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ますます人事は「感情労働」に

私たち人事の仕事は人の気持ちに触れる仕事です。今、ほとんどすべての社員が不安の真っ只中にいます。いろいろな問い合わせ、要望、相談などが日々、メールや対面、チャット等で届きます。表面的には制度の確認だったりする問い合わせも、文面をよく読み込めば不安な気持ちを分かって欲しいという表れであったりします。だから、単に理路整然と問い合わせに答えるのではなく、気持ちに寄り添いながら返さないとちゃんとした応対にはなりません。

これは人事の日常の仕事でも同じです。哀しみ、怒り、寂しさ、悔しさ、辛さ、悲しさ、そんな様々な感情を持ちながら、社員は人事に相談をしたり、クレームを入れたりします。正しいQ&Aで対応しても解決しない案件がたくさんあるのです。こういった社員に適切に対応して、社員が落ち着いた気持ち、安定した心で自らの仕事に取り組み、高いパフォーマンスを発揮してもらうことは人事の「本業」です。

「肉体労働」から「知的労働」へ、20世紀・21世紀と私たちの労働の主体は移ってきました。そして、労働の主体は「感情労働」に移りつつあります。私が「感情労働」という言葉を知ったのは「看護と感情」という本からです。慶應義塾大学の花田先生のキャリアアドバイザーとしてのスーパービジョンの際に教えていただきました。

私の父は亡くなる前、何度も様々な疾患で入退院を繰り返していましたが、その際に面倒をみていただいた何十人という看護士の皆さんのことを思い出しても「感情労働」という言葉は実にしっくりと来ます。非常に大変な仕事です。そして、今はさらに大変な現場に多くの看護士の皆様がいてくださります。感謝しかありません。

私たち人事の仕事も、「知的労働」から「感情労働」に移りつつあります。そして、今、さらにそれは加速しています。私はキャリアカウンセラーの養成講座のトレーナー業を副業でやっていますが、そこに学びにくる人の多くは企業の人事担当者になってきました。キャリアカウンセラーは、まさに感情に寄り添う仕事であり、キャリアカウンセラーになる学習とは、人の心に寄り添うこと、人と適切なコミュニケーションをとることの学習そのものでもあります。人事の本業をまっとうに果たすためには、そのような力が必要だと本気で思う、心ある人事パーソンが増えてきているということです。

「肉体労働」はロボットに、「知的労働」はAIに取って替わられるかもしれません。しかし、今の時点では「感情労働」は人間にしかできません。そして、人事という職業は、「感情労働」のプロフェッショナルである必要があります。それが社員のパフォーマンス、企業のパフォーマンスを高めることになるのです。また、コンプライアンスに関わる事件、労務トラブルを未然に防ぐことにもなるのです。

人事担当者だって不安です。疲れ切っている時や、プライベートの悩みごとを抱えている時だってあります。でも、私たちは感情労働の担い手、感情労働の企業内プロフェッショナルとしての職業意識と職業倫理があります。人事の皆さん、頑張りましょう。

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