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JBFが出会った人たち #3 岡田宗凱(茶道家 / 世界茶会 主宰)

海外での活動や、オンライン茶会の開催など、茶道の世界を刷新し続ける岡田宗凱さん。その世界のフロントを走るからこそ語れる、伝統と革新の関係や業界との向き合い方、発信のあり方、通底するお茶への想い。熱気を帯びた言葉が次から次へとあふれ出てきた。

——世界各国やオンラインでの茶会開催など、岡田さんはお茶の世界で新しいチャレンジを続けています。その理由はなんでしょうか?

岡田 いつも、お茶の本質を届けたいと考えています。それは、お茶を介したコミュニケーションであり、そこにいる人が“バイブス”を共有するということ。いろいろな試みも、それを伝えるための手段です。もちろん、所作や作法も大事だけど、そこにこだわるあまり門戸を狭くしていると思っていて。茶道って、もっと自由で楽しいものなんです。

——伝統的な茶道において、そうした活動はどう映っているんでしょうか。

岡田 苦々しく思っている人もいるかもしれませんね(笑)。でも、ぼくはすごくお茶が好きで、好きだから貫けた。どんなジャンルでも、自分のやっていることに愛を持っていれば、絶対に結果は出てくると思います。

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——海外の方にも茶道の人気が高まっていると聞きます。それは、いわゆる瞑想といったマインドフルネスの文脈でしょうか?

岡田 個人的には、瞑想以上の強度があると思っていて。瞑想は自分一人で完結するじゃないですか。でも、お茶には絶対に他者が必要なんですよ。実際に、客人は沈黙の中、只々、亭主の点前を見ることになります。そうすると、亭主の呼吸を感じて、いつの間にかお互いの呼吸が合っていくんです。合わせようとして合わせるんじゃなくて、無意識に“合っていく”。そして、呼吸が合うと、自分と相手との境界線がなくなっていきます。「私」がなくなり、「あなた」もなくなる。茶道ではこれを「主客一体」と呼びますが、禅の悟りの境地である「無境界」の状態とも通じます。

——深いですね。お茶は呼吸であり、コミュニケーションでもある。

岡田 「ゾーンに入る」なんて表現もありますけど、集中が極まる感じってみなさん経験あると思うんです。お茶は、それが複数人で味わえるもの。そこに国籍も年齢も関係ないので、国内外で意識の高い人たちがはじめているんだと思います。例えば、流行りのサウナのように。実際、お茶をすると、仕事の生産性がすごくあがるんです。

——ビジネスにも活きる。他にどのような良い影響がありますか?

岡田 所作の美しさですね。形や作法というのは、「その通りにやれば合理的で美しい」所作でもある。それを週に数時間、お茶の時間だけでも形通りになぞっていくことで、日常生活の振る舞いも変わってくるし、そうすると心も整っていく。

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——良いこと尽くめですが、全体として茶道を嗜む人は増えているんですか?

岡田 減ってきています。ただ、ぼくはそれがピンチだとは全然思っていなくて。むしろプラスにとらえています。これまで母数が多かったというのは、さまざまな物が混在している状態です。業界が衰退すると、本物の純度が上がっていく。純度を濃くしていくと、その価値観に共感する人がついてきてくれるので、深い関係性を築けるんです。

——他の伝統文化や産業にも関係する話ですね。

岡田 そうだと思います。特に、お茶は器もしかり、空間もしかり、日本文化のハブだと自負していて。それがこうして世界で支持されているってことは、他のトラディショナルな分野もチャンスはある。

——岡田さんは茶道家の道を究めながら、クラブハウスなどSNSでの発信も活発にされています。

岡田 いまは、自分がメディアになれる時代。発信をしながら、いろいろな業界の、価値観を同じくする人たちとつながっていくことが楽しいですね。そういう意味では、JBFという場もメディアですよね。多様な人が交わり、刺激を与え合いながら、新しい展開につながっていく。まるで茶会のようですね(笑)。

——ビジネスの現場では、「ものづくり」と「ビジネス」のバランスに苦慮している方は少なくありませんが、なにかアドバイスはありますか?

岡田 そうですね……質にこだわる寄りの目線と、全体を見渡す引きの目線、両方を持つことが大切でしょうね。そういう視野の広さは、茶道で身につけられると思っていて。茶室ではお点前に100%集中しながら、一方で客人の個性を俯瞰して見て、臨機応変に対応を変えていくわけです。寄りと引きを行き来することで、いい空間をつくりあげていく。実際、千利休だって茶道を究めた孤高の人、みたいなイメージがありますが、実際はめちゃくちゃマルチプレイヤーでビジネスパーソンだったんです。何がいいたいかっていうと、みなさん、お茶をはじめましょう(笑)

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岡田宗凱 / Sogai Okada
茶道家 / 世界茶会 主宰

1982年東京都生まれ。高校から表千家の茶道をはじめ、2002年にNYコロンビア大学にて初めての海外茶会に参加。その後、フランス、ポーランド、チェコ、南アフリカなど10ヵ国でも茶会をし評判を得る。一方で初心者向けお茶会体験ワークショップやオンライン茶会を開催するなど、茶道の本質をさまざまな手法で社会に伝えている。著書に『茶道美人』(新人物往来社)。
◆月に一度の茶会体験ワークショップを開催。お申込みはこちらから
https://note.com/sougai

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