思ってたのと違う?!カンボジア経済の躍進②:インターンがカンボジアのFDIについて勉強してみた
こんにちは!JCI LABのインターン生、まるこです。
JCI LABは、カンボジアと日本の双方の国のビジネスコミュニティに価値を提供し、ビジネスの成長・発展に貢献することをミッションにしています。
「思ってたのと違う?!カンボジア経済の躍進①」では、1.意外すぎるカンボジアのGDP成長率の高さ、2.製造業・農業・観光業がその経済成長を支えていることをご紹介しました。
しかし、カンボジアの経済成長の理由を探る上で見落としてはいけない要素がまだあります。
それは、海外直接投資(FDI)です。
本記事では、カンボジアにおけるFDIの現状を詳しく掘り下げていき、FDIがなぜカンボジア経済にとって重要なのかについて、考えていきます!
海外直接投資(FDI)って何?
海外直接投資(Foreign Direct Investiment)とは、企業が海外で事業を行うために行う長期的な投資のことです。新しい企業の設立、既存企業の株式や資産の購入、合弁事業の設立など、様々な形態があります。
対象国での雇用機会創出、技術移転にもつながるというメリットも。
一方的な援助とは異なり、投資する側は新たな市場への進出・生産コストの削減などといったメリットがありつつ、投資を受ける国も雇用が生まれたり新技術が伝わったりと、win-winな経済発展にもつながっていそうです。
カンボジアでのFDI
カンボジアの経済成長におけるFDIの役割
カンボジアでの経済成長にFDIがどのように貢献しているのか気になり、この論文を読んでみました。
カンボジア開発評議会の産業レベルのデータを分析しています。
1993年から2017年の間に、カンボジアで1,600以上のプロジェクトが650億ドル以上のFDIを呼び込んだそうです。
特に労働集約型産業、その中でも衣料品およびテキスタイル産業へのFDIが多く、1994~2017年でこのセクターにFDIの総額の内65.1%が流入しました。
現地に工場が建設されるなどすると、経済成長の重要な要素である資本蓄積がカンボジアで進みます。
以前の記事で見たように、カンボジアの主要産業である縫製業の成長にも、FDIは大きく貢献していると言えそうです。
観光関連サービス産業も重要な投資対象であり、同期間中に全FDIの19.6%を占めました。
前回記事で紹介したイオンモールはこの一つだと思います。ショッピングや娯楽の施設を充実させ、地域の観光資源としても機能していました!
ショッピングの充実はもちろん、遊園地があって子供たちが楽しめる場所になっていたり、雨でも大丈夫なサッカーコートがあって若者が一生懸命練習していたり、かと思えばジェンダー平等を推進するのためのイベントスペースがあったり、、!
日本のイオンという会社がカンボジアに進出したからこそこのような場所ができたんだろうし、建設過程も含め、イオンで働く現地の人たちの雇用を生み出していますよね。
2018年以降、カンボジアへのFDI総額は毎年増加しています(画像左上)。
しかし2023年第一四半期では金融分野への投資が一番多く、投資分野の多様化も進んでいますね(画像右下)。
経済の成熟や以下で紹介する政策が影響を与えていそうです。
政策とインセンティブ
カンボジア政府は様々な投資奨励策をとって更なる投資誘致・促進を目指しています。
政府は、従来の主産業だった縫製産業などの労働集約型産業から、高いテクノロジーを要する高付加価値の産業への転換を目指すとしており、投資優遇措置もこの志向に基づき改正されているそうです。
QIP(適格投資プロジェクト)
QIPの認可は、投資家または投資企業に対してではなく、各投資プロジェクトを対象として発行されます。
QIPの対象となる投資プロジェクトは、業種および投資額などの条件により規定されています。
以下三つの分類があり、その性質に応じて優遇措置に差異があります。
輸出志向型プロジェクト:製品の一部または全部を国外に販売・提供するQIP
国内志向型プロジェクト:輸出を目的としないQIP
裾野産業型QIP:輸出産業に製品を提供するQIP
また新法制では、上記に加え、業種別にグループ1~3の3つのグループへのQIPの分類が設けられ、より高いテクノロジーを用いる産業は、より手厚い優遇措置を与えることとされています。ただしグループの分類は、カンボジア市場での需要・供給のバランスなどテクノロジー以外の要素も反映されたものとなっています。
グループ1が一番手厚い優遇を受けることができます。
食糧やインフラなど基盤となるものは重視されていますが、観光関連や縫製業がグループ3に振り分けられているところを見ると、確かに産業構造の転換を目指していることがうかがえます。
QIPに付与される投資優遇措置
税制優遇措置: QIPに認定されると、税金の免除や減税などの優遇措置が適用されます。
法人税の減免(通常は3年から最大9年)
輸出税の免除
特定の輸入資材に対する関税免除
カンボジア国内で生産された生産財についてVATの免税 など
投資補償: カンボジア政府は、QIPの製品価格やサービス料金に対し統制を行うことはない、と定めています。
QIP認可要件や、その他詳細については、↓のページをご覧ください。
経済特区
カンボジア政府は、FDIを惹きつけるために多数の経済特区(SEZ)を設置しています。
これらの特区では、企業は税制優遇、税関手続きの簡略化などのインセンティブを享受することができます。
そして、投資プロジェクトの登録から日々の輸出入許可までスムーズに手続きできるよう仕組みが整えられています。
またこの記事によると、これらのSEZは主に中国、韓国、日本から投資を引き寄せ、2021年12月時点で13万9000以上の雇用を創出したそうです。
プノンペンSEZ
日本企業だと住友電工がプノンペンSEZに3つの工場を持っているそうです。
シアヌークビルSEZ
日本のODAも深く関わっています。
最後に
カンボジアの経済発展を特に製造業の分野で支えてきたFDI。
投資を促すため政府により様々な政策がとられ、現在もアップデートされ続けています。
また、製造業だけでなくより高度なテクノロジーを用いる分野への投資促進も目指されており、安価な人件費に頼るだけではない、産業の多角化が進むといいな、と思います。
この記事を執筆中、大学の授業でちょうど、FDIと受け入れ国の経済成長についての話が出てきました。
冒頭でお話ししたように、製造業でのFDIが経済成長や技術の伝達に繋がっているということはもちろん、教育との関係が個人的に興味深かったです。
FDIを通じて経済が成長するには、受け入れ側のSocial capability(社会的素養?どの訳が適切なのかわからない💦)が不可欠という話。Social capabilityを育てるのに教育の役割は大きく、実際に「受け入れ国の教育水準が高いほどFDIによるGDP成長が大きい」というデータがあるそうです。(Borensztein, De Gregorio, and Lee (1998))
カンボジアはまだまだ教育格差がありますが、教育に力を入れることは経済成長においてもやはり大事なのですね。
これからの記事で、投資奨励政策以外にもカンボジアが投資先として注目されている理由を調べ、皆さんに紹介しようと思っていますので、ぜひJCI LABをフォローしてお待ちください^^
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