産まれてきてくれてありがとう

9月某日

朝日と共に

産声があがりました。

私は
電話越しに伝わってくる
その産声を
呼吸を止めて聴いていました...

...

そうです

わが子が産まれました。

予定日より
2週間ほど早く産まれることになりました。

私は
宿直勤務中の
深夜2時。

急遽お産が始まりました。

本来であれば
立ち合いをする予定でしたが、
それは叶いませんでした。

でも、
奥さんが
陣痛で苦しい中
電話をかけてくれました。

電話に出ると

エコーによる心音と
スタッフの方々の動く音、

そして
奥さんの唸る声...

これまで聞いたことのない
奥さんの声に
胸が苦しくなりました。

なんと声をかけたらいいのかわからず、
言葉につまっていました。

看護師さんの言葉がけを真似して

「上手だよ」

「もう少しで会えるよ」

と声をかけました。

奥さんは

「...うん」と

決してここでは
書き表せないような
必死な声で
返事を返してくれました。

「家族3人で頑張ろう」

と伝え続けました...

...

3時間後...

奥さんの声が
スッと収まり、

「おぎゃぁあ」

と
細く高く
一生懸命な泣き声が
聞こえました。

私の稚拙な言葉では
表現できない
人生で初めての感覚

とにかく
胸が熱くなりました。

間もなくして
奥さんはテレビ電話に切り替えてくれました。

奥さんの胸の中には
確かにいました。

笑顔の奥さん

泣き顔の私

そして
がんばって産まれてきてくれた
わが子。

3人の画が映る
スマホの画面。

幸せ以外のなにものでもありませんでした。

本当に奥さんには
感謝しかありません。

わが子にも
一生懸命産まれてきてくれて
ありがとう。

私は
なかなか自分の人生を
認められずに生きてきました。

でも

「この時のために」

「生きてきたんだな」

そう感じました。

「生きていて良かった」

そう思いました。

わが子も
そう思って生きられるように
育てていきたいです。

きっと大変なことも
たくさんあるのでしょう。

でもそれらすべてを肯定して
生きていきます。

それらを否定したら
この瞬間を否定することになりますもんね。

この瞬間を
一生忘れずに生きていきたい...

いや

きっとそうします！

「今を大切に」

「感謝を忘れずに」

「毎日死ぬ気で」

日々過ごしていきます！

改めて奥さんとわが子
本当にありがとう！！