見出し画像

彼が日本の情報機関のトップ、根津透

私が今公開している「愛国者学園物語」は第3部で、それには根津が登場しない。だけど、2ヶ月前に書き上げた以下の文章をそのままにしておくよりも、投稿しようと思った。


根津透(ねず・とおる)
1965年生まれ、日本人の男性。
物語の最終章である第4部で、美鈴をサポートする評論家。

「愛国者学園物語」にはすでに登場している。
35話から38話にかけて。

第38話はアクセスが多かった。小説とはいえ、現在の日本にファシズムの気配があるのか、という点に関心が集まったのだろう。


 日本の情報機関である内閣情報調査室の室長を務めた(2022年から3年間)。危機管理や東南アジア情勢(ベトナム)、それに海外でのエピソードをまとめたエッセイなど、著書が10冊ほどある。

 長野県上田市の出身。地元にゆかりのある、真田十勇士の話を聞いて育つ。東大法学部卒で、警察庁のキャリア官僚になる。
 公安警察の外事部門に長く勤務していた。本当は刑事警察などでキャリアを積み、警察庁長官に連なる地位につきたかったが、次第に、犯罪者の逮捕よりも、海外の情報を扱う仕事を任されるようになる。 

 (ベトナムの旧宗主国である)フランスに駐在する外務省一等書記官、内閣官房出向(内閣調査官)、外事情報部長などを歴任。警察を出て、日本の情報機関である内閣情報調査室の室長に。つまり内閣情報官だった。その職を3年務めて60歳で退官、評論家に。


 世間の人は彼のことを、ひょうきんな性格だと評する。情報官として仕事をしていたときは、周囲から、あまのじゃく、とかピエロとも呼ばれていた。それは、彼が、情報を他人には思いもつかないような解釈することがある。あるいは、わざと、多数派の意見に逆らうことから。

 それは、根津がふざけているわけではなく、様々な意見を出すことで、特定の意見を選びやすい「職場」の空気を変えようとした結果。真相を知る人たちは、彼には勇気がある、と言う。外国のインテリは、彼を「悪魔の弁護人 (devil‘s advocate)」だと、肯定的に評価している。根津が悪魔であるからではなく、議論を活発にさせるために、わざと反対意見を出すからだ。

 また、彼には「コールド・アイズ」というニックネームもある。それは、彼が仕事に集中するときは、冷たい感じの目つきになるから。根津を嫌う人間たちは、彼のことを、現場の人間が一生懸命集めてきた情報を、なんとも思わずに切り捨てる冷酷無比な人間だと非難する。それで、次第に、こういうあだ名で呼ばれるようになった。これは、英米などの情報機関コミュニティ「ファイブアイズ」にかけているという話もあるが、真相はわからない。それはともかく、根津に言わせると、情報分析には冷たい視線が必要だ。なぜなら、自分が収集した情報にこだわりすぎて、それを捨てることが出来ず、情勢分析を誤るから、だと。

 根津は、こういうことを話したこともある。
「私がね冷静さを保っている理由、それは勝つためなんですよ。自分が怒り狂っていたり、特定の考えに支配されていると、勝てないんだ。だが、世間の人は、そんな私が冷血動物みたいで、血も涙もない人間だと思っている。それに、私は、みんながカッカしているときに、わざと冷静さを装ったりもしてきた。だから、私はコールド・アイズと呼ばれるんだ」


中肉中背で、髪には白いものが混じる。
家族は妻と娘が二人。
プロテスタントのキリスト教徒である。

 カラオケが上手で、好きな曲は秋元康の歌。「愛が生まれた日」「川の流れのように」「恋するフォーチュンクッキー」「黒い羊」「Sing out」など。一人でいるときは「国境のない時代」を口ずさむ。


秋元がプロデュースしたアイドルグループAKB48の姉妹グループがベトナムにあり、サイゴン 48の略でSGO48という。彼女たちも「恋するフォーチュンクッキー」のベトナム語版を歌っているが、根津はその曲を諳んじていて、踊ることも出来る。



日本語、英語、ベトナム語を理解する。少年時代に、ハリウッドのベトナム戦争映画を見た影響で、大学生のときから、第二外国語としてベトナム語を学ぶ。日本の警察や公安職関係では数少ないベトナム語話者。そのせいか、30歳代には領事として、首都ホーチミンに駐在していたこともある。もちろん、喜んで赴任した。日本に駐在するベトナム大使たちは、みな、彼に好感を抱いている。

ベトナムに理解があるせいで、日本におけるベトナム人技能実習生の待遇やその後の人生について、憂慮している。それで、その問題の改善に自分の力を役立てたいと願っている。


 政治姿勢は、保守派とリベラル派を混ぜた感じ。日本が発展したのは、自由と民主主義を守ったからで、それに逆行するような日本人至上主義には嫌悪感を持っている。
 平成の次の時代、日本社会は日本人至上主義者が台頭して、右傾化してゆく。根津は、日本警察がハイテクを生かした大規模な監視システムを導入して、日本人至上主義に「反対する」人々を監視していたことに違和感を持つ。また、官僚たちが、自分たちに都合の良い情報だけを集めて上司に報告する様子に呆れ果てていた。
 警察にも、警察庁長官をはじめ、日本人至上主義者が多くいるので、根津は次第に彼らから疎んじられるようになる。だが、根津は有能であり支持者もいたので、官僚人生を全う出来た。

 内調のトップを務めた人間は、その後も、政府に残り仕事をすることが多い。だが、根津のように、政府に疑問を持つような人間には、国家安全保障局長や、国家安全保障会議の事務局関連など、政府の情報・安全保障関係の仕事に就任することはまず無理だった。それで退官し、評論家として、時には大学の講師としてベトナムや東南アジアに関する仕事をした。

 情報機関に勤務していたことから、米国の情報機関大幹部である、マイケル・ゴンザレス将軍とは、30年ぐらいの付き合い。お互いに尊敬しており、親しい友人である。根津が年上なので、お互いを「透さん」「マイケル」と呼び合う。二人で会食するときは、いつも辛口の日本酒を飲む。マイケルは、根津こそ、日本の駐ベトナム大使になるべきだと思っている。


 名前と外見は、俳優の根津甚八(1947−2016)から。透という名は彼の本名だ。根津さんは、アニメ映画「機動警察パトレイバー 2 the movie 」 の登場人物である「柘植行人」(つげ・ゆきひと)を演じている。私が、その映画のファンであること、と、私が好きな作家の向田邦子が根津さんのことを評価する文を残していたことから、彼に関心を持つようになった。それで、自分の小説に、と言ったらおこがましいが、根津さんに「演じてもらいたい」と勝手に想像して、この役を作り上げたわけ。


続く


大川光夫です。スキを押してくださった方々、フォロワーになってくれたみなさん、感謝します。もちろん、読んでくださる皆さんにも。