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海外に比べて日本人の給料が上がらないのは、なぜ?

ネットで少しググると、過去20年くらいの主要国の給料増加の推移資料が簡単にみつかる。

全国労働組合連合がOECD dataに基づいて作成した、1997年を起点とした主要国給与推移

こうした統計数値は統計のマジックや、為替の影響なども受けるので、給与推移の各国比較を緻密にみても意味がなかったりすることもあるが、それにしても、この図からは、日本だけ給料が上がっていないことがハッキリとみてとれる。

ちょうど、日本の給料が上がらないというこの期間1(1990年代から)、私は、香港、中国、台湾、ベトナム、オーストラリアで働いていた。
国際会議などで、各国の子会社の経費議論(その大半は人件費)を見る機会もあったが、確かに、日本の給与水準は微増で、それに比較して主要国の給与の伸びは大きかった。

イメージとしては、日本だけ、若しくは駐在員だけ前年比+2%、他の国には前年比4%前後といった感じであった。
当然国によって、GDPとかCPI(物価指数)の伸びとか異なるので給与増の条件はそれぞれ異なるのだが、それにしても日本は常に最低値だったと思う。

それは、日本だけが諸外国に比べて、特異な労働環境をしているからだと思う

特に、私がいたオーストラリアでは、日本に比べて、従業員の給料があがるような社会システムになっていることを痛感したので、その状況をシェアすることにより、その正反対でもある日本の得意性を説明したいと思う。

まずは、オーストラリアにおいては、サラリーマンの職務別の給与額に関する情報量の多さ、透明性が圧倒的に高いということである。

欧米ではそもそも、業務内容が明確にされているので、単純に課長といった一般タイトルレベルではなく、業務内容、担当職務毎に給与の相場が形成されている。
それも、転職業者が市場から生の情報を収集しており、誰にでも、簡単に業務毎の給与相場が見れる土台がある。

例えば、talent.comでmarketing & salesの給与を検索すると以下のように出てくる。この給与情報は、178,949人からの提供された給与情報に基づくそうである。

Talent.comで提供されている給与情報

これだけ豊富な給与情報がweb上に提供されているのは、転職がとても活発だからである。
社員は常に、自分の今の給与と市場の給与をモニターしており、市場給与の方がある程度高くなったら、今の職場で給与増加を要求。聞き入れててもらえなければ、転職という仕組みになっている。

日本は、新卒一括採用で、よほどの事がないと転職しないという習慣であるため、社員が市場の給与を常にモニターしてなどということはほぼない。
これは、日本だけが異端で、オーストラリアほどでないにしても、ほぼ全ての国で、社員は市場給与価格をモニターして、人材が供給不足で市場での給料が上がっている場合は、転職する方向に流れるの普通である。

で、会社側が転職しようとしている社員が貴重であると判断すれば、年1回の昇給サイクルには関係なく、即、給与を来月から上げて、優秀な社員を繋ぎとめるのである。
来月から急に給料を上げてもらえるなんて、JTCの中ではちょっと想像できないかもしれないが、事実、海外では日常茶飯事に起きている

オーストラリアでは、全ての社員、サラリーマンが市場給与情報に敏感で、自分の給与が市場より低い場合、その給与増加を要求すると書いたが、要求する相手は直接人事部ではなく、まずは、自分の上司である課長である。

日本からすると、これも想像しにくいかもしれないが、欧米のマネージャーは、自分の部下の給与情報を全て持っているのが普通である。
6人の部員の課の長であれば、6人の給与情報を全て持っている。
日本では上司が部下を5段階評価などで評価したりするだけで、実際の給与が幾らは、その評価に基づいて人事が計算して、課長の手元に具体的な数字がなかったりする事が多いと思うが、欧米の場合は課長が各課員の給与詳細を承認する。

市場で人材が不足している時などは、こうした給与増加の要求が頻繁に起こるが、こうした部下の給与交渉やその管理は、マネジャーの重要な職務の1つとなっている。

結論としては、日本は雇用の流動性がないために、給与の増加が諸外国ほどないということになる。
新卒一括採用、終身雇用、企業の解雇に対する厳し規制、これらにより、雇用の流動性が低くなり、結果的に、社員/労働者の給与増の機会を失くしていることになる。

日本の経済が毎年大く成長し、企業が自主的に社員の給与を毎年増加できた時代は、新卒一括採用、終身雇用、雇用規制は上手く回っていたのだが、低成長の時代に入った今は、雇用の流動化を高めて、市場競争の力を使うこことよって、労働者の給与が上がるのではと思う。

また、雇用の流動化により、成長が見込める産業や企業などに、それに適した労働が流動することになり、日本の経済が回ることにもつながると思う。

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