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海は拾いな、大きい名(仮)

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海は拾いな、大きい名(仮)その12

根こそぎ剥がれていく 思い出 鳴っているハズの警報 は 無音 震える世界の鼓動が 波を揺さぶり 膨れ上がらせる 黒さ 光を吸い込む水面 濁り 澱む 空気は刺さる匂い 見えない谺 聞こえない光 波 が 黒 病み 深き処へ 誘われしモノたち に 捧ぐ

海は拾いな、大きい名(仮)その11

纏わりつく塩水の気体 引き始める波は期待 高まっていく水面 止まる 静 休符 間 引かれ始める 引かれていく 牽かれていく 轢かれていく 挽かれていく 引き寄せられていく 引き摺られていく 引き回されていく 転がっていく 土台 礎 吸い取られて

海は拾いな、大きい名(仮)その10

さまよい切って辿り着いた流れ 強くもなく弱くもなく 上下動はあるものの 淡々と一定の範囲内 生きているかのような 温かみ 冷たさの中の 巡って 巡って 巡っていく先に 待っているモノ 無 無が在るのではなく 有が無い訳でもなく その先へ 彼方へ

海は拾いな、大きい名(仮)その9

鳴り響くサイレンが届くことのない深さ 積み重なる滓に埋もれていく 柔らかい覆いに吸収されていくエコー 光 積もる 降り注いだ粒 払われて撹拌 濁る世界 観測される生態系で異なる時間 いのち 底に還る間もなく循環 流れは強く大きい 層ごとに 連なり 交わり 分かれていく 何処までも行ける閉ざされた空間 すべてが異なり1つである何か さまよい 音もなく 埋もれていく 何処かへ

海は拾いな、大きい名(仮)その8

水平線から闇が熔かされていく ゆっくりと赤みを帯びていく空 燃えている 焼かれていく 黒と赤に挟まれた帯の青み 空に佇むスチールウールが白い灰と化す 黒みの抜けた空 雲の合間に浮かび上がる 白い月 影は吸い込まれる 水面は めくれ上がる波 さざめき

海は拾いな、大きい名(仮)その7

雲は厚くのたうち回る灰色のネズミ 映し出す水面は白い縞模様のグレイッシュ 押し寄せる波は引き際を心得て鳴く 風が 境界層ごとに巻く渦は熱エネルギーを移す 温度差が産み出す密度の違いが色を付ける 深度で異なる流体の動き 差し込む光は雲を掻き分けて熱を与える 起こる 微かに撫でられた水面が白く泡を立てる めくれ上がり生まれる波に飲み込まれゆく白い泡 うねる曇天を反射して拡散する薄日が霞む 風が 仄かに照らし出される陰影に追われる群 交感は不可能 温められた空気が昇り始

海は拾いな、大きい名(仮)その6

月明かりが届かない海面を照らす灯台の光線 立ち込める霧で拡散していく 歪む影 濃密な水蒸気に濡らされる空間は飽和 小刻みに振るわす動きは波の音 風は無い 水面に突き出した岩礁が波を砕く 飛び散る雫は霧の中でもがく 少しずつズレていく間隔は周期的 重なる波 消し合う波 広がった波紋が波紋を消し合う水面 未だ無風 瞬く間に過ぎ去っていく光線 水滴に反射しながら空間を満たし拡散 溢れずに消える 黒い透明な闇 凪 彼方を照らす灯を吸い取っていく 何ひとつ音も立てずに

海は拾いな、大きい名(仮)その5

防災行政無線が告げる災い 誰の責任でもない人災 「誰ひとり取り残さない」 殲滅 正義は常に正しい 悪は常に悪い 「お前の正しさが  いつかお前のクビを絞める」 「正論は常に正しい  だから〇〇を悪化させる」 盛り上がった水面に吸い込まれていく 照らされる曲面に浮かぶウタカタ 弾け飛ぶ雫が反射する虹 架けたアーチが欠けていく永遠 白い結晶 凍り付いた言葉は狂気と化す凶器 「温めますか」 「お願いします」 波と波がぶつかり合う衝撃のエネルギーが産み出す チン

海は拾いな、大きい名(仮)その4

目の前に押し寄せる波の音は遥か彼方 凍り付いた時を溶かすのは灼熱の視線 歪んだメガネの焦点が集める影 ねじれ切った鉄骨は口ずさむ旋律 澄み切った空の青が吸い取っていく 無風 流れゆくコンクリート躯体に留まる黄色い服 白いフリル ゆらめく 何も残らないフリをしたガレキの山 エレキで発火してダイオキシンの群れ 漂う構造式の腐臭 夢遊 流れゆくアクリル板 遮るモノは亡き者 自ら動かない車 ドライバーはマイナス ボルトは感電してショートゴロ 犠打 狂う

海は拾いな、大きい名(仮)その3

微かな振動が波を起こす。 同心円状の紋が歪められていく。 楕円。 潰れてレムニスケートからの分離は別離。 さよなら。 こんにちは。 はじめまして。 おひさしぶりです。 動き出したクォーツのエネルギー源。 七色の光は五色で三色。 ににんがし。 光アレ効果。 時を刻む時は命。 刻まれていく。 刻み込んでいく印。 証。 紋が表す象は反射する。 浮かび上がった徴。 聞こえない音。 見えない光。 冷たい温もり。 熱盛。 転がるサイクロイド。 束ねる曲線のブーケ。 虚空に。

海は拾いな、大きい名(仮)その2

散り散りになった金属カケラたちが押し寄せられる。 水気と塩気と滑り気を帯びた腐臭をまとう風。 生ぬるさが水面を舐める。 めくれ上がる表面の張力は限界突破。 いたるところに生まれ出ずる渦が境界を歪めていく。 幾重にも分かれた層の上で群れを成す規則。 芽が茎となり、まとめ上げられていく。 うねりがまたうねりを生む。 層によって変わる色合い。 密度は甘さを香らせる。 分かれた光がそれぞれの層を貫いていく。 まっすぐに折れ曲がりながら。 ざわめく層の表皮から放たれる香りの甘さ。 揺ら

海は拾いな、大きい名(仮)その1

せり上がって来る。存在感。波というよりは塊。 押し迫って来る壁。 奥行きのある壁。どこまでも続く壁。壁の連なり。 括弧に返すカッコが終りなく続くように深く。 カッコつけていく。 「ホントはそんな人じゃないって、分かってるから」 良く知っているハズの知らない誰かが何も言わずに呟かずに溜め息。 黒い塊。 せり上がって来る。不在感。定められた形には入らない。入れない。 見えない壁は厚くて熱すぎて凍る。指先の火傷はアザ。 波の跳ね返り。 細かい粒が粒にぶつかり砕けて粒になる。 闇に光