見出し画像

敏感さを魅力に。HSPカウンセラー田中成実さんが、「心地よさ」を求め特性と向き合う日々の話。

みなさんこんにちは。ジブン研究編集部です。
繊細さや傷つきやすさ。自分の特性を受け入れられず、直さなければと悩むことはありませんか。特性は人それぞれ。わかっていても、周りとの違いに悩み、生きづらさを感じることがあると思います。

日常生活の中で感じる違和感や疑問についてオープンに語り合える場を、当事者との対談形式で実施するオンラインイベント「Original Life Talk」。
今回はHSP当事者であり、HSPカウンセラーでもある田中成実(たなか なるみ)さんに、話し手を務めていただきます。
HSPとは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略で、刺激に対して非常に敏感で、繊細な気質をもって生まれた人のこと。

イベントに先立ち、敏感さという自分の特性を活かし、心地よく生きるために模索を重ねている日々の話をお聞きしました。

第7回「HSPー敏感さが魅力に変わる社会へー」
どうぞ、お付き合いください。

はじめに

初めまして。田中成実といいます。就職活動や会社員として働く日々の中で、強い違和感を感じていた頃、HSPという概念を知り、自分がHSPの気質を持っていることに気づきました。その後、HSPについての理解を深め、HSPカウンセラーの資格を取得しました。現在は、平日はデジタルマーケターとして働き、休日はHSPカウンセラーとして、HSPコミュニティ「繊細さんあつまろ~」のイベント運営や、個別カウンセリングを行っています。

友人の何気ない一言に深く傷つくような繊細さがある、感受性が強く周りの同世代に合わせられない、といった違和感は、小さな頃からずっと感じてきました。けれど学年のクラスが2クラスしかないような小さな地域で育ったため、私の周りにいてくれたたいていの人は「ナルってこんな人」と許容してくれている感覚がありました。

画像2

初めて違和感が表に出て「自分って変なのかな?」と強く不安を覚えたのが、就職活動でした。面接を受ける際、相手の感情を読み取り合わせすぎてしまい、自分が何を考えているのかわからなくなったり、相手と自分の意見があまりに違うときは、「これを言って傷つけたらどうしよう」と思ったりしていました。
周りのみんなが普通にできることができないという違和感を強く感じ、「自分って変なのかな。どうしよう。」と落ち込み続け、うつ状態になってしまいました。

社会人として働いてみて

うつ状態で引きこもっていた頃、就職活動中にイベントで知り合っていた、今勤めている会社の社長(現会長)が会いに来てくれ、「リハビリがてら、うちでインターンをしてみて、就活の糧にしたら?」と声をかけてくれました。インターンをするなかで、社長や会社のビジョンに強く共感したので、「新卒として働きたい」とお願いし、内定をいただきました。しかし自分自身がHSPの特性をわかっていなかったうえに、うつ状態が続いていたこともあり、一通りの仕事をしてみても、ミスばかりしていました。

そんな私に社長は「ブログを毎日書くこと」を任せてくれました。書いてみると「文章が良い。感受性が豊かで次が読みたくなる。」と言ってもらえたんです。初めて感受性の強さという才能に気づきました。そこから、深く考える力、お客様の気持ちを読み取る力、文章を書く力など、自分がもっている特性が、マーケティングに向いていることを知りました。「私にできることをこの会社でさせてください。」と、新卒で入社すると同時にマーケティングの部署を立ち上げました。

仕事では徐々に結果を出せるようになり、特性を活かせている感覚もあるので、しんどいとか辞めたいと思ったことは一度もありません。でも、人間関係がうまくいかず、辞めたいと思ったことは何度かあります。
自分の意見や提案を否定されたとき、相手が思っている以上に否定された気持ちになってしまい、その反動で自分も相手を攻撃してしまったり、事務所で誰かが怒られているのを聞くのが辛くて「違う部屋で仕事をしていいですか?」と言っても「みんなここでやってるんだから」と、聞き入れられないことがあったり。

日常生活で周りの人と良いコミュニケーションを取れないことが多く、私自身もどうしてできないのかわからない状態が続きました。


HSPを認知してできるようになったこと

入社して2年が経った頃、本屋でたまたまHSPの本を見つけて、私は救われました。「自分のことが全部そのまま本に書かれている!」と思い、ずっと感じ続けてきた違和感の正体はHSPという特性に拠るものなのだと理解しました。初めて「自分はおかしいんじゃないか」という感覚がほぐれ、生きた心地がしたのを覚えています。


HSPを知るまでは、周りのいろんな人の「こうあるべき」を真に受けて、それに当てはまらなければと思っていました。だから違和感を感じたとき、感じたら良くない、強くならなきゃと思っていたんです。それはきっと、自分自身心のどこかで、「繊細な人は弱い。繊細であることは悪いし嫌だ。」と思っていたから。でも、自分がこれまで感じてきた違和感は「感じていいものなんだ」と思えるようになり、初めて自分を肯定できました。
座談会やSNSで多くの繊細さんと出会い共感してもらえたこと、HSPのいいところをたくさん知ったことで、自己肯定感上がり、いいところを活かしていこうと思えるようになっていきました。

画像2


大切な気づき

HSPという特性を知った頃の私は、会社の人たちにも知ってもらいたいと考え、『繊細さんの本』をプレゼントしたり、HSP勉強会を開いたりしました。理解してくれる人、「自分の家族がHSPだとわかって良かった。」と感謝してくれる人もいましたが、「そんなこと言われたら気を遣う。」といった意見の人もいました。
初めは「なんでわかってくれないの?」と思っていました。でもあるとき上司から「HSPだからなんなん。HSPの人がそんな偉いの?」と言われ、雷が落ちたようにハッとしました。その言葉を言われた時はショックで落ち込んだけれど、確かに「自分をわかって欲しい」と一方的に要望を押し付けたり、出来ない事があってもHSPであることを理由に正当化したりしていたと気づいたのです。

そこからすごく考えました。考えを変えるのは本当に難しかった。でも、考えているうちに、どちらの特性も間違っていないと思い始めました。確かに、HSPであることが「偉い」わけではない。けれど、HSPであるがゆえの特性やニーズも悪いものではないはず。
そう思うようになってから、今までのように自分の意見や出来ないことを一方的にぶつけるのではなく、「私はこう思うんですけど、どう思われますか?」と相手の意見に寄り添うことを意識するようになりました。

大切なのは、どちらが正しいか白黒つけることや、相手だけを変えようとすることではない。お互いにとって良い落としどころを見つけるための前向きな対話をすること。
私に大切なことを気づかせるために、嫌われることを恐れず叱ってくれた上司にとても感謝しています。


「心地よさ」をつくるための、トライ&エラー

今も日常の中の小さな出来事一つ一つの中で、自分自身と、周りと、うまく付き合っていくためのスキルを訓練している途中です。特に意識しているのは、思い込まずにまず相手に聞いてみること、自分の要望をいったん伝えてみること

人の感情に敏感だからこそ、先回りして相手に気を配り、「質問したら良くないのでは。」と思ってしまうこともあります。でも相手の本音は、どんなに読み取ろうとしても正確にはわからない。だから気になることがあればいったん聞いてみるようにしています。

そして、自分の特性やニーズもまた、発信しないとわかってもらえません。これは、私自身この5年間で強く感じてきたことです。
発信して初めて対話が始まるので、「HSPである」ということは言わなくてもいいけれど、具体的な特性、そのために必要なニーズは、個別で少しずつでも発信していくことが大切だと思います。

とはいえ発信にはすごく勇気が要るから、敏感であるという特性を隠さず安心して出せるような関係性をつくっていくことから始めるのもいいと思います。私も、普段挨拶するときに自分から一言付け加えて話す、というようなちょっとした心がけでコミュニケーションをとり、小さな安心をつくるようにしています。

こういう一つ一つの「トライ」が「心地よさ」をつくることに繋がっていくと思っています。「トライ」するからこそ、うまく伝わらず「エラー」が起こることもありますが、そんなときは、「繊細さんあつまろ~」というイベントで共有します。エラーしたときの気持ちも感覚的に分かり合えたり、フィードバックをもらえたりすることで、乗り越えていけています。

敏感さが魅力に変わる社会へ。

これからの時代には、強みも弱さもその人の特性として共有し合える関係性をつくっていくことが必要だと思っています。そういう関係性を身近なところから築いていった先に、”特性を活かしあいながら、それぞれが心地よく過ごせる社会”が実現できると信じています。

でも実際には、「繊細さや弱さは直すべき悪いもの」という価値観もあります。私自身、繊細な特性を何度も「弱い」と言われ、その度にとても傷ついてきました。また、恥ずかしながら自分自身が「弱いことは悪い」と思っていました。けれど「繊細さは弱さだ」という価値観も、それを主張する人たちにとっては時代や教育、社会の中でつくられてきた1つの当たり前で、間違っているわけではないのだと思います。

そういう価値観の違いを乗り越えるために、共感はしなくても理解し合うことができるようになるといいなと思います。
HSPに関係なく、「この人とはなんか合わない」と感じることはありますよね。合わないと感じること、「共感できない」こと自体は、別にいい思います。でも、合わないと感じたそこからどうするか。合わないから嫌いになるのではなく、その人を理解しようとするかどうか。そこはとても重要です。
お互いを理解するということは、対話を通して、自分とは別の感覚や考え、その背景が存在するという事実を認めること。そのとき、繊細さんの、深く思考する力、人の感情を敏感に感じ取る力などはすごく活かせると思っています。そのためには、普段敏感さを我慢して押さえつけている繊細さんたちが、「敏感さをうまく使えた。敏感さは強みなんだ。」と感じられるような、成功体験が必要です。

敏感さが魅力に変わる社会のために。

繊細さんたちとのつながりを広げ、HSPという特性を多くの人に知ってもらうための活動を続けていきます。

画像5


おわりに

まだまだ自分と向き合う過程の途中にいますが、最近やっと、自分の本音に素直になれてきたと感じています。

少し前までは、「人を嫌な気分にさせたり迷惑をかけたりするくらいなら、自分が我慢して一人でいる方が楽だな。」という気持ちと、「一人でやることにはすごく限界があるから、人と関わった方が良いのかなあ。」という気持ちの狭間で、揺れていました。
時間をかけて、「ほんとはどうしたいの?」と自分に問いかけてきて、「そりゃあ、”社会を一緒によくしたい、優しい社会をつくりたい”という想いに本当に共感してくれる仲間と、私は関わっていきたい。」そんな本音に気づきました。

人と関わるのはエネルギーを使うし傷つく恐怖もあるから、自分を守るために、押さえつけてしまっていたのだと思います。自分の本音に素直になれたのは、とても嬉しいことでした。

自分自身と、周りと、丁寧に向き合うなかで、少しずつ心地よさをつくっていく。これからもそんな日々を過ごしていきたいと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

HSPの方、もしかして私もHSPの気質が高いのかもと思われる方、HSPについて考えてみたい方など、ぜひイベントにご参加ください!
当日は、ナルさんへの質問タイムや参加者同士の対話の時間もご用意しております。

イベント参加は、以下のイベントページ内の応募フォームよりお願いいたします!みなさまにお会いできることを楽しみにしております。

画像4

https://www.facebook.com/events/1426108774265204/


話し手:田中成実
https://note.com/t_naru615

聴き手・編集:宮本夏希

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?