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11/12 ニュースなスペイン語 Hazte oír:「君の声を聞かせよ」

昨日の続報のつもりだったが、気になる事件がバルセロナで起きたので、そちらの紹介をしておこう。

表題にあげた「Hazte oír」はある「過激派組織(organización ultra)」の名称で、この団体はLGBTIの人々への差別的言動(discriminación)で度々、面倒を起こしてきた。

Hazte oír は直訳すれば、「君が君自身のことを聞かせるようにしろ」という、何ともややこしい日本語となるのだが、要するに、黙っていないで、君の主張を人々が聞ける様に声を上げよ、というメッセージがそのまま団体名となっている。

さて、Hazte oír がこの度、タイトル写真に挙げたようなバスをバルセロナ市内で運行させていたのだが、州警察(Mossos d'Esquadra)が10日、これを中止させたという。

このバス、記事では「トランスジェンダーヘイトバス(autobús tránsfobo)」と表現されていて、そこにペイントされているメッセージが、兎にも角にも、トランスジェンダーの人々の神経を逆なでする内容。

まず、写真にみるように、バスの右側面には「男でも女でもない子供なんか存在しない(LES NIÑES NO EXISTEN)」とある。

Los niños(男子)でも、las niñas(女子)でもない、les niñes(どちらの性でもないこども)は伝統的なスペイン語にはない語である。

しかし、平等大臣(Ministra de Igualdad)イレネ・モンテロ(Irene Montero)をはじめ、トランスジェンダーの問題に取り組む人たちは、この種の新語を積極的に使う(2021年6月30日の記事を参照)。

後方には「子供たちの割礼にノーを(NO A LA MUTILACIÓN INFANTIL)」/「トランスジェンダー法を阻止しよう(StopLeyTrans)」とある。

そして、タイトルの写真の裏側、つまり、バスの左側は次のようになっている:

子供のこととは言え、かなり過激なメッセージなので全訳は控えるが、身体の構造から見れば、男に生まれれば男、女に生まれれば女、騙されてはいけない、ということが書いてある。

つまり、上で紹介したバスの反対側の主張と合わせれば、中間の性(intersexo)であるトランスジェンダーやノンバイナリーの人々(no binaria)を全否定していることになる。

こうしたメッセージを撤去しない場合、4万ユーロ(約570万円)の制裁金が課されることになるようだ(El autobús podría enfrentarse a una sanción de 40.000 euros si se niega a retirar los mensajes)。

差別やヘイトクライムは我が国に存在する余地はない(La discriminación y los delitos de odio no tienen cabida en nuestro país)――。

カタルーニャ政府(Generalitat)の立場は明確で、法的措置も辞さない構えだ。

一方の Hazte oír は次のようにツイートしている。

カタルーニャ州政府の全体主義的で、憲法違反の可能性もある法律によって、我々のバスに書かれたメッセージを知らしめることが妨げられた(Una ley totalitaria, y con toda probabilidad inconstitucional, del Gobierno de Cataluña nos impide circular con los lemas de nuestro bus)。

記事によると、Hazte oír は2017年にもLGBTIの人々に対する同様のメッセージをペイントしたバスをスペイン国内で運行させ、物議(polémica)を呼んだ。

現地時間の11日、マドリードで、トランスジェンダー法に対する反対デモが招集されるようで、今回のヘイトバスは、そのデモに先立ち、バルセロナ他、いくつかの主要都市で運行させる計画を Hazte oír は立てていた。 

まだ、波瀾がおきそうだ。

写真は本文でも紹介したトランスジェンダーヘイトのバス。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20221110/mossos-paran-circulacion-autobus-hazte-oir/2408587.shtml