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7/1 ニュースなスペイン語 Flanco sur:南方

flancoとは「縁」とか「側」という意味なので、flanco surは「南方」としか訳せないが、今後、この単語は北大西洋条約機構(NATO;OTAN)の軍事戦略を語る上で不可欠になりそうだ。だから、日本語でも、もっとスワリの良い、しかも、分かりやすい訳語が出てくると思うが、今のところは、「南方」としておく。

具体的には、この「南方」はヨーロッパの南側、つまり、アフリカ大陸の、そして、かなり特定された地域を指す。

その地域こそが、NATOにとって、そして、スペインにとっても、頭痛の種である「サヘル地域(Sahel)」だ。

サヘル地域とはサハラ砂漠以南の一帯で、タイトルのイラストにもあるように、セネガル、ナイジェリア、スーダン、南スーダン、エリトリアなどの国々が含まれる。

「飢餓ベルト」などとも言われ、情勢は不安定を極める(gran estabilidad)。

極貧生活から抜け出すために、サヘル地域の人々が手を出すのが、麻薬(droga)であり、テロ集団(terroristas)の下働きだ。つまり、この地域はテロ活動や麻薬取引の温床としてうってつけだ。

そして、このサヘル地域の治安維持に乗り出そうとしている(とNATOが認識している)のがロシアだ。

フィンランドなどの北欧諸国がNATOに加盟することで、北ヨーロッパが強化されてゆく中、ロシアがアフリカに目を付けても何ら不思議ではない。

そして、もし、ロシアがアフリカに乗り出すようなことがあれば、ロシアと最前線で対峙しなければならないのが、他でもない、スペインなのだ。

先日、ジョー・バイデン(Joe Biden)米国大統領と会談したペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)首相は、アンダルシア州カディスにあるロタ海軍基地(Base Naval de Rota)にアメリカ軍の駆逐艦(destruidor)2隻を配備することで合意(acuerdo)した(6月29日の記事を参照)。これも、もちろん、対南方戦略の一環だ。

ところで、6月27~29日の記事でも紹介したメリジャ(Melilla)で大量柵越(salto masivo)に駆けつけた人々の中には、サヘル地域の出身者もいる。スペインとしても、度重なる柵越に頭を悩ませてきたわけだから、サヘル問題は、NATOからの後押しがあろうとなかろうと、そして、遅かれ早かれ、解決に乗り出さなければならなかった。

しかし、NATOの戦略の枠内の話となれば、コトの重要度が全く違う。もはや、スペイン1国だけの都合ではなくなった。連立与党のパートナーであるポデモス党(Podemos)は早速、駆逐艦の新たな配備に反対ののろしを上げた。先日、サンチェス首相は防衛費(gasto de la defensa)の増額を呼びかけたが、ポデモス党は猛反発の構え。

しかし、ポデモスとの連立を解消してでも、NATOの一員たる責任を果たさなければならない時が来そうだ。

出典
https://www.mundodeportivo.com/actualidad/20220630/1001829717/flanco-sur-prioridades-otan-que-es-sahel-act-pau.html