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シェアの精神が音楽シーンを変える!?|origami Home Sessionsが生み出す新たな音楽未来図[前編]

コロナショックの影響でライブができず、苦境に立たされている音楽シーン。大きな注目を集めた星野源の「うちで踊ろう」をはじめ、約70組のアーティストが参加したライブハウス支援プロジェクトなど数多くのムーブメントが起こった中で、いち早く始動した「origami Home Sessions」なる取り組み。画期的と評価を受けるそのプロジェクトについて、仕掛け人の対馬芳昭さんに前後編で聞いた。

──「origami Home Sessions」とは、どのような取り組みなのでしょうか?

ライブができず収益が当面見込めないアーティストのみなさんに、僕たちorigami PRODUCTIONSに所属するアーティストの楽曲を無償提供するもので、そのデータを使って制作したコラボ曲などをネットにアップできるほか、リリースすることも可能です。僕たちへの利益還元は不要で、収益はリリースしたアーティストのみなさんに全て提供しています。

苦境に立たされた人を助けることは、新しい表現や才能が生まれる可能性につながる。技術や経験はシェアすべきもので、それはいずれ自分たちに返ってくる。僕たちはそういったマインドを常に持っているので、所属アーティストのみんなも迷うことなく「やりましょう!」という感じでした。今まさに崖から落ちそうな人を助けるには迷っていられない。様子を見ながらではなく、とにかく早くやることが大事だと今回あらためて感じました。


──origami PRODUCTIONSにはどんなアーティストが所属していますか?

海外でも高い評価を得ているキーボーディストのKan Sano、シンガーソングライターのMichael KanekoやHiro-a-key、バンドOvallのメンバーでそれぞれプロデューサー/トラックメーカーとしても活動するShingo Suzuki、mabanua、関口シンゴ、昨年デビューしたNenashiが所属しています。常に自分たちの表現を磨き、その表現を狭めないこと、絞らないことが僕たちの強みです。ライブやフェスはもちろん、J-POPや海外アーティストのプロデュース、映画・ドラマ・アニメ・CMなど音楽に関わるジャンルは限定することなく幅広く対応している。一見すると雑多なようですが、表現はブレないようにして時代に応じてアウトプットを変えるのは僕たちにとっては日常です。

これまでプロデュースの依頼を受けても時間的な問題でできないこともありました。コラボできなかったアーティストや若い才能には、ウチの技術や経験を使い倒して、名を揚げるチャンスにしてほしい。「origami Home Sessions」が今後の音楽シーンを変える可能性を秘めているかどうかは正直僕にもわかりません。何が正しいかは、今は判断しなくてもいいのかなと。とにかく今やるべきだと判断したことをいち早くやってみて、さまざまな取り組みの良い部分を掛け合わせていくことが大事だと考えています。

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──日本の音楽シーンには、どのような課題があるとお考えですか?

才能がある人、売れる可能性がある人、ヒットのフォーマットに乗ることができる人ばかりにお金をかけてしまう傾向にあると感じています。もちろん、ユーザーは好きな音楽を聴けばいいと思いますし、自由競争なのでビジネスとしてヒットを生み出すことは悪いことではありません。ただし、ビジネスであると同時に音楽は文化でもある。一般的には知られていなくても、音楽カルチャーを担っている才能あふれるミュージシャンが数多くいます。そういった人たちの活躍の場を作らなければいけない…と常々考えていました。

そのために、「origami Home Sessions」とは別の動きとして、貯めていた自己資金2000万円を寄付する「White Teeth Donation」を4月の初めに設立しました。2年以上前から計画していたのですが、新型コロナというかつてない危機に直面して、まずは半分の1000万円を困窮する音楽関係者の支援、残りの1000万円を音楽シーンという自分たちのフィールドを耕すために充てることにしました。ヒットの観点だけでフィールドを踏み荒らすと、音楽文化の醸成ができなくなってしまう。これからは音楽業界全体でさまざまな表現者のサポートをしていくことが必要です。そのためにも音楽シーンに携わる者同士が良識をもってフィールドを譲り合い、耕していくことが不可欠だと考えています。

まさにorigami PRODUCTIONSに浸透するシェアの精神を具現化したといっても過言ではない「origami Home Sessions」。そして、文化としての音楽を守るために立ち上げた「White Teeth Donation」。次回[後編]では、「origami Home Sessions」の反響や新たな才能を発掘するシステム、さらに音楽シーンの可能性について語ってもらう。
■PROFILE■
origami PRODUCTIONS CEO
対馬芳昭(つしまよしあき)

1974年生まれ。広告代理店勤務を経て98年にビクターエンタテインメントに入社し、海外アーティストから邦人ジャズまで、さまざまなアーティストプロモーションを担当。2006年ビクターエンタテインメントを退社し、2007年origami PRODUCTIONSを発足、本格的な活動を開始する。所属アーティスト(Shingo Suzuki (Ovall)、mabanua、関口シンゴ、Kan Sano、Hiro-a-key、Michael Kaneko、Nenashi)はライブのほか、国内外問わず幅広いアーティストのプロデュース、リミックスも手がける。


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<発行日:2020/06/17>
*本記事は、FIREBUGが発行するメールメディア「JEN」で配信された記事を転載したものです。

Writer:龍輪剛
Photographer:龍輪剛

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