2/19 ニュースなスペイン語 Fecundidad：出生率
スペインでは、だんだんと子どもの数が減っている（En España cada vez se tienen menos hijos）――。
スペインは、日本と比べても、格段に、子どもの出生率が低い。
参考までに、日本の2021年の出生率（正確には、15歳～49歳の女性ひとりあたりの生涯出産人数を意味する「合計特殊出生率」）は1.30だった。
1.5を下回ると「超少子化」、1.3未満は「深刻」とされているのだが…。
この度、発表されたスペインの現在の出生率は、なんと、1.18。
「異次元の少子化対策」を打ち出した岸田文雄首相が聞けば卒倒するレベル。
ここ50年間で最低（mínimo de los últimos 50 años）の値（valor）だそうだ。
ちなみに、2021年度のEU諸国の出生率の平均は1.5で、スペインは最下位のマルタ共和国（1.13）のひとつ上。最少子国のひとつだ。
2021年度の世界の出生率ランキング（208ヶ国対象）で、最下位なのは韓国で、出生率は0.9。同ランキングでスペインは201位で危険水域。191位の日本だって、うかうかはしてられない。
ちなみに、フランスは、出生率が1.8で、EU諸国では、断トツのトップをひた走る。
ところで、今回の記事を見て、はたと思ったのだが、スペインは出生率を「女性（femenina）」と「男性（masculina）」に分けて報じる。
上にあげた1.18は女性による出生率（fecundidad femenina）であるが、男性の出生率（生物学的にはオスは「子供を産む」ことはできないので、小欄では「子供を持てる」と解釈する）は1.06で、女性の出生率を大幅に下回る。
ある専門家の意見を引こう。
統計局の研究はこれまで女性にだけフォーカスし、女性たちに出生率の責任をいくぶんか負わせるような格好でした。あたかも、男性は何の役割を持っていないかのように。しかし、これが私たちには理解できません。なぜなら、出生率は男性と女性を含むことなのですから（los estudios de los institutos de estadística están enfocados en la mujer, y de alguna manera la responsabilizan de la fecundidad, como si el hombre no tuviera ningún tipo de papel. Y no entendemos por qué, ya que actualmente se puede enfocar perfectamente también en los hombres, porque es un comportamiento que incluye tanto a hombres como a mujeres）。
確かに、一理ある。
ただ、スペインの場合、やや特殊な気もする。
というのも、スペインの男女間で出生率に大きな隔たりがあるのは、実は、人口構成上のアンバランス（desequilibrio demográfico）にその理由の一端があるからだ。
実際、スペインでは、女性１人につき、３歳年上の男性が1.2人いる（por cada mujer, hay 1,2 hombres tres años mayores）という状況らしい。
このような「男性が余っている、もしくは、女性が足りない（sobran hombres o faltan mujeres）」という不均衡を補うような社会システムは導入されてこなかったという（no se ha establecido ningún mecanismo social que compense este desequilibrio）。
人口比率に大きな隔たりがある中で、男女別の出生率を算出することに、どのような意味があるのかが、いまいちピンとこない。
もうひとつ、男女間の出生率が異なる要因として、「男性は、安定した収入のある職に就いている程、出生率が高い（A mayor vinculación con un trabajo remunerado estable, mayor fecundidad masculina）」という背景があるらしい。
これは単純明快な関係だが、しかし、同じことは女性にも当てはまるだろう。
少子化という、国策と国益に大きな影響を及ぼす問題をどのように分析し、対策をこうじるか――。
スペインと日本が挑まなければならない共通の課題だ。
写真はイメージ。
出典
https://www.rtve.es/noticias/20230217/fecundidad-espana-toca-fondo/2424639.shtml