【再考察】ケルト神話から読み解く『アナ雪2』
こんにちは。Jessie -ジェシー- です。
考察しがいのあるディズニー作品のひとつ『アナと雪の女王2』。
以前にも考察記事をアップしたのですが、新たな発見があったので追記です。
ケルト神話と『アナ雪2』の共通点
ケルトとは、かつてヨーロッパ大陸に広く息づいていた古代の文明のこと。不思議な動物のモチーフや、始まりも終わりもない組み紐模様、女性神官のドルイドなどが有名です。
大陸ではキリスト教の伝播とともにすたれていってしまいましたが、島国であるブリテン島に伝わり、スコットランド・アイルランドでは若干形を変えつつ生き残ってきました。
世界を構成する4つの要素
「アナ雪」の世界には、魔法に満ちた4つの精霊が息づいています。
これらの妖精の構成は、ケルトの文化そのもの。
火・水(水の馬)・風・土です。
ケルトの伝説によれば、妖精たちの世界は人間の住む世界と並行して存在しており、妖精たちが人間とかかわりを持つこともあるのだとか。
普段は互いに交わり合うことなく生きていても、人が妖精にちょっかいをかけ、彼らが機嫌を損ねれば、不思議な力を用いて罰を与えることもあるそうです。
アナとエルサの祖父は闘争を持ち込むことで妖精たちの怒りを買い、調和を乱してしまったのかもしれません。
孫の代まで続いた不調和は、妖精たちの罰--ともとれます。
霧の向こうは異界
印象的な場面は数々ありますが、エルサたちが霧に包まれた北の国へ旅立つシーンはその一つではないでしょうか。
ケルト文化では、泉・湖・川・霧など、水にまつわるものは現世と異界を分ける境界だと見なすそうです。
霧の中を進むと、精霊たちが支配する世界に出られる――まさに異界へ足を踏み入れたわけですね。
ちなみに、エルサが霧の中に踏み込むシーンは旅立ちの瞬間だけではないことをご存知でしょうか?
実は名曲”Into The Unknown”の中でも、魔法の霧に足を踏み入れるシーンが描かれています。
2番のサビが始まる直前ですね。
霧の中で、エルサはこれから辿ることになる旅の道筋を示されます。
光に満ちたあの空間は、「謎の声」が支配する空間ともとれるでしょう。「謎の声」はエルサの魔法の力を使い、あの場に一時的な異界の入口を開いたのかもしれません。
アトハランのモデル?――アイルランドの小島
この島の写真を、『ケルトの想像力』の中で初めて見た時は衝撃に鳥肌が立ちました。
エルサが最終的にたどり着く島「アトハラン」には、もしかしてモデルがああるのではないか。
そしてそのモデルとは、アイルランドの西端に浮かぶ島「スケリグ島」なのではないか……。
この島は前述の通りアイルランドの西端に位置し、厳しい気候で有名だそう。
海に霧が発生している時は、日や時間によって見えたり見えなかったりするそうで、かつては「異界への入口」と考えられていたそうです。
厳しい気候の海に浮かぶ、まさに絶海の孤島。
立地といい、形といい、アトハランにすごくそっくり。そして異界の象徴。
映画の設定の起源にたどり着いた気分で、嬉しい発見でした。
『アナ雪2』が暗示する重要なメッセージとは
『アナ雪2』の中では、オラフによって特徴的なメッセージが繰り返されています。
「大人になったら分かるから、今は分からなくてもいいんだよ」
あえてこのようなメッセージが歌に織り込まれているということは、制作陣にも「難しいテーマを扱っている」という意識があったのでしょうか。
ここで、私なりの「『アナ雪2』が伝えようとしているメッセージ」を提示します。
ずばり自然との歩み寄りです。
ケルト文化は自然崇拝で、自然を象徴する数々の神がいました。
日本の古来からの神話との共通点も指摘されるほどです。
つまり、かつてはヨーロッパにも多神教があったのですね。
しかし一神教であるキリスト教の伝播によって、多神教のケルトにまつわるものの多くは破壊されるか、打ち捨てられ忘れられていきました。
キリスト教は自然を人間の管理下に置き、制御できる/すべきもののような印象を広めました。
結果、人間は栄えるために新たな生き方を始め、現在問題視されている様々な環境の課題が浮き彫りになっています。
『アナ雪2』は現在の在り方に警鐘を鳴らし、かつて息づいていたもの――自然との一体感を取り戻すよう呼び掛けているのではないでしょうか。
実際作中では、「異なる要素の一体化」「仲直り」が多く取り上げられている気がします。
まず1作目の『アナ雪』では、同じ屋根の下で別れ別れに暮らしていたアナとエルサが手を取り合い、「仲直り」することができました。
そしてアナ雪2では、もっと多くの「一体化」と「仲直り」が起こります。
アレンデールから来たアグナル(アナ・エルサ父)と、魔法の国に住むイドゥナの結婚
長年戦い続けてきたアレンデール軍と北の国の人々の和解
エルサの旅によって調和を取り戻していく妖精たち
人間でありながら精霊たちの仲間入りをしたエルサ
特にエルサが雪原を駆けるラストシーンは、自然の精霊たちと人間たちの調和を直接的に見せていると感じます。
古代は現在より劣っており、未発達な文化しか持っていなかったと思われがち。
しかし一方で、現在の人類が忘れてしまった大切な知恵もまた、古代の中に忘れられていることがあるのです。
『アナ雪』はケルト文化を暗示することで、そんな知恵のひとつである「自然との繋がり」「人間も自然の一部である」ことを思い出させようとしたのではないでしょうか。
余談:オラフの名前の由来を発見?
これは完全に余談なのですが。
最近、スコットランド・ゲール語を勉強しています。(Duollingoというアプリ、楽しく勉強できて個人的におすすめです!)
そんな中、印象的な単語に出会いました。
「教授」という意味のことばなんですけど。
なんと”ollaimh”と書いて「オラフ」と読むんです!
オラフは無邪気で、アナとエルサの楽しい子ども時代を留めているかのよう。
一方で、時にはアナに本当の愛とは何かを示唆したり、重要なメッセージを発したりと、物語・そしてアナたちの人生に欠かせないキャラクターです。
そんな示唆に富んだオラフの姿は、「教授」という意味にふさわしいのでは?
発音に気づいてキャッキャしました(*´ω`*)
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この記事が『アナ雪2』をさらに楽しめる一助になれば嬉しいです。
下に、私がケルトの勉強にと読んだ本たちを参考文献として掲載していますので、ご興味のある方はぜひ深く知ってみてください。
参考文献
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