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#宇宙

再使用ロケットの1段目戦略(論文紹介)

再使用ロケットの1段目戦略(論文紹介)

これまで、再使用ロケットについて記事を書いてきた。国内だけでも再使用ロケットは手を動かし着実に進めている人もいれば、懐疑派(自分がそうだ)もいる。
宇宙開発プロ&ファンでも再使用ロケットについて、NASAが大好きで盲目的にSpace Shuttleを推す人は少なくなったが、SpaceXが大好きで盲目的にFalcon9やStarshipを推す人は多い(自分も半分はそうだ)。
再使用ロケットの議論が複

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ロケット打上げと緯度の話

ロケット打上げと緯度の話

ロケット射場は赤道近くが良いだろうと信じている人は多い。実際にそうなのだろうか?
結論:目的の軌道(目的地)による

ロケット打上げには人工衛星ごとの目的地がある。
宇宙空間では特定の1点に留まることは出来ない。したがって地球周辺であれば地球周回軌道というところで運動し続ける。
射場緯度の有利不利はこの目的の軌道に依存する。

静止軌道と地球低軌道静止軌道という軌道は赤道直上の高度約3.6万kmに

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再使用ロケットの経済性

再使用ロケットの経済性

最近、世界中で再使用ロケット開発の機運が高まっている。再使用ロケット、つまり打ち上げた後に着陸・回収して繰り返し使うロケットのことだ。

これはSDGsの文脈が強くなってきたことに加え、SpaceXやBlue Originのロケットの派手な演出のためだろう。SpaceXのロケットの着陸する姿は多くの人を興奮させた。

ちなみに、スペースシャトルも1980年代には開発された再使用ロケットなのだが、色

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宇宙技術の標準規格

宇宙技術の標準規格

「ISO準拠!」なんかすごそう、なんだかわからないけど!

と言ったときのISO(アイエスオー)は、多くはISO9001規格を指している。これは国際標準化機構(ISO)が決めている規格である。ISO9001という文章番号の規格に品質マネジメントについて書かれている。規格を守り認定団体に監査されてはじめて品質管理を守っていると名乗れる。内部統制改善とブランディングのためにアピールする会社は多い。

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110億円調達の米国ロケットベンチャー企業Vector Launchの破産はナゼ?

110億円調達の米国ロケットベンチャー企業Vector Launchの破産はナゼ?

2019年12月Vector Launch Inc.という超小型ロケットを開発する米国のスタートアップ企業が破産した。

正確には米連邦破産法の第11条なので再建型な手続きであり、事業再開する可能性はある。同社は2016年創業で、crunchbaseによると$102.8M(日本円で110億円ほど)の資金調達が報道されていたので破産は話題になっている。

破産の経緯は、世界最大のベンチャーキャピタル

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SpaceXのロケットが安い理由は再使用ではない、という話

SpaceXのロケットが安い理由は再使用ではない、という話

結論:安いロケットエンジンを持っているからである。

SpaceXのFalcon1(退役済み)やFalcon9に使われているMerlinエンジンはRP-1(灯油に似た燃料)と液体酸素(LOX)を推進剤にしたロケットエンジン。A~Dとバージョンがあり、推力は34〜62トン重と2倍近くも差があるエンジンであるが、価格はおよそ1億円だと噂されている。極めて安い。
エンジンだけではなく全体で低コストの方法

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