やさいを手作業でつくって販売していた5~10年前の冷房事情をふりかえると
はじめに
このところいちばん昼下がりのいちばん暑い時間帯には家のなかに退避している状態。つまりクーラーのなかで息をひそませるようにすごす。退避しているにひとしい。はたして以前はどうだったか。こんなにクーラーを使っていたのか思い起こしてみた。
きょうはそんな話。
10年前は
6年間ほどだったか。やさいをはたけでつくり、状態のいいものを販売所で売っていた。最初は副業のつもりでそのうち軌道に乗り、辞める直前の確定申告ではついに本業の収入をうわまわり、「第二種兼業農家」と相成った。なんとまあ、ねこのひたいほどの畑でも効率よくはたけで作物をつくるとそこそこの売上になると知った。
しかもまったく機械を使わない手作業で。法律のさだめで「無農薬」や「有機栽培」などの表示はきびしい条件のもとで資格が設けられておりその枠のなかでしか使えない。さらに手作業のみなどをうたい売ることははなはだ困難。十把一絡げでひっくるめられて売り場にならべられる。
新たな販売所で知ったこと
ただし1か所だけこうしたこだわりのやさいを売ることのできる場所をみつけ、そこに持ちこむようになった。なにも表示せずともここにならべられるものはいずれもこだわりのものばかりなので、あえてそんな表示はいらない。
虫にかじられたものもそのまま出したし、かたちや大きさもまちまち。もちろん基本的に見つけたものは手でとる。そうしたことに抵抗のないお客様が相手。かざりけなくできただけを持ちこんで売る。ここでは遠方のこうした作物を好む消費者の方にも届けることができる。
クーラーなしで
その「こだわりの販売所」は街中にありながらまったくむかしながらの民家の一画をつかい営なんでいた。過去形で記すのは今はもうないから。そこはまったく開放的で店のまえは山ぶどうの棚。夏のいまごろは店のまえにはよしずをかけていた。
もちろんふだんは引き戸を開け放つのでクーラーなどは稼働していない。しかし店内は自然の風がとおりここちよい。むかしの家はどこもこうだったなとなつかしい。低い棚にわたしの携えたとれたばかりのやさいがならべられ、一部はやさいを所望する顧客にむけて発送された。
わが家は
その頃といっても5年~10年前のこと。はたしてわが家はどうだったか。夏は夜明け前(4時頃)から日中ふたつの仕事で動きまわりじっとしていなかった。すわるのはほぼ食事の時間だけ。寝る直前まで明日の朝に持ちこむやさいのパッケージングやトレードマークや値札シールつけに追われ、今のように家のなかでしずかにすごすことはなかった。
思い起こすと夏のあいだに家でクーラーを使うことを思いつかなかった。扇風機ですらその頃はほとんどつかわなかった。つかうのは洗ったやさいを乾かすとき。じぶんよりやさいのほうに風をあてていた。
それでもまったく支障なくよくねむれていた。いまの生活からかえりみるとふしぎでしかたない。
からだを冷やすまでない
よく汗をかいていた。みぞれまじりの冬でも農作業後は汗をかくのでシャワーをあびていたぐらい。冬のほうが作業は過酷。スコップで天地返ししたり、霜の降りなくなる時期を見計らい、植えつけるサトイモ用の深い溝を切る作業はもっともきつい。
すぐに息があがる。機械化の進んだ現在、おそらくこれを手作業でやるヒトはすくなくともまわりにはいない。ふだんでもやせているのに、この時期がすぎると体重が3~5キロおちてガリガリに。春以降にゆっくりもどした。
古い農法
祖父は牛馬とともに、父はコンバインでやっていた。それに反してわたしが手作業でつくっても販売所では機械をつかったほかの方の産品と同列あつかい。しかたない。牛馬による農耕がはじまった鎌倉時代以前にもどるぐらいの農法。動力に石油が使えない時のために、どんな労力がいるか知っておくのはたいせつと思いあえてそうした。
その結果、冬もじぶんのためにエアコンで暖房などは思いつきもしなかった。もちろん学習サポートの児童・生徒たちはべつ。彼らには冷暖房をしっかりいれた部屋ですごしてもらった。
おわりに
なんでそんなことができたのだろう。肌はつねに浅黒く日に焼けてとても健康的。とくに風邪をひくこともなくすごしていた。それがどうだろう。農業をやめてすでに5年が過ぎる。色白になってしまい年中肩が凝る。
いまや店でやさいを買う立場に。こうしてnote記事を書くあいだもクーラーのもとにいる。10年前のほうが今よりも気候が涼しかっただけかもしれない。いまの生活を批判するわけでも、クーラーなしですごそうと主張するわけではない。
どちらがいいのかよくわからない。すくなくともそんなことが可能だったし、そんななか不満もなくすごせていた。夢でもみていたかのよう。事実を思い出しつつありのままに記したつもり。
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