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時計家族

チッチッチッ…
カチッ。

その時、僕は産まれた

産まれてからお父さん、お母さんに
当たり前のように育てられて、
当たり前のように旅行に行ったりして、
共に過ごしてきた。

それなのに、何でだろう?

お父さんとお母さんはなんだか離れている
ような違和感があった。
それでも、気にせず何の変哲もない一日を
過ごしていた。

チッチッチッ…

ある日、お父さんとお母さんの間には
知らず知らずのうちに大きな距離感が
生まれていた。

でも、僕は気にしなかった。
僕はお父さんやお母さんに会おうと思えば
いくらでも会えるし、
また元に戻るだろうと思いながら、
過ごしていた。

チッチッチッチッ…

時間が経つごとに距離は大きくなっていく。

おかしいな…

だから、僕はお母さんのところにしばらく
止まっていた。

すると…
家族全体が回らなくなってきてしまった。

ずいぶんと止まっていたが、
あまりにも我慢できなくてまた離れることにした。

チッチッチッチッ…

ようやくわかった。

この家族はお母さんがゆっくり進み、
お父さんがそれよりも早く回り、
僕はそれよりももっと早いスピード回ることで
成り立っていたことを。

こう考えると今までの全てのことが腑におちる

お母さんのゆっくりしたペースが、
お父さんの早いペースに追いつかないから、
もっと早い僕がその間の帳尻を埋めていた。

これらのことは、中に閉じ込められていてなかなか気づかなかった。

要するにこの家族は…

時計だったんだ。

僕が回らなければ、この家族は回らないんだ。
あたりまえのことだった…

チッチッチッチッ
カチッ。

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