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コロナ禍の高校生(5)

令和2年(2020)7月~10月 修学旅行・学校行事の実施

おはようございます!
毎週ご高覧いただきありがとうございます!

箕面高校は大阪府立高校には2校しかないグローバル科・普通科併設校で、例年、夏期休業中に2方面にそれぞれ40名規模の海外研修を実施していました
それに参加したくて箕高を志す生徒も多数いました
令和2年度当初年間行事計画では、サンディエゴ夏期海外研修(8/24~9/2)・シアトル夏期海外研修(9/12~9/21)を企画していましたが4月エージェントとの協議の結果、それぞれ中止となりました
私の箕高在職の3年間は、夏期海外研修は実施できないままで、希望した生徒たちには申し訳ないことになってしまいました

コロナ禍、制限は多くあるけれど、せめて、体育祭・文化祭・修学旅行は実施してあげたい
これは日本全国すべての教職員の願いだったと思います

体育祭・文化祭で成長した我が子の姿を間近でみてみたい
こちらも日本全国すべての保護者の願いだと思います

体育祭・文化祭の実施に当たり、感染症対策のため生徒・教職員のみで実施し、保護者の参加はご遠慮いただく

苦渋の決断ですが感染症対策のガイドラインに従えばどうしようもないことでした
しかし、保護者のご理解をいただくのは難しく、特に、体育祭応援パフォーマンスは3年間の高校生活のすべてをかけて創りあげた演技を披露するので、3年生の保護者の皆さまの落胆はいかに大きいか容易に想像できます

校長として、保護者の訴え・希望・要望等、すべて電話で直接、応対することにしました
お話を伺い何とも言えぬ気持に苛まれましたが、
生徒たちのために行事を実施できることを最優先に考える
日常的に感染症対策を行い、学校のなかで接している生徒と教職員のみで行事を実施することが最適であり、もし、再び臨時休業になり、生徒たちの学習・高校生活を止めることになってはいけない
と、ご理解を賜ることに努めました

6月の分散登校時より、生徒会執行部・体育祭及び文化祭それぞれの生徒実行委員会、体育祭応援団幹部会議と生徒会部担当の先生方との協議が始まりました
感染症対策・熱中症対策に万全を期すべく新しい学校行事の形を生徒・教職員で考え、練り上げ、大きな制限こそ余儀なくされましたが、体育祭・文化祭、次に触れる沖縄修学旅行という大きな学校行事をほぼ予定通り実現させました
箕高らしい素晴らしいChallengeは、私たちが誇りとして将来にわたって胸に刻むべきことだと思います

9月5日(土)文化祭 例年2日間ある文化祭を1日に短縮し、多くの制限のなか、1年生2年生は主にゲームを企画し、3年生は演劇に取組みました。久々に終日校内に、生徒たちの笑顔と笑い声が響きました

9月15日(火) 体育祭 競技種目の縮小、午後は3年生による応援パフォーマンスのみ、で実施。リレーや大縄跳びなど白熱した競技をくりひろげ、3年生による応援パフォーマンスは、多くの制限があり、例年よりも短期間・短時間の練習のなか圧巻の演技。天候にも恵まれ、みんなの力を合わせて実施できた体育祭でした


コロナ禍、最も悩ましかったのが修学旅行

友人たちと過ごす高校時代最大の思い出

参加したい生徒たち、参加させてやりたい保護者の皆さま、実現させてやりたい先生方
感染に不安のある生徒たち、保護者の皆さま、高齢の親と同居する先生方

教育課程上の問題も・・・
2年次に実施される修学旅行は「総合的な探究の時間」の探究学習に位置付けられる場合が多く、1年次より事前・関連学習を行い、修学旅行では、探究学習で設定した仮説・課題のエビデンスを得る活動を行うことが多くなっています

私が校長として実践に関わった大阪府立東百舌鳥高校では、北海道・日本の農業に関する仮説・課題を設定し、北海道修学旅行でのファームステイで、農家の皆さまの協力を得て、エビデンスを得るための聞き取り調査・調べ学習を行いました
拙稿「総合的な探究の時間を創る(2)
  「総合的な探究の時間を創る(3)

修学旅行を「探究の過程に位置付ける」ことで、修学旅行は「総合的な探究の時間」の学習として成立するわけです

箕高では、担任団の先生方が中心となって「LINK」(「総合的な学習の時間」の愛称、旧課程なので探究の時間ではなく学習の時間です)の実践を1年次(私が箕高に転任する前から)より取組んでおられ、当初ファームステイを計画していましたが、コロナ禍、ご家族が高齢であることにより農家の皆さまから受入れは出来ない旨の連絡が入り、急遽、1日タクシー研修とし、各グループが取材をしながら、旅程を企画。運転手さんや訪問した地でお話を伺うなど、その企画のターゲット層と旅程ルートが適切かどうかを検討したり、自分たちのルート設定で検証可能な課題と仮説を考察しました

生徒、保護者、担任団の思い・願い
とともに

実施に向けた課題となったのは

1)新型コロナウイルス感染症の陽性者や濃厚接触者の特定等により、修学旅行が中止等になった場合のキャンセル料の問題

⇒「令和2年度 大阪府修学旅行取消料支援金交付」事業により令和2年度は問題解決
 感謝のことばしかない

2)出発後に同居者が陽性者となる等で、濃厚接触者となった生徒は離団し、別ホテル等で2週間程度隔離となり、濃厚接触者とその保護者にかかる費用(移動・宿泊等)は保護者負担となる

⇒ ① 教員の付添(添乗員1名も)が必要。団長として引率している校長しか残れる教員はいない(授業に穴をあけることはできない)。2週間の宿泊費(約15万円)は公費からも私費からもでない(支出根拠がない)ので、校長の自腹となる

保護者が自家用車で迎えに行かれることが想定される(濃厚接触者は公共交通機関を利用できない)
よって、修学旅行を延期した高校は、保護者が自家用車で迎えに行ける本州・九州・四国方面に行き先変更をする傾向が強い。そうなると「総合的な探究の時間」の探究学習に位置付けられた(1年次より事前学習した)修学旅行での学びは困難となる

※ 修学旅行中に陽性者となった生徒にかかる費用について
⇒ 入院費等は国と自治体が負担

※ 令和3年度の修学旅行実施も、令和2年度以上に困難な点がありました
 これは次回以降にまとめます

2年生以外の1年生・3年生が修学旅行出発日直前に陽性者となり臨時休業となった場合、教育活動は出来ないことになっているので修学旅行は中止となります(学校再開には保健所の疫学調査、濃厚接触者の特定、学校の消毒、学校再開準備等で通常3日間の臨時休業になります)

「令和2年度修学旅行の実施(新型コロナウイルス感染症対策)に係るガイドライン」

箕高では、1,3年生が修学旅行応援キャンペーンを企画・実施してくれました
黙食励行のために、生徒会執行部による注意喚起の校内放送、「黙食」立札を掲げての教室・食堂巡回(生徒会執行部、教員有志)が主な内容です

令和2年度修学旅行の実施(新型コロナウイルス感染症対策)に係るガイドライン」では、

修学旅行にかかる取消料発生日の前日まで

各学校は、取消料が発生する概ね 21 日前をめどに、実施の可否を判断すること。
実施に向けては下記のア~ウのすべてを満たすことを確認すること。
ア 旅行先(すべての滞在先)が、以下の状況であること
・国が旅行先の都道府県を「特定(警戒)都道府県」に指定していない
旅行先の都道府県知事等が大阪からの修学旅行の受け入れを拒否していない
イ 別紙「旅行期間中の新型コロナウイルス感染症に係る対応等について」の内容も含め、詳細の計画等について十分に説明をしたうえで、参加児童生徒の保護者全員から参加同意書をとっていること
ウ「5 感染防止対策等」が講じられていること

取消料発生日~出発時

①旅行先(すべての滞在先)が、以下の状況であること
・国が旅行先の都道府県を「特定(警戒)都道府県」に指定していない
旅行先の都道府県知事等が大阪からの修学旅行の受け入れを拒否していない
② 参加及び引率については、出発時において以下の者とすること。
・「陽性者」「濃厚接触者」「PCR 検査及び抗原検査(以後、「PCR 検査等」とする。)受検待ち及び結果待ち」でない者
・「発熱※1または風邪症状」がない者

出発後
①「5 感染防止対策等」を実施すること。
② 児童生徒・教職員が陽性者及び濃厚接触者と特定された場合、現地の保健所等と協議のうえ、適切に対応すること。

大阪府では独自の「大阪モデル」を実施しており、
・8/31 イエローステージ①の期間(9/1〜18 まで)
・9/17 期間の延⻑及び延⻑期間(9/19〜10/9 まで)
・10/8 再延⻑及び再延⻑期間(10/10〜11/15 まで)
・11/11 更なる延⻑及び延⻑期間(11/12〜28 まで)
・11/20 イエローステージ②に移⾏
と、修学旅行実施の前後には、イエローステージ①が再三延長されイエローステージ②に移行しようか、という時期で、生徒・保護者の皆さまの不安は大きかったと思います

箕高では、修学旅行実施について、2年生とその保護者の皆さまに沖縄修学旅行に関するアンケートとご意見、質問、感想をご依頼し、内容の見直しや延期、中止、行先変更等を含めシミュレーションを行い、感染者数推移や病床利用率など公的機関の情報やデータをもとに、修学旅行委員長や副委員長の生徒たち、旅行会社、学年教員団等と繰り返し、協議を重ねました

生徒たちと話をするなかで、次のような意見を聴くことができました
「修学旅行について、不安に思っている友達も確かにいますし、自分たちが修学旅行へ行くことで、もしかしたら家族や周囲の人たちにご迷惑をかけることになるかも知れません。だからこそ、僕たちも自身でどのような感染症対策が必要かを考えそれらをしっかり講じた上で、僕たちにとって特に印象に残る大きな学校行事の1つである修学旅行へ、可能な限り行かせてもらいたいです」
というものでした
この意見を聴き、心配している生徒や保護者の方の不安を少しでも払拭し、十分な感染症対策に留意した上で、修学旅行へ行く可能性を生徒と共に考えようと思えるようになりました。

修学旅行担当教員は生徒修学旅行委員と、担任の先生方はクラスの生徒たちと、思いを受け止めながら意見を交わしていったのです

できる限り保護者の皆さんのご心配を解消し、お顔を見てご説明をさしあげたいという思いから、9月13日(日)14:00~14:45(1組~4組)、16:00~16:45(5組~9組)本校視聴覚教室にて、保護者修学旅行説明会を実施しました

説明会の主な内容です

1 修学旅行についての考え方

 ○修学旅行実施に教育的な意義があると判断しました
 ○生徒のアンケート結果で、多くの生徒が修学旅行実施を希望している状況を尊重しました
 ○次年度に延期して修学旅行を実施することは現実的ではありません
 ○行先については、1年次からの事前学習などを踏まえ変更しません
 ○日程を2泊3日に短縮した上で、徹底した感染対策を講じます

⇒ できる限りの対策を行ったうえで修学旅行を行うこととしましたが、保護者の中には参加させることに不安を持たれる方もおられます。よって、説明会を設け、学校としての考え方や感染対策などを十分に理解してもらったうえで、参加確認書の提出を求めることとし、参加・不参加の決定については、ご家庭で本人と相談の上、判断していただくこととしました

2 修学旅行参加について

◆修学旅行への参加ができない場合(生徒本人の状況)

○本人がPCR検査予定または検査後で結果待ちの状態である
○本人が濃厚接触者と特定された
○本人が陽性者と特定された
○出発段階で本人に37.5℃以上の発熱や風邪症状(咳、呼吸困難、全身倦怠感、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、頭痛、関節・筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐など)がみられる。国立感染症研究所 感染症疫学センター作成「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領より」

◆修学旅行への参加を見合わせていただきたい場合(※ 一歩踏み込んだ対応になる。同居者の状況)

 ○同居者が濃厚接触者と特定された場合
 ○同居者に4日以上継続して、37.5℃以上の発熱や風邪症状がある場合。
※これは、「生徒が現地で濃厚接触者と特定されるリスクを下げる」ことが目的
  もちろん、「令和2年度修学旅行の実施(新型コロナウイルス感染症対策)に係るガイドライン」上は「参加可」としているので、参加見合わせは強制ではありませんが、ご理解の上ご協力いただけるとありがたい

3 生徒が現地で濃厚接触者及び陽性者となった場合の事柄について

○現地で濃厚接触者と特定された場合、離団した上、別ホテルで2週間程度の隔離となります
その間の費用は保護者負担となります。(1日あたりの負担額:1泊朝食付 上限10,000円)
○陽性者と特定された場合は、原則入院になりますので、入院する際に個人が使用する物品等の費用は保護者負担となります
 ○陽性者となった場合は、行動を共にしていたほかの生徒が濃厚接触者に特定される場合があります

また、首席 兼 第2学年主任がDMにて、修学旅行行程とその内容について、専門家(京都大学レジリエンス実践ユニット長 藤井 聡 氏(工学研究科・教授)、宮沢 孝幸 氏(ウイルス・再生医科学研究所、准教授))にご覧いただき、感染症対策を講じれば、特に危険な旅行内容ではありません、とのご返答をいただいたことも、沖縄修学旅行実施に向けた大きなエビデンスとなりました

保護者修学旅行説明会には、多くの保護者の皆さまの参加をいただき、多くの質問・意見・感想をいただきました
保護者の皆さまも、悩まれています
その皆さまと私たち担任団を始め付添教員、旅行者が顔を合わせて向き合い、寄り添いながら、生徒たちの思い・願い・不安に応えていけるのか、真摯に話し合いました

不安も残るが、コロナ禍でめちゃくちゃのされた子どもたちの「修学旅行に行きたい」という気持ちに応えてやりたい、ということが参加された多数の保護者の皆さまの思いでした

こうして、10月14日(水)~10月16日(金)(2泊3日) 沖縄修学旅行 を決定しました

承諾書の提出時点で不参加を表明した生徒の数と率は11名(全体の3%)でした
2年生担任団は、学年全体で楽しめる企画を並行して考えておられました


学校、ご家庭で感染症対策に万全を期す

生徒修学旅行委員会が動き出します

養護教諭の助言を得ながら、2年生9クラスが、伊丹空港集合から、伊丹空港解散までの沖縄修学旅行の旅程を9つのシチュエーションに分け、各クラスで担当する場面での感染症対策をHRや総合的な学習の時間等を活用し、まとめ上げ、しおりとして作成、全体共有し、感染症対策を確実に実行していく

付添教員、旅行者ともその内容を共有し、生徒たちを支援する

コロナ禍、新しい生活様式で身に付いたマスク・手指消毒・手洗いうがい・黙食・3密回避等も日常的に実行できているので、修学旅行中の(出発までご家庭・学校の)感染症対策がしっかりとできていたのだと思います

風邪症状がひとりもいない  

私は、37年間の教員生活で
教諭・首席時代に 国内8回・海外4回
団長(管理職)として 8回
計20回 修学旅行の引率をしてきました

今回の沖縄修学旅行で引率20回目にして初めて風邪症状がひとりもいない修学旅行を体験したのです

今回の沖縄修学旅行実施で、学年主任を始め担任団の先生方の貢献は計り知れないものがありました
修学旅行には「修学旅行のしおり」作成以外に、付添教員の行動マニュアル(全行程で、付添教員一人ひとりの役割分担を整理したもの)等、コロナ禍ならではの今までと異なる感染症対策・熱中症対策を加味したものが求められました。沖縄修学旅行主担の先生が生徒・保護者・付添教員の思い・願いを受け止め中心になって作成してくださいました
感謝の言葉しかありません
その先生は、現在、首席(主幹教諭)兼 教務主任として学校運営の中心を担ってくれています

大阪府立高校で令和2年度、ほぼ当初の予定通り修学旅行を実施した高校はあまり多くありませんでした
延期をした高校も、12月3日には大阪モデル・レッドステージに移行、令和3年1月14日には大阪府に緊急事態宣言と、結局、修学旅行の断念を余儀なくされたケースが多々ありました

令和2年度、箕高が所属する大阪旧第1学区で、ほぼ当初の予定通り修学旅行を実施したのは、豊中高校と箕高の2校のみでした

生徒・保護者・教職員の、沖縄修学旅行に行きたい、行かせてやりたい、という思いと、感染症対策における実行力、沖縄修学旅行の実効的な企画・運営力

それらに支えられて、何か問題が生起すればすべての責任をとる(辞職も覚悟する)決意をし、沖縄修学旅行の実施を、校長として判断・決断をしました

校長在職6年間の判断・決断のなか、最も誇らしいと思うのが今回です

最後になりますが、「Go To トラベル」事業の適用を受けられることになり、旅行代金割引 14,000円×3泊・地域共通クーポン 6,000円×3泊が補助されました

生徒たちは、きっと普段の生活では考えられない3泊4日 沖縄でのお小遣い18,000円を手にすることができました!

コロナ禍、制限ばっかりの沖縄修学旅行ではありましたが、生徒たちにとっては、一生モノの宝物のような思い出になったことでしょう

次回は、緊急事態宣言が再び発出され、新型コロナウイルス感染症に関わる臨時休業に日々対応に追われた令和3年度前半について綴っていきます

何かのきっかけで、現場の生徒たちや先生方が幸せになっていくような議論が拡がればと願います

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします

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