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総合的な探究の時間を創る(2)

2.北海道探究学習 「北海道の農村からSDGsに迫る ~北海道の農村への提案!」

おはようございます!
毎週日曜日更新、新編の「総合的な探究の時間を創る」第2回目となりました
毎週、ご高覧いただきましてありがとうございます。とても励みになります

今回は、修学旅行を「探究の過程に位置付ける」ということ
その工夫を共有したいと思います

東百舌鳥高校では、NPO法人「食の絆を育む会」さんと連携し、北海道修学旅行の核となるファームステイを十勝で実施してきました
近江理事長さまにご来阪いただき、十勝の自然・農牧業・水産業、農村ホームステイに関する紹介、生徒たちからの質疑応答の事前学習をしたうえで、修学旅行での一泊二日ファームステイを体験し、事後学習の成果を「総合的な学習の時間」で発表する、取組みをしていました

「総合的な学習の時間」としては全国で実践されている一般的な実践例だと評価できると思いますが、では、このまま「総合的な探究の時間」で「適切」となるでしょうか

下載のイメージ図で示されているように、
「総合的な学習の時間」は、「よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力の育成」が第1の目標です
では、「総合的な探究の時間」ではどうでしょうか。「自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力の育成」が第1の目標です

「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 総合的な探究の時間 編」

私は、地歴公民科(社会科)の教員でしたので、社会科学が「科学」であることの意味(社会科学の「科学性」)を学生時代から問い続けてきました

例えば自然科学。化学の実験では、実験する(学ぶ)主体は、試験管のなかで一つの化学反応が起こっている、それを観察し、定量分析する、というように主体と対象が切り離された形で自然の運動法則が展開しています

他方、社会科学の場合は、対象が社会的な事象であって、その学ぶ(研究する)主体である自分自身が、その社会運動法則のなかで主体的に運動しながら対象と向かい合い、その運動法則を明らかにしていかねばなりません。自分の生き方・在り方の問題。そういった学問の科学なのです

「総合的な探究の時間」の、「自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題を自ら発見し、解決していくような学び」は、私が学生時代から問い続けてきた社会科学の「科学性」の探究にヒントがあるように思えます

「総合的な探究の時間」では、「探究が高度化し,自律的に行われること」が求められ、
学習指導要領「総合的な探究の時間」解説では(p.9)、

探究の過程が高度化する
① 探究において目的と解決の方法に矛盾がない(整合性)
② 探究において適切に資質・能力を活用している(効果性)
③ 焦点化し深く掘り下げて探究している(鋭角性)
④ 幅広い可能性を視野に入れながら探究している(広角性)

探究が自律的に行われる
① 自分にとって関わりが深い課題になる(自己課題)
② 探究の過程を見通しつつ、自分の力で進められる(運用)
③ 得られた知見を生かして社会に参画しようとする(社会参画)

ことで、「質の高い探究」が実現するとしています

では、修学旅行を「探究の過程に位置付ける」ために工夫したことを紹介していきます

北海道探究学習 「北海道の農村からSDGsに迫る ~北海道の農村への提案!」では、修学旅行で訪れる北海道の抱える問題点から、グループで、興味・関心のある課題を見付け、その解決策をより深く探究し、北海道の農村への提案としてまとめる取組みに構成し直しました

修学旅行の第1日目・2日目は民泊(ファームステイ)を行います。以前より連携しているNPO法人「食の絆を育む会」近江 理事長より、事前学習として、「北海道の食と環境~高校生への問題提起~」をテーマに、ご講演いただきました

近江 理事長さまには今回の再構成で、二点のことをご依頼しました

1.北海道探究学習のテーマ 「北海道の農村からSDGsに迫る ~北海道の農村への提案!」を念頭に、生徒たちに、十勝・北海道の農牧業・漁業の現状を問いかけて欲しい

2.ファームステイで農家の皆さまに、生徒たちからの聴き取り調査を受け入れてもらえるように働きかけて欲しい

北海道や沖縄の修学旅行でファームステイやファームビジットをされた学校の先生方はよく承知されていると思いますが、生徒たちを受け入れる農家さんたちは、修学旅行で来てくれた生徒たちに心づくしの体験をしてもらおうと創意工夫されて滞在プログラムを組まれています。毎年、受け入れをされている農家さんは予め様々な予定を用意されています。教員がいろいろ農家さんに言ってくるのを嫌われる方も一定数おられます(教員・教頭・校長で10回以上のファームステイやビジットを体験した経験則がエビデンスです)

理事長さまは、二点とも快く受け入れてくださり、私の構想した通りの修学旅行が実現しました!

1)令和元年8月27日 「北海道の農村からSDGsに迫る ~北海道の農村への提案!」講演会

NPO法人「食の絆を育む会」理事長 近江 さまに北海道よりご来校いただき、「北海道の食と環境~高校生への問題提起~」をテーマに、ご講演いただきました
「食の絆を育む会」の皆さまは、なぜ私たちに民泊を提供してくださるのか。どういう思いがあって、私たちを受け入れてくださるのか。十勝・北海道の農牧業・漁業の現状は?

「北海道の農村からSDGsに迫る ~北海道の農村への提案!」講演会

多くの気付きがあり、講演後、ワークシート「食の絆を育む会の講演を聞いて」に、気になった言葉や理事長が最も伝えたかった言葉に、自分の考えを付け加え、農家の皆さまが、北海道修学旅行を通して私たちに何を学び、何を考え、どうなって欲しいと思われているのか!を、自分の問題として考えていきました。最後に自己評価を行いました

「食の絆を育む会の講演を聞いて」ワークシート 1
「食の絆を育む会の講演を聞いて」ワークシート 2

資料3 ワークシート「食の絆を育む会の講演を聞いて」

2)令和元年9月11、17日 北海道の農村への提案(1)(2)

各クラス民泊班に分かれ、講演後各自がまとめた、気になった言葉や理事長さんが最も伝えたかった言葉に、自分の考えを付け加え(北海道修学旅行を通して私たちに何を学び、何を考え、どうなって欲しいと思われているのか!)プレゼンテーションをし合いました
全員の発表後、班内で「修学旅行を通して学ぶべきこと」をまとめていきます

北海道の農村への提案(1)
北海道の農村への提案(1)ワークシート 1
北海道の農村への提案(1)ワークシート 2
北海道の農村への提案(1)ワークシート 3

北海道の農村への提案(1)ワークシート


次に、そこから見えてくる北海道の課題を考えていきました。

北海道の農村への提案(2)では、自分が考えた北海道の課題はどれくらい重要な問題なのか、逆に、何が良くなればその課題は解決できるのか、それらを裏付けるデータを集め、持ち寄り、北海道の農村への提案(2)ワークシートを用いて、自分たちの設定した「仮説」を、根拠をもってプレゼンテーションするための「エビデンス」として何が必要か、を検討していきました

北海道の農村への提案(2)
北海道の農村への提案(2)ワークシート 1
北海道の農村への提案(2)ワークシート 2

北海道の農村への提案(2)ワークシート

次回は、北海道修学旅行 第1日目・2日目のファームステイ(民泊)で、NPO法人「食の絆を育む会」農家の皆さまのご協力を得て、生徒たちが立てた「仮説」の根拠となるエビデンスを得るために、取材活動(聴き取り)をさせていただき、それらをもとに提案のブラッシュアップを図っていった様子を紹介します

「総合的な探究の時間」の取り扱いにお困りの現場の先生方の何らかの手助けになれば幸甚です

何かのきっかけで、現場の生徒たちや先生方が幸せになっていくような議論が拡がればと願います

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします

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