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ゲーミフィケーションデザイン6要素と心理学用語

 こんにちは。「世界を神ゲーに」するゲーミフィケーション賢者のきっしーです。

 9/2(土)成城大学にて開催された、日本デジタルゲーム学会 2023年夏季研究発表大会で、企画セッション「ゲーミフィケーションをヒューマン・モチベーションの理論から考察する」を発表しました。全体は下記の記事をご覧ください。

日本デジタルゲーム学会「2023年夏季研究発表大会」レポート。心理学の分野から見たゲーミフィケーションとその考察https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20230910002/

 私の発表部分は、発表時間の関係で短くしました。しかし、とても大事なことなので、私の書いた予稿(日本デジタルゲーム学会2023年夏季研究発表大会 予稿集 172~182ページ)を元にこちらにて解説します。


1.ゲーミフィケーション6要素に対応する心理学用語

 ゲーミフィケーションの有効性の説明するときに、同じ人の心理を操り、行動や意欲を変化させる手法という共通性を持っている心理学用語に置き換えて説明すると、納得を得られやすくなることも多い。我々がゲーミフィケーション6要素に対応して、用いることの多い心理学用語を紹介する。

心理学用語(前半)

①「能動的参加」に対応する心理学用語
 2つ紹介する。

自己決定性(Self-determination)
自分の意志で行動することで、やる気や満足感を高める心理的要因。逆に誰かにやらされていると思うとやる気や満足感は低くなる。アドラー心理学では「自分次第で人生は変わる可能性が高い」という。

内発的動機づけ(Intrinsic motivation)
自分の興味や好奇心から能動的に参加することで、学習や成果に対する動機づけが高まる心理的要因。長期間に渡って、目標に向かって自律的に行動する。逆にアメとムチの外発的動機づけは短期的にしか効果がない。


3.2 「達成可能な目標設定」に対応する心理学用語

 2つ紹介する。

フロー(Flow)
能動的に参加することで、自分の能力に見合った適度な難易度の課題に没頭し、快楽を感じる心理的状態。ミハイ・チクセントミハイの「フロー理論」の用語。難易度が高いと不安を、低いと退屈と感じ、没頭できない。例えば、高すぎる目標であれば、いくつかの段階の目標に分けて順番にクリアさせると良い。

ジャムの法則(Law of jam)
人間の選択肢に対する行動のことで、検討できる選択肢が増えると逆に選択が難しくなるという法則。対象者のレベルに合わせて、選べる範囲内の選択肢を提供する。


③「称賛を演出」に対応する心理学用語

 3つ紹介する。

ポジティブフィードバック(Positive feedback)
自分の行動や成果に対する肯定的な評価や反応を受け取ることで、学習や改善に役立てる心理的プロセス。

エンハンシング効果(Enhancing effect)
外発的動機づけによって内発的動機づけを高められる心理現象のこと。 「賞賛効果」とも呼ばれるこの効果では、相手を褒めることでその人のやる気を引き出せる。

アンダーマイニング効果(Undermining effect)
達成感や満足感を得るために行っていたが報酬を受けた結果、「報酬を受けること」そのものが目的になり、結果として本来の内的な動機が失われてしまう心理状態のこと。対象者がやる気になっている状態では、ゲーミフィケーション要素はほとんど必要ない。


心理学用語(後半)


④「即時フィードバック」に対応する心理学用語

 1つ紹介する。

即時性(Immediacy)
フィードバックが行動や結果の直後に与えられることで、その効果が高まるという概念。

但し、ビデオゲームの面白さが、常にプレイヤーの入力に対するコンピューター映像や音での「即時フィードバック」であることは知られているため、心理学的な補強はいらない場合が多い。


➄「成長の可視化」に対応する心理学用語

 1つ紹介する。

自己効力感(Self-efficacy)
自分が特定の行動を成功させることができるという信念や自信。行動を継続させるには、常にこれを感じさせることが大事。ゲームでは、レベルやポイントなどの数値的な指標を可視化して、対象者に継続して自己効力感を感じさせる。

⑥「独自性の歓迎」に対応する心理学用語
 2つ紹介する。

創造性(Creativity)
新しいアイデアや解決策を生み出す能力やプロセス。

心理的安全性(Psychological safety)
組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のこと。

以上の様に、ゲーミフィケーション6要素に対応した11個の心理学用語を紹介したが、これらは必ずしも1対1で対応するものではないので、対応表を下にまとめた。〇:一番目立って対応している、□:対応している、-:余り対応していない、の意味である。


心理学用語のゲーミフィケーション6要素への対応

2.まとめ

 日本ゲーミフィケーション協会の提唱するゲーミフィケーション6要素に対応する11個の心理学用語を紹介し、人の心理を操り、行動や意欲を変化させる手法という共通性を示した。今後は、心理学の既存の理論とゲーミフィケーション6要素との関係や整合性をより深く検討する必要があることや、ゲーミフィケーション6要素を用いたサービスや商品が対象者の行動や態度にどのような影響を与えるかを実験的に検証する必要がある。

 日本デジタルゲーム学会 2023年夏季研究発表大会で行った私の発表を、ゲーミフィケーション6要素と心理学用語 としてまとめた。皆さまに、ゲーミフィケーション活用の実践で、活用して頂けたら幸いです。
(おわり)

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執筆:日本ゲーミフィケーション協会 代表賢者 きっしー(岸本 好弘)

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