ソニータ〜少女の魂のラップ〜
先日、SDGsを考える催しである映画を見ました。その映画は「ソニータ」という映画です。
ソニータとは、アフガニスタンからイランに入り、不法移民となった少女の名前。
まだ10代のソニータは、過酷な運命に翻弄されながらも、イランで支援団体の援助を受け同世代の子どもたちと共に勉強をしています。
そんな彼女の夢はラッパーになること。
この映画を見て初めて知ったのは、アフガニスタンやイランでは、女性が人前で歌を歌ったりすることが禁止されているということです。
そして10代になる少女たちを待ち構えているのが、「会ったこともない男性との結婚」なのです。ソニータと同じ不法移民の少女は、父親の言いつけで15歳以上歳の離れた男性と結婚することが決まりました。
その結婚は娘の意思など関係なく、結婚で相手から得られるお金が目的なのです。
年頃になったソニータにもアフガニスタンに暮らす家族から結婚の催促が来ます。
相手からの結婚支度金90万円が得られれば、ソニータの兄が結婚をする準備ができるとソニータの母親は説得します。
でもこれはおかしな話です。
誰かの幸せのために、誰かの人生を犠牲にする権利は誰にあるのでしょうか?
「ソニータの母親、自分の娘を売るなんて何考えてるの!?」と見ていて最初はイライラするのですが、彼女自身も13歳で高齢の男に嫁ぎ、6人の子供を育ててきた人でした。
古き慣習に囚われ、小さな世界でしか生きられなかった母。
家の跡継ぎである息子のためになら、娘を簡単に売ってしまう母の姿に胸が詰まりました。
ソニータは結婚させられそうになりますが、この映画の監督が金銭的な援助をしたおかげで、アフガニスタンに戻ることを先延ばしにすることができました。
そんな彼女が作った一本のミュージックビデオが劇中内で流れてきます。
「売られる花嫁」というタイトルがついたこの歌の歌詞は、とても力強く、ハッとさせられます。(※日本語字幕があるので是非ご覧ください)
額にバーコードをつけた少女。
少女たちが「食用の羊のように、食べ頃になると売られていく」こと、沈黙を強いられる女性たちの現状を訴えています。この歌はソニータの話だけでなく、彼女の友人たちの話も参考にしており、両親がいずれ娘を売るために育ててきたことも嘆いているのです。
女性が歌うことを禁止されている国で、魂から叫ぶソニータのラップ。圧倒されました。
この彼女のミュージックビデオはYouTubeを通して全世界へと広がり、ソニータはあるNGOの協力もあってアメリカで音楽を学ぶチャンスを得ます。
そのためにはアフガニスタンでパスポートを取る必要がありますが、祖国に戻ることで家族に捕らえられ、結婚させられる可能性や、紛争に巻き込まれることも考えられるのです。
ソニータは家族には真実を告げず、アフガニスタンを脱出します。
生まれてはじめての学校がアメリカで、彼女はそこから英語と音楽を学んでいきます。
ここで映画は終わってしまいますが、ソニータのその後が気になり調べてみました。
彼女は今もアメリカで学業の傍ら音楽活動も続けているそうです。児童婚廃絶を訴え、国連のイベントなどでも積極的に発言をしているとのこと。
この映画を見ていて思ったのが、この映画が単にアメリカンドリームを掴んだラッキーな少女の物語ではないということ。どの女の子たちにも平等にチャンスが与えられべきなのに、慣習や戦争などさまざまな要因により、教育を受ける権利を奪われ、命を脅かされています。
ソニータと同じ境遇でないにしても、女性が沈黙を強いられるということは私自身も経験したことです。
誰かの大切な人生が、誰かの幸せの踏み台になってはならないと強く思います。
アフガニスタンでは再びタリバンが政権を奪還し、女性への圧力が高まっていると聞きます。
ソニータは当事者として児童婚の現実をラップという形で世に訴えました。
自分の思いを自由に表現できる少女たちが増えていくことを願うばかりです。
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