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8/12 ニュースなスペイン語 Montaje:合成写真

タイトルに挙げた写真の右側、真ん中に写っているのは、昨日と一昨日の記事にも登場した、若かりし日のグスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)コロンビア大統領だ。

そして、その手前に写っている口ひげの男が、パブロ・エスコバル(Pablo Escobar)。コロンビアに拠点をおく犯罪組織「メデジン・カルテル(Cartel de Medellín)」の創始者であり、20世紀を代表する麻薬王だ。

日本で言えば、総理大臣と○☓組の組長が過去にパーティーに同席していた。しかも、ピッタリとくっついてお隣り同士、ということになる。

これが事実なら一大スキャンダル、大統領の即罷免にも値するが、しかし、まぁ、いかにもガセネタ(bulo)っぽい。

実際、これは、下に見る写真①と②を巧みに合成したものである(Se trata del montaje)。

写真①

これは若かりし頃のペトロで、隣にいるのが、ウーゴ・チャベス(Hugo Chávez)ベネズエラ大統領。1994年くらいに撮られたものだ。

写真②

一方、こちらは元になった写真で、エスコバルの専属カメラマン、エドガー・ヒメネス(Edgar Jiménez)が撮ったもの。エスコバルとカルテルの組員であるヒットマンたち(sicarios)との会食の様子だ。年代は不明。

タイトルに挙げた写真は、①のペトロの顔を②にはめ込んだものだが、背景のセピア化のさせ方やペトロの輪郭のぼやかせ方など、なかなか、手のこんだ代物で、2021年頃にネットに出回った写真だ。

で、このガセネタに、ストレートに引っかかったのが、グラシエラ・ビアンキ(Graciela Bianchi)というウルグアイの国会議員だ。

今年の6月ごろ、コロンビアで大統領選挙が佳境に入った時分、タイトルに挙げた写真に、「コロンビアの運命を担おうとしている人物(Quien aspira a gobernar los destinos de Colombia)」というコメントを付けてツイートした。

もちろん、ネット民の間では、問題の写真が合成であることは自明の理。フェイク(falso)であるのと指摘が相次ぐも、「事実は合成では作れない。受け入れなければならない現実だ(La realidad NO es un montaje. Hay que aceptarlo)」と応じ、徹底抗戦の構え。その後、この論戦がどう終結したかは分からない。

ペトロの反社会勢力とのうわさが流れてしまうのも、実は、彼がかつてゲリラ軍団「M-19」に従軍していて、M-19がメデジン・カルテルから資金提供を受けていたなど、なかなかグレーな部分が無くもないからだ。

ところで、昨日と一昨日の記事でも紹介した「シモン・ボリバルの剣(espada de Simón Bolívar)」は1974年に盗難されたのだが、その事件にゲリラ組織M-19が関与していたという。

ペトロが直接、ボリバルの剣を盗んだというわけではないだろうが、まさか、自身の組織が盗んだ剣を、約半世紀後、大統領就任式のセレモニーの中で迎える側に立つとは夢々思ってもいなかっただろう。

歴史の妙である。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20220811/imagen-gustavo-petro-pablo-escobar-montaje/2395790.shtml など