊と呼ばれた男』の映画で同じ人物がそれぞれの役で二人同時に出てくるあたりも、視聴者を「お!」と楽しませてくれる。

 余談だが、岡田准一さんは司馬遼太郎の作品『燃えよ剣』では土方歳三役を、『関ヶ原』では石田三成役を演じていたりして、元からファンとかではないが、演技力も素晴らしくなかなか味のある俳優さんになったなぁ…と親心というには歳は近すぎるが、そう感じている。
 彼の今後の活躍も楽しみである。

  戦時を生き抜いた実在の人物の物語。
 「日本にはこんなに凄い男がいたんだ!」と、自分が日本人であることにも誇りを感じさせてもらえた。

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