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男たちの「淫夢」とその終わり──北野武『首』感想

男たちの「淫夢」とその終わり──北野武『首』感想

 新宿ピカデリーで北野武『首』を観てきたので、感想を書いておく。当然ネタバレがあるので注意。

◆「キッチュでクィアな映画」なのか? 本作は、戦国モノの王道である「本能寺の変」の裏側を描いた時代劇だ。物語の筋はきわめて単純で、主人公・羽柴秀吉(ビートたけし)が、明智光秀(西島秀俊)をそそのかして織田信長(加瀬亮)を討たせ、さらに自ら光秀を討って天下を取る──ただそれだけの話になっている。

 その

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闘争するアメリカ人──G・ガーウィグ『バービー』を観る

闘争するアメリカ人──G・ガーウィグ『バービー』を観る

 ハリウッド映画『バービー』を観たので、感想を書いておく。ネタバレがあるので、嫌な人は避けてほしい。以下あらすじ。

◆あらかじめ「名作」である作品 本作は、日本では興行的に不振だったにも関わらず、SNSやネットメディアを中心にかなりの盛り上がりを見せている。しかも、その評価はかなり多様だ。「フェミニズム映画である(から素晴らしい)」。「単純なフェミニズム映画ではない(から素晴らしい)」。「むしろ

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精神病患者としての左翼──岡田索雲『ようきなやつら』感想

精神病患者としての左翼──岡田索雲『ようきなやつら』感想

 先週公開された岡田索雲の短編漫画「アンチマン」が面白かったので、作者の過去作である単行本『ようきなやつら』(双葉社)も読んでみたところ、予想外な面白さがあったので、感想を書いておく。以下、ネタバレ要素があるので、買う予定がある人は買って読んでから見てほしい。

◆ゴリゴリの左翼マンガ この単行本は、「妖怪読切シリーズ」として書かれた5つの短編──「東京鎌鼬」「忍耐サトリくん」「川血」「猫欠」「峯

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何もしないことの正義──岡田索雲「アンチマン」感想

何もしないことの正義──岡田索雲「アンチマン」感想

補足:同作者の短編集『ようきなやつら』についての感想も書きました。

 2023年6月2日に公開された岡田索雲の漫画「アンチマン」が話題を呼んでいる。非常に良い作品で、読んでいろいろ思ったことがあったので、書く。以下ネタバレなので、未読なら先に作品(短編なのですぐ読める)を読んでほしい。

◆紹介文によるミスリード 漫画が公開された「Webアクション」には、おそらく担当編集によって書かれたであろう

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なぜ観るとムカつくのか?──映画『ドライブ・マイ・カー』

なぜ観るとムカつくのか?──映画『ドライブ・マイ・カー』

 新宿バルト9に『ドライブ・マイ・カー』を観に行った。深夜1時から朝4時まで上映するレイトショーだった。ネットニュースでロシアの劇作家・チェーホフの作品『ワーニャ伯父さん』との関係が取り沙汰されていたから、事前に青空文庫で日本語訳を読んだ。それが良くなかったのだが……。

 映画は、ベッドの上で夫婦が何かしらの物語について話しているところから始まる。夫は劇団の俳優・演出家で、妻は脚本家。広い家で、

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