昭和の『夕顔夫人』から、令和のSMを思う。
『花と蛇』に続く団鬼六のSM緊縛小説の代表作といえば、
まずこの作品であるでしょう。
冒頭、木崎というやや屈折した青年の日常と心情描写から始まり、
その筆致が少し私小説的な雰囲気があるので
『花と蛇』の導入部分とは趣が異なって、多分に物語性を期待させます。
木崎の目線からヒロインの妹である由利子にたどり着くまでは、
この男がどんな非道な妄想を抱いているのかなかなか読みづらいでしょう。
また序盤は登場人物の心理描写や耽美的な叙述も
『花と蛇』に比べてより丹念です