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本や雑誌を買えなくなってひさしい大学はほんとうに学生たちの学び場なのか


はじめに

 なんどかnoteに記事でとりあげているが、かんたんに改善の見込みやそれに置き換わるものが準備できるかというとなかなかそうはいかない。あともどりしようにもどうしようもないぐらいのところに来てしまっているのか。

大学の研究パートに従事するなかで、まちがいなくその危惧する方向にすすみ、取りかえしがつかなくなるところまですでにきている現状を目にしてお知らせしたい。

きょうはそんな話。

見ためはよくなったが…

 大学の研究パートのしごとに就いて1年が過ぎた。そのあいだにいろいろと知れたことが多い。ここではたらく者として、内情をあからさまにするのは気がひける。しかしいずれも報道されていることを実地でなぞる内容にすぎない。

これはなんとかしないとのレベルはとうにすぎている。そう感じる。20年あまりこの状況は変わっていないというか、ますますマイナスに振れてしまった。大学っていったい、なにをするところなのか、あらためて考えさせられる。

「学生」のことばがしめすように大学生はあくまでもまなぶ成人したひとりのヒト。

したがってどれだけ学ぶかはその個々人にまかされている。大学のスタッフはそれをみちびく役。学ぶのはあくまでも学生であり、スタッフとともに研鑽をつむといっていい。

たしかにここ20年ほどで、建物の外見は改修によりいくらかよくなったし、トイレや室内の空調などの設備はととのったといえる。PCも無線でネット利用できる。施設がよくなったのだから、さぞかし学生たちは快適に嬉々としてまなんでいるかというとかならずしもそうは見えない。というか、そのきれいになったはずの室内のどこをみわたしてもヒトの気配があまりかんじられない。

いるようないないような…そして確実にないもの

 このキャンパスには1万人をこえる学生とスタッフがいるはず。事務職のかたやそのほかのここではたらく方々をくわえるとそれ以上になる。環境もサービスをおこなうヒトもたくさん?いるはず。ここですごす学生はわたしが学生だった何十年前とくらべてもそうした面は充実しているはず。

ところがところが、ひとつ大きなちがいがある。研究室やその周囲の部屋に本がほとんどないのである。たしかにわたしたちが学生だったころの本の残骸はすくなくとも散在している。というか更新されているように見えない。学問の進歩とともに内容は改定され、ことなる分野が開拓された。あらたな書物として各々の棚にあってよさそうなもの。それがない。

はたして本はどこへいったのか。

もはや買えない状況に

 どうも考えがあまかった。本は天からおのずと降ってくるものでも、こんこんと湧きいでるものでもない。予算をあて吟味しつつ購入されるもの。学術雑誌もしかり。たしかに電子雑誌の興隆いちじるしい世だが、それにしても現状でとりそろえられるものではない。

すでに研究室単位で専門書や学術雑誌(この場合は電子論文を読める権利を買う)を買える定常的な予算などほぼない。わたしの学生のころは毎月、新刊本や雑誌に研究室や控室は埋まっていた。

さらに各学科、もしくはべつの学部、さらに中央図書館などにいけば目を通したいものはほぼ読めていた。みずからの専門の学問分野(この場合は生命科学)についての話。旧帝大に国内留学した際にはいろいろな本に接するにはむしろ遠くまで出歩かねばならなかった。所属する地方の総合大学でも遜色ないなあというぐらいだった。

それがどうだろう。たしかに大学全体で学術雑誌の主要なものにネットから接する契約はできている。しかしどれほどの厚みの雑誌なのか1度も目にすることはない。この分野の投稿は多いなあとか、ちかごろふえてきたなあと院生当時は雑誌の厚みや目次にならぶ研究者の所属先などからその分野の盛衰を知ったもの。

おわりに

 いまの学生さんは身のまわりにあふれるほどあった本に接する機会にとぼしいのはまちがいない。手にとろうにもないのだから。足を運ぼうにもそこは大学のなかではなく、街の自治体が運営する図書館のほうが新刊本をかろうじて目にできる。

大学にいたのではそれはほぼほぼ無理。わたしもこの1年、なかの図書館には行っていない。古い本の情報に接しノスタルジーには浸れても、ネットをあやつりじかにヒトと話さねば新たな分野のほやほやの情報に接するのはむずかしい。

図書館のやくわりは過渡期にあるのかもしれないし、情報センターにおきかえられるかもしれない。大きな建物や棚だけがスペースのあいたままではむなしい。

本のない大学。たしかに本のやくわりもかわりつつある。でもそこにはネットでは得がたい側面があるはず。


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