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「神去なあなあ日常」を読んで

今日読み終えた本は、「神去なあなあ日常」。

「かむさりなあなあにちじょう」と読みます。

あらすじ

高校卒業後の進路を決めていなかった平野勇気は、卒業式終了後に担任から就職先を決めておいたと言われ、母親からは恥ずかしいポエムを暴露すると半ば脅される形で家を追い出され、どんな仕事をさせられるのかも分からないまま、三重県の神去村へとやってくる。

列車を乗り継いで着いた先は、見渡す限り山が続く、ケータイの電波も届かない田舎。勇気が就職することになったのは、中村林業株式会社。山仕事に関しては天才的な才能を持つ飯田ヨキの家に居候しながら、ベテラン社員に付いて現場に出た勇気を待っていたのは、広大な山の手入れ。過酷な山仕事に何度も逃げ出そうと試みるもあえなく失敗、ヒルやダニとの戦い、花粉症発症など、辛いことはたくさんあれど、それらを凌駕する雄大な自然に勇気は次第に魅了されていく。さらに勇気は、神去小学校の美人教師・直紀に高望みの恋心を抱き、玉砕しても諦めずに想い続ける。そして、神去村で48年に一度行われる神事オオヤマヅミに、勇気も参加することになる。
(Wikipediaから引用)

林業の描写がすばらしい。

簡単に言うと主人公が村の生活に慣れていく様子を描いた日常系のほのぼの物語、

なんですが、林業の描写がこの物語に深みを与えています。

林業って聞いて、何をしているのかイメージできる人は少ないと思います。

でもこの物語を読めば、木の切り方とか、なぜ林業が必要かとか、なんとなくの仕事っぷりがわかります。それくらい描写が丁寧です。

主人公は元々横浜育ちのシティボーイなので林業をイメージできない側の人間です。そんな主人公に自分を重ねて読めば、自然とわかってくるのも当然っちゃ当然ですが、面白い。

僕も物語を通じて林業を生業にする人たちの山との関わり方や考え方みたいなのが少しだけわかった気がしました。

巻末の謝辞では行政や林業関係者などへのお礼や参考文献なども多数記載されており、熱心な取材の上でこの物語を描かれているんだなと感心しました。

こういうの知ると、他の作品も読みたくなります。

また、田舎の村の良いところが美しく表現されています。

自然の美しさやご近所付き合いや村の祭りなど、田舎ならではの良い部分が詰まっている感じがします。

とは言っても、主人公はコンテンツがないことに不満をもったり、村の人に認められてないような気がして落ち込んだりします。でも、そういった主人公の喜怒哀楽の感覚が、読み手の僕にフィットしてすごく読みやすかったです。

なあなあの精神

神去村の方言で「なあなあ」という言葉があります。

これは、神去村の人々の口癖で、「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」というニュアンスを持つ言葉で、拡大解釈して「のどかで過ごしやすい日和ですね」という使われ方もする。

口癖としてだけでなく村には「なあなあ」な精神が根付いています。

神去の住民が「なあなあ」を大事にしているのは、100年単位でサイクルする林業をやってる人が多いこと、夜に遊ぶ場所もなくて暗くなったら寝るしかないこと、この二つの理由によると思う。あくせくしたって木は育たないし、よく寝てよく食べて、明日もなあなあで行こう。そう思っている人が多いみたいだ。(第一章 ヨキという名の男より引用)

最近、SNSをみていると身近な人たちがすごい頑張っていて、それが羨ましいというか、自分と比べて勝手に萎えたり不安になったりすることがあります。まあ自分も頑張れやって話なんですけど、なかなか頑張れなくて。

そんなときこそ、「なあなあ」を大切にして、ゆっくり自分を育てようって話ですね。

たぶん神去村のひとたちも「そや、なあなあや」って励ましてくれるはず。

最近疲れてしまってる方におすすめの一冊です!

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