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アンリアルライフには心に寄り添う機械がいる

〇初めに

 アンリアルライフとは、2D型の不可思議な世界を旅する謎解きアドベンチャーとなっています。
結論から言うと小粒なADVで完成度が高くテキストを読み込んで世界観を深めていく人にはとてもオススメできます。
逆に文字がないタイプのものじゃないと頭が痛くなる人や誰かと戦いたいという人にはオススメできません。
この中には渦巻く陰謀やら巨大敵組織やら剣と魔法の出番はないからです。

※この記事には大きなネタバレはないけれど公式以上のバレは多少あります。もう買うよ! という人はここでブラウザバックをしてください。


#1 海が見える物語

公式PV。非常にデキがよくネタバレも少ないので、これを見て購入を決めた

 記憶喪失のモノの記憶を一部読み取れる少女が主人公となりどこか間の抜けたAI搭載型信号機195と共に現実とは思えない世界でたくさんの人ならざる住人たちに出会い記憶の中にあるわずかな「先生」という人を追っていく……という物語です。
……はい。言いたいことはワタシにも少しわかります。
この時点でデータが詰まりすぎています。順番に整理します。

本作の主人公、ハルは記憶喪失ながら、かわりに物に込められた過去の記憶を読み取れる(以下サイコメトリー)少女です。どこか影を纏っているような暗い雰囲気を持っていますが、多くの関わりや195とのやり取りを通し少しずつ変化をしていきます。

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どこか物憂げな雰囲気がある主人公、ハル

記憶を失ったことと、僅かな記憶が断片的にフラッシュバックすることで強いストレス下に晒されており、非常に不安定な状態となっています。
ハルの目的は、ほぼ唯一覚えていると言っていい「先生」に出会うことです。そして自分の不安を解消する道を得ることが最初の段階での最終目標です。

そして、AI搭載型信号機195。

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こいつ、直接脳内に……!

本当なんです、本当に道路に据え付けられている信号機なんです。そのため、本作のパートナーでありながら物理的な共に旅することは叶いません。
しかし脳との無線通信が行えるため、まるでテレパシーのように交流が行なえます。詳しい理論は置いといて、195は常に主人公を見守り支えてくれる、もうひとりの主人公とも言える存在です。

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全国各地の信号機よ、喋れ

疑似人格が搭載されているので、AIなのにかなり活発な会話や、心配性でおっちょこちょいそれに真面目で、見たことのないものに喜び、辛そうな主人公の姿に悲しみ、もしもの時に大胆な行動もとるという、主人公が淡々としている分を補うかのような存在です。
ただそこは腐ってもAI。きちんとサポートはしてくれます。
行くべき方角の表示から、会話ログの保存それにパスワードの解析まで。
頼れる部分と抜けてる部分の塩梅がちょうどいい、本作の重要キャラクターです。
また195の番号は195番道路から来ています。195番道路の信号だから195です。何回195っていうんだろう。

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そして「先生」。ゲーム開始直後からその姿を追うことになる。謎の人物です。
背丈からして大人で。主人公は「先生」と呼んでいたことだけは覚えています。
唯一の記憶に見つけた人のため自身の、そしてこの世界の謎を知るために、モノの記憶にある先生の姿を追い求めて進むことになります。
個人的には凄く好きなキャラクターなので、ぜひ先生に追いついて欲しいです。

その正体は、この話の秘密を担うものになるとか……

#2 幻想の住人

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Hello,UNREAL WORLD

 主人公のハルは195番道路で目覚め、195という信号機と共に周辺の探索をすると自分の物のはずなアパートの鍵を見つけ、部屋に入れば……
そこは海が見えるホテルだった、というところから始まるお話です。
なお195番道路がある街は海に面していません。

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えぇ……頭が浮いて立方体で回ってる……

不思議すぎるところで会うのはこれまた現実感を見失う人々。
頭がキューブで回転している異形頭、ネズミ、アリ、ペンギン、熱帯魚、マリモなどなど……
彼らはほぼ対話可能な相手でちょっと不思議な交流が行なえます。
間違いなく誰か好きな相手は見つかると思いますよ。
全員キャラ付がしっかりされており、様々な形で主人公と関わってきます。
明らかに人間ではないのにどこか人間くさい、そんな彼らが織り成す世界は独特で、会話を重ねるごとに世界にどっぷりとハマれます。

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俺様系犬というラインナップもございます

ワタシはもっとこの世界にいたくなりました。

#3 恐怖と優しいみんな

 本作は敵との戦いがありません。かわりに主人公のフラッシュバックが重く、正気を削るような演出と共にどこまでが幻覚でどこまでが実際なのかがわからない境目に陥ることが、何度もあります。

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なんか大変な事になっているけれど幻覚? 本当?

ホラゲーのホラー演出とも通ずるところはあるとは思いますが、あちらは超常的な恐怖がメインこちらは内側にある傷がメインになります。
この記憶たちは本当に取り戻して幸せになれるものなのか?
自分の行動はどこまでただしいのか?
先に進まなければ何もわからないけれど、先に進むことが果たして幸せに繋がるのか、わからなくされていきます。
そこは195がサポートしてくれるので、プレイヤーとしては信じて進めるしかないんですけれどね。

そして恐ろしいものはもう一つ。
このゲームの終わりが近づいていくということです。

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このゲームはそっと送り出してくれる。けれどその温かみが離れがたいものになるのだ

本作は良くできたゲームであらゆる面から「このゲームが終わらなければ良いのに」と思わせることが完璧で、最初の頃はクリアへ向かいたいのに、終わり際ではこの世界に残りたくなってしまう……
そしてこのゲームをクリアすることがとても怖くなってしまう。
ゲームの中には、この世界に居座りたくなる事を心理的に誘導する仕組みがたくさんあり……
だからこそ最後は感動的なものになりうる。
ぜひ終わりたくない物語の終わりを迎える心の準備を主人公と共にしてください。

#4 2重の本

 少しここからネタバレ色が強めになります。ただし中身を広げて晒してしまうようなことはしないので安心してください。

 この物語はここまでファンタジー世界の冒険という面を打ち出してきましたが……
この物語はもう一つの面を持ち、それが物語後半から特に加速して表に出てきます。その要素とは。

空想科学ADVと言う面です。

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こういうのが好きなんです

なーに言ってるんだとはなりますが、AI信号機というものが出てきている以上別に唐突な話でもないのです。
存在しない科学を存在があるように構成していく……
つまりサイエンスフィクションに近い心が込められています。
序盤にちりばめられていた情報が、どんどんと1つの形になっていく様が見られるため、ロジックと今までの経験で物事を解決していこうとするさまは、「おお!」となること間違いなし。

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 現実にも欲しい裸眼AR矢印

#5 仕組み

 本作はアドベンチャーなのでテキストを読み進め世界に入り浸るのはただしいのですが……
謎解きも多くちりばめられています。
進むためや助けるため、それに推理を進めるために。
本作の特徴として、カバンに物をしまうことと、カバンから取り出して手に持つことで解決に導いていきます。

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カラスがカギを持っていて返してもらいたいのだが……

手に持って使用したり、そのまま何かを調べたり、手に持ったまま進むと何かが起こると言った具合に、手に持つことが重要なアクションとなっています。
またアイテムによっては特定の相手を誘導できるものがいくつかあり、それで動きを操ることで解決するパズルも多くあります。
大事なのはどれもそんなに高難易度ではなく直感的にわかることと……
主人公の能力であるサイコメトリーが鍵となります。基本的にモノの記憶には答えが写り込んでおり、その道筋を考えて成り立たせるだけで済みます。ちょっとズルいぐらいの能力ですね。

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これにはもうどんなパズルもタジタジ


サイコメトリーで記憶を読み取り記憶から答えを探し、その答えになるような道筋を探して操る。
難しくはないけれど達成感がありゲーム内の仕組みがちゃんと繋がったものです。
195も会話の履歴、読み取ったモノの履歴、そして主人公との会話で答えをサポートしてくれます。

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あなたが忘れても、195が覚えています。あなたの役割は、その何気ない会話からヒントを得ることです

#6 撃ち合うアソビ

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なに?

 本作は様々な要素がありますが……
いわゆる大作RPG内の謎ミニゲーム的な物がここにもあります。
明らかに古いゲームのようなテイストを感じますがちゃんと195と遊べるようにされています。
対戦型アクションシューティングゲームというまた本編とは全然テイストの違う内容となっています。
正直このゲームは本編との関わりはほとんどなく、クリアせずとも話は進みます。
ただこれがなかなか面白く、ついつい195と熱くなることも多いのです。
ミニゲームみたいに、謎解きには関係なくても本作の世界観に浸らせる仕組みは多く、プレイヤーとしてだけでなく、アンリアルライフの世界にいる者として楽しんでいけることでしょう。
ちなみに後半の「そんなことしてる場合じゃない!」時でも問題なく遊べます!

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なに????

しかも本作内時間が進むごとに195は強くなるため、危険な時に最強の195と死合えます。死合うために進むのか、物語のために進むのかはアナタ次第。

#7 諸説の廊下へ

 色々とオススメできるポイントはあるのですがどの品も欠点が見えてこその美しさというものがあります。
まず第一に、時折説明が不足します。アンリアルライフは比較的優しいとはいえ、ちょっとした説明不足からの操作混乱を招くことがあります。
自分が結構な勢いで引っかかったのは、とあるところで笛を使うのですが……その笛で対象をあやつれるというところ。
笛を吹いた時に前進と停止はわかりやすいのですが、放置しておくと向きを変えるのでみなさんも忘れないでくださいね。
また、ゲームオーバーはないのですがマルチエンドになっています。真エンドは1つありそこに向かっていくのですが……分岐地点がそこそこ離れていて厄介ですね。
しかしヒントは少ないのですが、『分岐地点自動セーブのすぐ近くに分岐に必要なモノがあります』から、間違えてすぐにまた進まず探索してみてくださいね。
結構やり直すのにも、操作時間待ちもテキストの長さもあるのであんまり試行錯誤も大変かもしれない(ムービーカットはたしかありません)

それとホラー演出が心臓に悪めなのもありますが……目にもあまりよくありません。
強烈な演出が出された状態で動かなければならないシーンもあるため、適度に休憩しながらプレイしましょう。

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あなたがお使いの端末は正常です

それらがわかったうえでも、非常にプレイする価値が高い本作。
ワタシが好きなのは、まず音楽。世界を彩るBGMやSEはどれも雰囲気にマッチしていて、ホラー演出時の走るようなピアノも耳に残りやすいはず。謎解き達成時の音も、華美ではないのにスッと心の中に染み込む雰囲気にあった音でお気に入り。さらにエンディングテーマもあるので必聴です。

そしてキャラクターたち。これが物凄く好きになれてしまう!
造形が特殊なキャラクターが多いのも魅力ではありますが、何枚もある1枚絵も含めて、キャラクターたちが中心となりこの世界を回してきます。
先程書いたペンギンですが、彼は電車の車掌をやっています。常に葉巻をふかしているのが特徴で、車内でも吸ってます。人間だったら今頃ツイッターに写真上げられて炎上してました。

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こんなイケメンですが、本作で1、2位を争うほどの常識枠です

このペンギンは責任感が強く義理堅い性格で、主人公との絡みも多いためかなり印象に残りやすいキャラだと思います。
どこかおちゃめなところもあり、それなのに主人公を導くようなことも言うので、非常に大人なイメージのあるキャラクターです。
エビをあげたときの反応も好きですね!
他にも魅力的なキャラがたくさんいるアンリアルライフ、ぜひとあるキャラの「そろそろ……本気を出すかぁ」というシーンまでぜひ遊んでください。

#8 幻想へ

 ここまで読んでくださったみなさんは、もう買おうとしているか、まだ買おうか迷っているかの2つだと思います。
そこで買おうか迷っている人は公式のページをご覧ください。
なんと、影響を受けた作品とされているものがずらりと並んでいます(多い!)

そして買おうとしている方は、Steamまたはスイッチで購入ができます。

 ワタシはこのゲームをやって、とても良い気持ちになれました。すごく快感を得たり爽快感はたくさんはありません。しかし最後には癒やされ、現実との見方が変わるような良い体験ができました。

アンリアルな生活をぜひ覗いてみてください!!

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