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3/4 ニュースなスペイン語 Tilde:アクセント記号

昨日の「仲介人事件(Caso Mediador)」も気になるのだが……。今回はちょっと違うお話し。

次の文を見てみよう。曖昧(ambigüedad)な文で、ふたつの解釈ができるのがミソ。

① Viajó solo en el tren.
② ¿Por qué compraron aquellos libros usados?

①の「solo」が形容詞なら「彼はひとりで電車で旅をした」となる。一方、副詞なら「彼は電車だけで旅をした」となる。

また、②についても、読みが二通りあって、「aquellos」が指示形容詞なら「なんで彼らはあの中古本を買ったのか」となり、指示代名詞なら「なんであの人たちは中古本を買ったのか」となる。

スペイン王立アカデミー(Real Academia Española)は3日、「曖昧になる危険性があると書き手が判断した時(cuando a juicio del que escribe haya un riesgo de ambigüedad)」、副詞と指示代名詞にアクセント記号を付けることができると発表した。

だから、①を「彼は電車だけで旅をした」と解釈させたいなら、Viajó sólo en el tren、②を「なんであの人たちは中古本を買ったのか」と解釈させたいなら、¿Por qué compraron aquéllos libros usados?としても良い。

スペイン語を少しかじった人なら、この品詞の区別自体はそんなにややこしくない。

ややこしいのは、この基準を「新しさ(novedad)」と報じる国営放送と「基準を変えたのではなく、より明確な表記法が承認されたまでのこと(No ha cambiado la norma, sino que se ha aprobado una redacción más clara)」と発表したアカデミアの、見解のズレ。

アカデミアの立場をもう少し詳しく見てみよう。

曖昧性のない文脈に限り、副詞にはアクセント記号を付けてはいけない。書き手の判断で、曖昧になるような文脈では、副詞にはアクセントを付けても、付けなくても良い。この細則は基準の変更とは違う(Es obligatorio escribir sin tilde el adverbio solo en contextos donde su empleo no entrañe riesgo de ambigüedad y es optativo tildar el adverbio solo en contextos donde, a juicio del que escribe, su uso entrañe riesgo de ambigüedad. Este inciso no implica un cambio de norma)。

一方、国営放送の立場は、この発表を「新しい」と考える人たちに依拠している。

アカデミアの会員であり、作家(escritor)でもあるアルトゥロ・ペレス・レベルテ(Arturo Pérez-Reverte)にとって、この度のアカデミアの発表は「重大な変更(modificación importante)」だ。

だから、「新しいことは何も追加されてないだと?(¿No se añade nada nuevo?)」、アカデミアは「偏った、不正確な情報(información sesgada e inexacta)」を流している、とツイッターで嘆いてみせた。

そして、「来週の木曜日の会議は荒れるだろう(El pleno del próximo jueves será tormentoso)」とツイートを締めた。

アクセント記号をめぐる不協和音はまだ、続きそうだ。

写真はイメージ。

ちなみ、「ñ」の上の「ニョロ(専門的には「波形符」)」のことも、「tilde」という。

ニョロは、他にも、「sombrero(帽子)」という言い方もある。また、「vírgula;virgulilla」とも言う。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20230302/rae-acepta-solo-tilde/2429172.shtml など