歯医者にて(歯の疼きは心の疼き)
いつの頃からか奥歯に違和感を感じ出しました
その奥歯は10数年前に神経を取ってあるので、痛くはなく何となくの違和感という感じでした
しかし私の座右の銘は「人任せ」と「問題先送り」なもので、そのまま暫くほおっておいたのです
やがて案の定どうしようもなくなり、とうとう歯医者へ行き先生に話したら恐らく根元の部分が炎症を起こしてる可能性があるとの事
治療が始まり詰め物を取った瞬間、先生は「うっ!」と顔をしかめ反対側にいた看護師に「やっぱりな、ドブの臭いがするだろう」と呟いたのです
看護師も顔をしかめ「うっ!本当ですね」と返しました
その時私は心の中で叫びました「どっ、どぶ~!俺の口にはドブが流れているのか~!」
勿論口を開けているので両脇の二人には「うが~ふが~」としか認識できないでしょうが、しかし患者を前にもう少し言い方が無いものでしょうか?
例えば「用水路の香り」とか「賞味期限ぎりぎりの納豆の臭い」とか「雨に濡れた猫の肉球みたい」とか!…
その後、奥歯の治療が始まったのですが、どーも思わしくないようで、ある日先生は私に「一度抜いてみましょう!直接根もとを見て、まだ使えそうだったら外側からメインテナンスして、また突っ込めばくっつくから」と言いました
私は思わず「うが~ふが~」と叫びました。訳すと「うそ~ほんと~」って感じです!
この先生とは地元が同じで昔からの知り合いなので、日数をかけずに手早く治療してくれようとしているのでしょう
あれよあれよという間に麻酔を打たれ、あっと言う間に抜かれてしまいました
抜いた歯を私に見せながら「ダメだ、こりゃあ~!ひびというか、筋みたいになってるから」と、抜きたてほやほやのグロテスクな歯を見せられ、更に可愛らしい看護師を集めて見せているのです!「本当~だ!」「すご~い」
どうやら私の奥歯は人気を博した様です…
しかし治療を終えた私は、思わぬ展開と自分の体の一部をもぎ取られた!と言うショックから顔に「傷心」という文字が浮き出ていたようです。治療室からうつむき加減で出る私に看護師が「どうしました?どこか痛いですか?」と聞いてきたので私は「すっ、少し心が…」と言ったら看護師のお姉さんは、一瞬キョトンとした後に大爆笑してくれたので、少しだけ心が晴れたような気がしました
春まだ浅い午後でした…
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