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読み物「桜の季節」

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むかし書いた舞台の台本を小説風に連載中。死神と桜の精が織り成すファンタジー。
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2020年8月の記事一覧

桜の季節23

桜の季節23

前回の桜の季節はこちら

「てめぇ!さっきから何ブツブツ言ってやがるんだ!俺をコケにしてやがるのか?!」

庄之助に殴りかかる東。

「庄之助さん!危ない!」

東の攻撃をひらりと躱しさらに反撃した。よろける東。

「兄貴!大丈夫ですか!」

「うるせえ!黙ってガキを捕まえてろ!」

さらに殴りかかる東!庄之助は何発か躱したが避けきれずにダメージを受けた。

「庄之助さん!」

「ぐっ!痛ってぇ!

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桜の季節24

桜の季節24

前回の桜の季節はこちら。

  一変して静まり返った中庭。呆然としている一雄に問いかける庄之助。

「大丈夫か?」

「え?あ、はい。あの、その。」

  スレイブが庄之助に。

「ほら、庄之助さん。」

「ああ……。」

  庄之助は少し考えて一雄に。

「もう大丈夫だ、早く行け。」

「え?それだけ?」

  うるさいとばかりにスレイブを睨みつける庄之助。

「うん、でも…。」

「ん?どうし

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桜の季節25

桜の季節25

前回の桜の季節はこちら。

  再び静まり返った中庭。その静寂に堪えきれない様にスレイブが庄之助に問いかけた。

「あれで良かったんですか?」

「ああ…。」

「一雄君、泣いてましたね。」

「賢い子だからな、何となく気づいたんだろう。」

「そうですね。」

「……。」

「……どうしますか?」

「ん?」

「残り時間はあと1日程ありますよ?」

「そうか…。」

「また、遊びにでもいきます

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桜の季節26

桜の季節26

前回の桜の季節はこちら。

  スレイブに桜の木に命を返すことが可能なのか問いかける庄之助。スレイブは一瞬考えて答えた。

「可能です。」

「そうか。」

  安堵した表情で笑う庄之助にスレイブは。

「まさか戻せって言うのですか?」

「ああ、すぐに戻してくれ。」

「そうですか……、でも本当にいいんですか?」

「ああ、もう夢は叶った十分だ。それにこの木がこのまま枯れちまうと約束を守れない。

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桜の季節 最終話

前回の桜の季節はこちら。

  庄之助の葬儀から10年後…。

  庄之助宅の桜の木はまだ健在であった、昨年までしっかり花も満開に咲かせていたようだ。しかし、今年はついに花を咲かせなかった……。ちょうどあの時の桜の精が言った寿命の半分を使い切ってしまったのだった。

  枯れてしまった桜の木に近づいてくる1人の青年。

「こんにちは、爺さんの桜。」

  青年は桜の木に話しかけている。

「もう秋

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