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『いきものコレクションアプリ Biome(バイオーム)』勝手にゲーミフィケーション大賞、大賞受賞インタビュー

一般社団法人日本ゲーミフィケーション協会の田中です。今回は、勝手にゲーミフィケーション大賞2022で大賞に輝いた、『いきものコレクションアプリ Biome(バイオーム)』について、株式会社バイオームの代表取締役である藤木庄五郎さんからお話をお伺いしました!
『バイオーム』とは、いきものを写真で撮影して集める、現実世界を舞台としたコレクションアプリです。撮影したいきものの名前はAIからいくつかの候補が提案され、A~E+まで(情報の少ないいきものには「N/A」)のレア度が設定されています。普段見かけにくいものほどレア度が上がり、多くのポイントを得られます。このポイントを貯めていくとレベルが上がります。また、投稿やクエストクリアによってバッヂも獲得できます。ランクアップ機能は、よりレアな動植物を撮影したい・レベルアップを目指したい・よりグレードの高いバッヂを獲得したいというプレイヤーのモチベーション維持に貢献しています。

田中:
それでは藤木さん、よろしくお願いいたします。自分は通勤途中や散歩中に気になった昆虫や植物を見かけると、ついアプリを立ち上げて種類を調べることが多いのですが、動植物の自動判別アプリやサービスは他にもありますが、コレクション性を持たせたアプリはあまり無いように思えます。まずは、サービスを開発したきっかけをお聞きしたいと思います。『Biome』を開発したきっかけを教えてください。

藤木さん:
私たち株式会社バイオームは、生物多様性を守るため、環境保全をビジネスにしていくことを理念としてスタートした企業です。生物多様性はデータ化が非常に難しく、そのため生物多様性の保全がなかなか進まないというのが大きな課題なのですが、そこで弊社が目をつけたのがスマートフォンアプリでした。スマートフォンは世界で40億台以上普及している上、持ち運び可能で位置情報を記録できます。世界中の生物の分布情報を集めてビッグデータ化するために、ユーザーの皆様にゲーム感覚で楽しくいきものの情報を集めてもらうスマホアプリを作るのはどうか、と思い付いたのが始まりです。また、あえてコレクション要素に着目したことについてですが、昔はたとえば虫捕りは子どもたちに人気の遊びのひとつでしたが、昨今では生態系の保全や保護の観点から採集自体が禁止されることも増えました。いきものを実際に「捕る」ことはできなくても、スマートフォンのカメラで「撮る」ことはできるので、ユーザーの皆様にいろんないきものに興味を持ってもらい、ゲーム感覚でいきものをコレクションするという“いきもの探し”を新しいアクティビティにできるのではないか。そう考えたのが、いきものコレクションアプリ『Biome』開発のきっかけです。

田中:
なるほど、生物多様性を守るためはデータ化が必要で、そのためにどうしたら良いかを考えられた結果、いきものをコレクションするというゲーム性を持たせたのですね。自分も野鳥の写真を撮りますが、「撮る」には「捕る」とは違う熱さがありますね!
このゲーム要素をバランスよく入れたことが、ついやってしまう、飽きずに続けてしまう秀逸なUI/UXに繋がっていると思われます。例えば、レア度やそのポイントの設計が面白さに貢献していると思いますが、特に意識してデザインしたことはありますでしょうか?また、苦労したことはございましたか?

藤木さん:
「生物多様性の保全」につなげていくことがアプリの主旨ではありますが、その主旨を掲げるだけで多くのユーザー様にずっと投稿を続けてもらうことは難しいだろうと考えました。そこで長く楽しく投稿を続けられるよう、ゲーミフィケーションを採り入れているのですが、あくまでもいきものを第一に考えるということを意識しています。たとえば、レア度の高いいきものの投稿を過度にあおってしまうと、採集や乱獲などの恐れもあります。そういったいきものの情報についてはアプリ内でも位置情報を強制的に非公開にするなど慎重かつ厳重に取り扱っていますが、コンテンツが現実世界と地続きであるアプリの特性上、ゲーミフィケーションによる面白さを追求すると同時に、いきものやいきものを取り巻く環境に悪い影響を及ぼさないか、という点については常に気にかけています。そのためアプリとしてはいきものが主役となるようにして、アプリを利用するユーザー様が現実世界とどう関わっていくか?というところまでを視野に入れて設計しています。レベルやバッヂをはじめとしたアプリ内のゲーミフィケーションによって、もっといろんないきものを見つけたいと感じていただき、投稿や図鑑を眺めるうちにいつの間にかいきものについて深く興味を持つようになる。そうやって関心を深めていくことが、生物多様性の保全へつながる第一歩だと考えています。

田中:
確かに自分もよりアンテナを張るようになり、身近ないきものに反応するようになりました。そして、さりげなく咲いている草花や煩わしく飛ぶ小さい虫もレア度が気になるようになりました。このレア度ですが、レッドリストや生物調査記録等をもとに独自に決めていらっしゃるとWEBに記載がありました。自分はまだレア度A・Bのいきものに残念ながら出会えていません。都会ではなかなか難しいかもしれないので旅先等でレア度の高い希少種に出会いたいのですが、どのようないきものが該当しますでしょうか?またランクSが設定される可能性はありますでしょうか?

藤木さん:
希少種でいうと、たとえば「雪の妖精」とも呼ばれることのあるシマエナガは、北海道に生息する真っ白な体につぶらな瞳がとてもチャーミングな鳥ですが、この種はレア度Aに設定されています。その他、アプリの「いきもの図鑑」機能でレア度だけでなく絶滅危惧種の情報や生態・分布についての情報が見られますので、気になる方はぜひいろいろないきものについて調べてみていただければと思います。きっと面白く感じてもらえると思います。また、レア度がそのいきものや種自体の価値と捉えられてしまう方向に進んでしまうのも良くないことなので、ランクSの設定は現状考えていません。アプリの楽しみ方はもちろんユーザー様それぞれだと思いますが、いろいろないきもの探しをする中で意図せず高いレア度だったときに「あっ、このいきもの、レア度が○だった!」「珍しい種だったり、絶滅の心配がある種だったりするのかな?」などと新しい発見や驚きをもっていきものと出会っていただけますと、私たちとしてはとても嬉しく思います。


チュウタロウさん撮影のシマエナガ

田中:
家にシマエナガのぬいぐるみがあるのですが、レア度Aなのでなかなかお目にかかれないことは承知の上で、一度本物に出会ってみたいです。レア度に関して、自分がこれは見たことないからレア度が高いだろうと思っていてもレア度Eであったり、逆に、これはよく目にする野菜、というか人参なのでレア度は期待できないなと思っていたら、意外にもレア度Cだったことがあったりと面白いですね。レア度を確認する際に、そもそも撮影した動植物の名前がわからない時に「しつもんする」をすると、結構早めに回答コメントが届き提案されます。専門性がかなり高そうな印象でしたが、どのような方に回答していただいているのでしょうか?専門のスタッフさんでしょうか?

藤木さん:
しつもん投稿への回答は基本的にユーザーの皆様に委ねています。中には私たちスタッフよりずっといきものに詳しいユーザー様もアプリを利用してくださっていて、「昆虫のことなら任せてください」「鳥だったらだいたいなんでも答えられます!」というように、ある種類に特化して答えてくださる方もいらっしゃいます。とはいえ回答はどなたでもできますし、写真の写りや条件によって確証が持てない場合もあるので、「この特徴から考えると、本当は別の種なんじゃないか」「いや、もしかしたらこの種では?」というようにコメント欄でわいわいと議論しながら候補を絞っていくこともあり、推理ゲームやトークゲームのような面白さがあります。こういう場があるのも『Biome』の魅力のひとつだと思っています。

田中:自分は本にいた1mmほどの小さな虫の種類を質問したのですが、すぐに「チャタテムシです」と回答をいただけました。よくわかるなと感動しました。このようなコアユーザーの存在もこのアプリの魅力の一つですね!


田中が遭遇した小さな虫

田中:最後に、今後の追加される機能や進化する要素はございますか?

藤木さん:まずは「いきもの図鑑」や「いきものマップ」機能の拡充を図っていき、これまで以上にいきものに興味を持っていただけるものにしていく予定です。またアプリの機能が複雑化してきたこともあるため、特定のいきものの投稿だけでなく様々なアプリの操作などに達成目標を設定して、達成ポイントを集めながらアプリの使い方を覚えていくための「ミッション」機能の実装なども検討中です。あとはゲーミフィケーションとは少し離れますが、アプリの海外対応も視野に入れています。『Biome』では現在、日本国内のほぼすべての動植物およそ10万種に対応していますが、今後、アプリの多言語対応とあわせて海外のいきものにも続々と対応させていきたいと考えています。今後もより一層多くのユーザーの皆様にいきものと出会う楽しみを味わっていただけるよう進化を続けてまいりますので、これからもアプリ『Biome』をどうぞよろしくお願い申し上げます。

田中:
なんと、10万種も対応しているのですね!一生のうちで全部にお会いできることはなさそうですねが、なるべく多くの図鑑を埋めていきたい欲求でいっぱいです!
また、生態系のデータを取得したい反面で、このアプリが原因で生態系に影響をもたらすことを危惧されていることもよくわかりました。生態系を守るという使命感とゲーム性とのバランス感が絶妙だと思いました。
藤木さん、本日はありがとうございました。

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執筆:日本ゲーミフィケーション協会 田中


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