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7/19 ニュースなスペイン語 Techo de cristal:ガラスの天井

スペインで「ガラスの天井」がまた、取り除かれることになる。

ガラスの天井とは女性やマイノリティーがある一定の職業や役職に進むことを妨げる障壁を指す用語。英語の「glass ceiling」の翻訳語だ。

スペイン語の「techo(天井)」「de cristal(ガラスの)」も英語をそのまま翻訳した格好だ。

国家警察(Policía Nacional)の入職に課せられていた、女性の身長制限(requisito de la estatura)を、最高裁(Tribunal Supremo)が「間接差別(discriminación indirecta)」と判断した。この判決を受け、内務省(Ministerio de Interior)は女性の身長制限を近い将来、撤廃する。

これまで、国家警察の受験の際、男性は最低でも(mínima)165cm、女性は160cmの身長が要求されていた。

では、最高裁は、なぜ、女性に対する身長制限を差別的と判断したのか。

ひとつは、スペイン人の平均身長(estatura media)から判断すると、160cmという制限が厳しすぎるからだ。スペイン人女性の約25%が160cmに達していない。一方、男性に課せられた165cmに達していない男性はわずか3%しかいない。つまり、男性にとっては、身長制限は実質上、無いに等しい。

スペイン人の平均身長に鑑みると、女性の身長制限は154cmが妥当らしい。ちなみに、市民警察(Guardia Civil)のような、他の警察機関(cuerpo policial)の入職のための制限は、男性は160cm、女性は155cmらしい。

女性に対する身長制限が差別的な理由のもうひとつは、低身長でも業務に影響しない(no afecta a las funciones)からだ。選考の際に、身体的・医療的適性(idoneidad física y médica)を保障するための試験(pruebas)があるのだから身長制限は意味がない、というのが最高裁の論理だ。

ジェンダーギャップ(brecha de género)のランキングが、2022年度は、調査対象国146ヶ国中、17位のスペインの意識は、さすがだな、と思う(その一方で、ドメスティックバイオレンス(violencia de géneroが社会問題になっているスペインも、もちろん、忘れてはならない)。

ジェンダーギャップが146ヶ国中、116位の日本はどうか。あるわ、あるわ、ジェンダーギャップのニオイがプンプンする。

写真は国家警察の女性警官。身長制限をクリアした女性たちが活躍して、40年が経つ。ちなみにpolicíaは「組織」を指すときは女性名詞(「秘密警察(policía secreta)」など)だが、「人」を指すときは男女同形。だから、特に、「女性警官」を指すときは、mujer policíaのように、形容詞的に使う。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20220718/supremo-anula-estatura-minima-mujeres-policia-nacional/2389222.shtml