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【開催報告】「JEITA World Design Forum2023 社会課題のためのデザインとは」

<0.はじめに>


 
皆様こんにちは。今回は、JEITA事務局が担当します。宜しくお願いします。2023年2月1日、「JEITA World Design Fourum2023 社会課題のためのデザインとは」を開催しましたので、そのレポートをお届けします。
前回の記事ではソニーグループ吉森さんから「次回以降は、トップランナーに聞いてみよう/欧州に学ぼう(デンマークの取り組み)を予定しています」、と記事の予告頂いており、早速、欧州の取り組みについてご報告できることを嬉しく思います!今回の記事のアジェンダは、以下の通りです。

1.イベント概要/2.和やかなオープニング/3.いよいよ、ベイソン氏の基調講演/4.各ご登壇者様のご講演/5.美味しくて楽しいネットワーキング

<1.イベント概要>


 皆様は、デンマークという国についてどのようなイメージがありますか?サッカーの強豪国というイメージや童話作家アンデルセンの名前が挙げる人もいるかもしれませんね。
 ただ、デンマークでいまホットトピックとなっているものは、「デジタル化」です。現に、デンマークは2年に1回国連が調査している電子政府調査ランキングで3回連続首位を獲得したり、IMDの国際競争力ランキングで1位になるなど最もデジタル化が進んでいる国とされています。
 JEITA デザイン委員会では、デンマーク大使館様と共催にて、GXとデザイン、DXでのユーザーデザイン、倫理デザイン、ブランディングとデザインなど国際的知見の共有を目的にイベントを開催しました。
 基調講演は、デザインの力でイノベーションや新しい価値創出を推進するデンマークデザインセンター(DDC)CEOのあのクリスチャン・ベイソン氏です。続いて、ブランド変革を支援するコントラプンクトジャパン社の濱口屋有恵様、サイトのパフォーマンスとユーザー体験向上を支援するQueue・it社のぺターセン花野様、欧米の政府機関が規定するデータや倫理基準に準拠したサービスを提供している2021.AI社のミケル・ムンク氏にご登壇頂き、デザイナーをはじめ、各社内でDX事業を推進する200名近い方が参加しました。

<2.オープニングセッション>


 オープニングは、JEITAデザイン委員長の富士通㈱の宇田氏と、ベイソン氏、デンマーク大使館のハンセン氏を交えたセッションです。低迷する日本経済や、デンマークでの例えば若者のメンタルヘルスなどの課題を共有し、解決に向けてデザインを軸とした共創の必要性や企業間の関わりなど共創プロセス自体を楽しむことの大切さが語られました。

(写真1:オープニングセッション 左からベイソン氏、ハンセン氏、宇田氏
撮影:富士通㈱横田氏)

<3.いよいよ、ベイソン氏の基調講演>


 そして、ベイソン氏の基調講演では、「解決されるべき社会課題のためのデザイン」と題して、以下のことをお話頂きました。

・企業は、投資家だけでなく、社員や社会に対して果たすべき社会的責任がある。ダボス会議では、株主資本主義からのシフト、ステークホルダーへのシフトが強調された。
・デザインの果たすべき活動範囲の幅は広く、デザイナーは課題のスピードに対応しつつ、物事を良い方向に変えることも必要である。デザインが貢献出来た事例として、米国退役軍人省でウエブサイトを改善したことで、省への信頼が25%増加した。
・デンマークでは若者のメンタルヘルスの低下が課題で、DDCもその解決に取り組んでいる。良い将来を想像しやすいようにシナリオを作り、リサーチや共創を推進している。DX化のよりどころとなるよう、人が中心のThe Digital Ethics Compass(デジタル倫理の羅針盤)もDDCが企業と協業しながら作成し、安心して使える責任あるテクノロジーを設計する支援もしている。
・前提を疑い、思考を拡大し、誰に近さがあるか考える。若い人が未来への不安を抱えるなか、皆が協力し、様々なステークスホルダーを巻き込みながら協業することが必要。

(写真2:ベイソン氏)

 筆者がこれまで勤務してきた日系企業では、売上高等の「上司に説明できる目に見える成果」が求められるように感じます。それは、上司の上司や株主や投資家を意識したものであると思います。一方で、ベイソン氏の講演では、「ダボス会議では、ステークホルダーは株主だけではない」と話されたことが取り上げられました。
 最近、多くの企業では、売上高など主に過去の成果を記す有価証券報告書のほかに、ガバナンス、環境保護、ダイバーシティなどの非財務情報を未来への価値創造プロセスとして示す統合報告書を発行しています。
 筆者は、デザインを活用した社会課題解決は、有価証券報告書にすぐ反映出来るものではなく、未来へ向かうための社会全体への価値創造プロセスの一つと考えています。このポジショニングを現場の上司・同僚の皆様、そしてデザイナーや私たち事務局も深く認識する必要性を改めて感じました。

<4.各ご登壇者様のご講演>


 続いて、コントラプンクトジャパンの濱口屋様から、化石燃料から再生エネルギーへ事業転換したオーステッド社のリブランドを支援されたお話がありました。ここでは、デザインの重要性は勿論のこと、周りの人や社会にとっての適切さが重なったところが本質であり、本質にはパーパスがあり、それをブランドが与える体験にまで落とし込むことなど企業支援の例を用いつつ、とても深い内容を共有くださいました。
 そして、Queue・it社のぺターセン花野氏からは、アクセスが集中したときの仮想待合室を提供されているお話を頂きました。自分の待ち順番がわかり、公平性が保たれるとお客様からの信頼やロイヤリティにつながる、というお話です。世界的なスポーツイベントの申し込みサイト等にも採用されているので、経験された方も多いかもしれません。
 最後は、2021・AI社のミケル・ムンク様より、各国で規定されている法令に準拠したガバナンス、リスク、コンプライアンスを遵守することの必要性やどのように行動規範をさだめていくか、またそのバランスなどをお話頂きました。

(写真3:コントラプンクト社 濱口屋様)
(写真4:Queue・it社 ぺターセン花野様)
(写真5:2021.AI社)

 どのお話も大変興味深かかったのは勿論のこと、こうやって書いていくと、ベイソン氏からバトンを受け取った各登壇者様は、社会課題を解決しようする他社をサポートする事例や具体的な商品・サービスのの事例、法律的な側面などのお話をして下さったのがわかります。講演内容がマクロからミクロへしっかりと落とし込まれるようにプログラムをご提案下さったデンマーク大使館の皆様のお心遣いに、改めて感謝しています。

<5.美味しくて楽しいネットワーキング>


 さて、熱いご講演と質疑の後は、リアル会場での和やかなネットワーキングです。多くの方にご参加頂きました。そして楽しいひと時に花を添えてくださったのが、かわいいデンマークのお菓子!ココナッツドリームケーキ、スパイスキャロットケーキ、ベリーのジャムサンドウィッチクッキーなど、とっても美味しそうです。
 デンマークの皆様も「有用な会議のためには美味しいお菓子とお茶も必須」とおっしゃっていたとか。ネットワーキングも大変盛り上がり、お菓子も60杯分ご用意したソフトドリンクも完売(?)となりました。

(写真6:デンマークのお菓子)
(写真7:デンマークのお菓子)

 とっても楽しかった講演会とネットワーキング、無事にお開きとなりました。ご登壇頂いた皆様、デンマーク大使館の皆様、そしてご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。

講演会の様子は、デンマーク大使館様のLinkedInにも掲載頂いておりますのでご紹介します。


 JEITAデザイン委員会は、今回のフォーラムの内容もデザインを軸とした社会課題解決に向けた活動に活かしたいと考えています。
 次のNOTEでは、社会課題解決に取り組む先進団体へのインタビューレポートを公開致します。

JEITAデザイン委員会に関する問い合わせ

 一般社団法人 電子情報技術産業協会
 事業戦略本部 市場創生部 志村・飯生・飯沼・飯野
 デザイン委員会|JEITA

2022年度JEITAデザイン委員会参加企業は以下の通り(敬称略)

OKIプロサーブ、オムロンヘルスケア、キヤノン、コニカミノルタ、JVCケンウッド・デザイン、シャープ、セイコーエプソン、ソニーグループ、TOTO、東芝、ニコン、NEC、東芝テック、パイオニア、パナソニック、日立製作所、富士通、富士電機、富士フイルム、富士フイルムビジネスイノベーション、三菱電機、リコー、レノボ・ジャパン

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