カタカナ英語の弊害
クリエイテイブな日本人の良さが裏目に
英語圏での会話で、日本人が一番困ることのひとつが、日本でしか通じないカタカナ英語の問題だ。日本人は、そもそも元々クリエイティブな民族のせいか、和製英語やカタカナ英語を作るのが好きだし、それらを一つの言語の民族間だけでわかる言い方で、公開された秘密の合言葉のように使い回すことが大好きだ。日本の流行語の量やトレンドの速さが凄まじいのも、わかる人だけでわかり合う”暗黙の了解”カルチャーによるコミュニケーションを好む日本人の傾向ならではのように思える部分もある。
生活にまつわるカタカナ英語で、実際には英語では違った言い方をすることは、実の所かなり沢山あるのだけど、今日は、気持ち的な部分でつい間違った使い方をしてしまいがちなものについて、書いてみたい。
恋愛で間違って使うと大変な言葉も
例えば、日本語で言う「ナイーブ」(naive)、これは相手の繊細さを描写する表現で、どちらかと言うと日本語だといい意味でというか、純粋さの肯定形みたいな雰囲気で使われたりすることが多い気がする。しかし、英語の「naive」になると全く違う。同じく純粋性という部分は入っているものの、英語の「naive」の意味は、スバリ、「騙されやすい」「甘い」みたいな感じ。要するに、どちらかというと世間知らず的なマイナスの意味合いの方が強い。ここを間違えて、「He is naive.」とか言ったらとんでもないことになるから注意しよう。「彼は繊細だね。」って言いたい時には、「naive」ではなく、通常は「sensitive」(センシテイブ)を使う。だから、「He is sensitive.」となる。こういうのは、例えば恋愛の始まりそうな雰囲気の相手に理解を示すつもりで間違って使ってしまい、笑えないことになってしまう例もあったりするから、注意が必要です。
ニュアンスを勝手に変えられてしまったカタカナ英語
それから、日本で良く使う「メリット」「デメリット」というのもこちらではほとんど使わないプラス、英語のニュアンスは日本の場合と少し違っている。「メリット」(merit)というのは、英語では損得がらみの言葉ではなく、人や物の「美点」やら「美徳」つまり「良い所」そのものを指す。だから、決してビジネスがらみの単語ではない。ビジネス絡みでもう少し「損得」というか「利益」みたいな部分を入れて話を進めたい時には、英語では「メリット」ではなく「ベネフィット」(benefit)を使う。だから、日本語で言う「メリット」は英語では「benefit」になる。では、「デメリット」は何か?といえば、英語では「disadvantage」(デイスアドバンテージ」つまり、単刀直入に不利益と言う意味になる。
そして、日本語の「クレーム」これも日本の表現だ。英語の「Claim」は、要求する、請求する、主張する、などの意味はあっても、決して「文句を言う」という意味合いが中心の単語ではない。日本語の「クレーム」は、英語では、「Complain」(コンプレイン)という表現になる。「Complain」は不平を言う、苦情を言う、訴えるという動詞なので、日本語の名詞扱いの「クレーム」は、英語だと「complain」の名詞形の「complaint」になる。だから、日本語の「クレーム」を言う、を直訳的に英語にすると 「make a complain」という表現になる。
ジェンダーギャップが叫ばれる時代には使えないことば
このあたりになると英語嫌いの人は眠くなってくるかもしれないので、一個だけ、とても大事な表現を最後に説明したい。昨今の、ジェンダーギャップという概念が囁かれるようになり始めた日本では、少しづつ理解している人も増えているかもしれないけど、「フェミニスト」と言う言葉、これは英語では、「男女同権主義者」(多くは女性解放運動の活動家など)を指す意味になる。この言葉は最近の日本人はあまり頻繁には使わないかもしれないとも思うのだけど、以前の日本では、「優しいソフトな男性」(特に対女性)を意味するニュアンスで広がっていたのではないかと思う。これも、かなりトンチンカンなカタカナ英語の使い方の一つだと思う。
そんな訳で、もしも外国に行って現地で英語で大切なことを伝えなればいけない状況に陥ったりした場合、言いたいことの中にカタカナ英語での表現が入っていたら、その英語表現が、日本語と同じ意味なのかどうかをあらかじめ調べておくことは、少しはミスコミュニケーションのリスクヘッジになるのではないかな、と思います。
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