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【名前が似ていてわかりづらい】JAとはどんな組織なのか?

日本の農業を考える上で確実に無視できないのがJAの存在です。
これからJAについて色々書いていきますが、まずはJAという組織のことをざっくりと把握するために、今回はJAについての基本的な情報をまとめてみました。

追記:JAの歴史についてまとめました。

先にまとめです。

まとめ
協同組合であるJAは、総合農協というスタイルのため農産物の販売以外にも地域の住民にとって必要なサービスを幅広く提供しています。
全国に点在する組織なのでそのまとめ役として全国組織もあります。

名前について

「JA(Japan Agriculture Cooperatives)」という呼び方と「農協(農業協同組合)」という呼び方の2種類がありますが、公式ホームページを見ると「JA」はニックネームとされていました。
JAという名前は1992年から使われ始め、その時からロゴマークも「JA」の文字を模した緑のアルファベットのようなデザインに変わりました。

JAは協同組合

協同組合とは

JAは株式会社ではなく協同組合という種類の組織です。
株式会社は営利活動の追求を目的とした組織ですが、協同組合は19世紀にイギリスで始まった仕組みで、共通の目的に対して個人が連帯し助け合う「相互扶助」の精神を基本に組織を運営をしています。
ですので運営方法にも違いが見られます。
例えば株式会社は株を多く持っている人ほど会社の運営に深く関わることができますが、協同組合は組合員1人につき1票の投票権を持っていてそれ以上持つことはできません。

日本では農業協同組合の他にも漁業協同組合、森林組合、生活協同組合のような個人が入るもの以外にも、中小企業による協同組合もありますし、信用金庫や信用組合は金融業における協同組合という立ち位置です。

JAの2種類の組合員

JAの組合員は正組合員と准組合員の2種類に分かれています。
出資金を払って組合員になることでJAが提供するあらゆるサービスにて優遇措置を受けることができます。両者の違いは以下です。

正組合員
・JAの運営に関与できる投票権を持っている
・会合や運営活動に参加する必要がある

准組合員
・JAの運営に関与することはできない(投票権を持っていない)
・会合や運営活動への参加は求められない

どんなことをやっているのか

JAと言えば農家さんの組織という印象が近いかもしれませんが、農業に関してのサービス以外にも地域の生活に関わるあらゆるサービスを提供しています。

販売事業

JAの核となる事業の一つが販売事業であり、一番代表的なものは「共同販売」です。
小規模の農家が集まって販売量を多くすることで、スケールメリットを活かした販売が可能になります。
そのためにJAが持つ集荷場で農作物を集め、共通の規格で農作物を選別して安定的な販売を実現しています。
販売先は卸売市場やJAが運営する直売所、ネット通販、レストラン、海外など多岐にわたります。

販売するための貯蔵施設や加工施設の設置・運営も行っており、企業と連携してカット野菜を販売したり、生の状態で売るだけではなく加工食品の開発や地域の特性を活かした特産品の開発も行っています。

購買事業

こちらもスケールメリットを活かしたものですが、購入するものは主に、農業に必要な機械や資材(肥料・農薬・燃料など)と食品やガソリンなどの日用品に分かれます。
できるだけ多くの組合員で一挙に買うことで低価格での買取を実現しています。

指導事業

農業に関しての技術指導や営農関連の情報提供など、地域を代表する良質な農作物を育てるために農業のレベルを底上げするこの活動も重要な事業の一つです。
最近では農業経営に関しての指導を行うJAもあり、TAC(Team for Agricultual Coodination)のような地域の有力な生産者の意見をJAの職員がヒアリングし今後の活動に反映させる取り組みも行われています。

信用事業

JAバンクとして知られるJA信連・農林中金はそれぞれJAの信用事業を担う組織で、組合員や利用者からの預金を原資としていますが、その役割は微妙に違います。
まず個々のJAは地域の農家や利用者の資金ニーズに対応し、JA信連は大規模な農業法人や地元企業、そして農林中金は国際分散投資などそれぞれお金を扱う土俵が違います。
そして国内の個人預貯金の10%を超える額がJAバンクに集まっており、この金額は某メガバンクをも凌ぐものです。
こういったこともあるので「JAは金融で儲けている」ということを言われてしまうのかもしれません。

共済事業

まず共済と保険の違いについてですが、共済は組合員(利用者)がお金を出し合う相互扶助の形を体現し、保険は個人が保険会社と契約をする形でビジネスとして存在します。とはいえ、一定の掛け率でお金を集めて不足の事態に備えるということに違いはありません。
JAの共済のカバー範囲はもちろん農業関連のトラブルも含まれ、農作業中のケガや死亡事故へ対応したものもあります。

厚生事業

戦前の農村部では無医地区や高い医療費など医療を受けられる体制が十分に整ってなかった地域があり、これを解決するために始まった医療事業をJA厚生連が引き継いだものが厚生事業となります。
主に中規模以上の病院が少ないエリアにおいて、保健・医療・高齢者福祉の分野で事業が展開されています。(地域によっては唯一の病院施設を担っていることもあるようです)

新聞・出版・観光

最後にまとめてしまいますが、日本農業新聞の発刊・各種雑誌の出版(家の光協会)・ツアー(農協観光)の遂行も農協系の組織が行っています。

JAグループの組織

一言にJAといってもJA自体やその周辺の組織にはさまざまなものがあり、それらを総称してJAグループと言います。
この似たような名前の組織がたくさんある。そして全国レベルと都道府県レベルに分かれていたりもするのがJAグループの構造がわかりづらい要因だと思います。

単協:いわゆるJAと言われる組織

まずJAという名前でよく表されるのは、各地域に点在するJAの組織、言い換えれば単位農協(単協)のことです。
よく「JAは〇〇」のような表現がされますが、これを書いている2022年7月末時点でJAは全国に562あります。
合併をしているのでここ30年で数としては7分の1になっていますし、1県1JAとなっている地域もありますが、それでも依然として全国に500以上あるJAを一括りに「JAは〇〇」と表現することはできないと思います。(組合員数は約1040万人)

JA全中:各JAの意見の調整役

上記のように500以上あるJAが全国に散らばっているわけですから、それらの意見をまとめるための調整役として存在するのが中央会(JA全中)です。
まず都道府県別の中央会があり、それをまとめる形でJA全中があります。

JA全農:農畜産物の販売や資材の供給など経済事業の中核

JAの事業の中で販売事業を紹介しましたが、それを県レベル・全国レベルで行っているのがJA全農です。
もちろん扱う農畜産物はJAを通して出荷されたものであるのですが、例えばある県で出荷量のある農産物は単協で売るよりも県単位で集めて販売した方が販売先の決定の効率化や流通面でのコストの縮減を行うことができるため、単協でも扱う農作物によって自ら販売する品目もあれば全農が販売する(全農に販売を委託する)品目もあります。

JA共済連:JAの共済事業の全国本部

JAの共済事業を県単位・全国単位でまとめる組織です。

農林中金:JAバンクの全国本部

先ほども書いたように、組合員や利用者からの預金を原資として、農家へだけでなく企業や国際分散投資など幅広いお金の使い道を決めている組織です。

JA全厚連:JA厚生連の全国本部

JAの厚生事業を全国単位でまとめる組織です。

JAにまつわる組織だけど上記とは少し違う意味合いを持つ組織

部会

部会とは各JAに存在するもので特定の品目を栽培する農家で組織されたり(トマト部会や酪農部会など)、若い人の集まり(青壮年部)、女性の集まり(女性部)などがあったりします。

JA全青協

45歳までの若手農家が中心となった組織で、全国の農協の青年部のメンバーによる全国組織です。

専門農協と総合農協

農協には品目や活動内容が限定的な専門農協と、販売だけでなく共済事業や厚生事業も行う総合農協の2つのスタイルがあります。
日本は総合農協の方がメジャーなのでJAの事業内容として当たり前のように共済事業なども書きましたが、アメリカでは農家がより職業的なこともあり専門農協のスタイルがとられることの方がメジャーなようです。
日本の農協は農地のある地域の農協一つに属するものですが、アメリカの場合は複数の農協への出入りが可能でより流動的な組織になっているようです。

IDACA:アジアの農協発展を支援

日本の外を出て海外での活動ということで少し書くと、JAグループの国際協力活動を担っているのがIDACA(一般財団法人アジア農業協同組合振興機関)という組織です。
アジアを中心に各国から研修員を受け入れ、農協の活動を伝えています。
世界の農家の大半は日本のように小規模農家です。
そしてそういった人々はいわゆる市場経済の恩恵は受けづらい立場にあります。そうした人が多く住む地域では地域で団結をして行動を起こしていく共助の精神が合っていると思います。

最後に

今回はJAの概要についてざっくりとまとめました。
日本の農業を考える上で避けては通れないのがJAの存在なので、ここの解像度を上げることで日本の農業への理解もさらに進むと思います。
今日書いたことを基礎知識としてもう少し踏み込んだ事柄についても書いていこうと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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