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クラスター発生病院から「見捨てられていなかった」との声も。アクセンチュアとジャパンハートによるコロナ支援

大手総合コンサルティング会社アクセンチュアの社会貢献活動(コーポレート・シチズンシップ)は、グローバル全体でSkills to Succeedというテーマのもと、社会課題の解決につながる取り組みを推進しています。社員の「時間とスキル」を提供する「プロボノプロジェクト(非営利団体に対する無償のコンサルティング)」は本業と同じようにプロジェクトを立ち上げて取り組んできました。その中で、新型コロナウイルス感染症の拡大に際しても、ジャパンハートとパートナーシップを組んで新プロジェクトを立ち上げ、物資が不足する医療現場や過酷な環境に置かれる医療従事者の支援を行っています。

そこで取り組んだのは、継続的な支援の仕組みを構築するために、物資が不足する医療・福祉 の現場と寄付者をつなぐマッチングプラットフォーム「Heart Stock」の開発でした。昨年2月に公開され、物資の提供企業と医療現場を100件以上マッチングしてきました。「Heart Stock」開発の背景には、どのような熱い思いがあったのか。プロジェクトをリードするアクセンチュアのビジネス コンサルティング本部の加藤雄貴さんに、現時点での成果も含めてお話をうかがいました。

Heart stock


身近な危機意識から、社会貢献プロジェクトへの参加を決意

――加藤さんは、どのような経緯でこのプロジェクトに関わることになったのでしょうか。
私は普段、企業のデータ活用を支援するコンサルティングに携わっています。その仕事の中で、今回の活動の全体を統括している当社の藤田絵理子とミーティングする機会があり、そこでたまたま新型コロナ対策支援のプロジェクトの詳細を聞き、参画することにしました。

アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 加藤雄貴氏

もともとこのプロジェクトは、藤田とチームメンバーがボランティアとして3Dプリンターを活用したフェイスシールドの生産を行い、医療機関に寄付しようと始めたものでした。その活動が社内の賛同を得て拡大し、アクセンチュアとしても組織的に社会貢献活動を行っていく土壌があったことから、きちんと会社として取り組もうとプロジェクトが立ち上がったんです。ただ、そのプロジェクトをリードする人間が足りていないという課題がありました。

私自身は社会貢献活動にこれまで全く触れてきませんでしたが、新型コロナの感染拡大はとても身近で危機意識がある課題でした。そう感じているときに、ちょうど藤田から話を聞き、少しでも世の中の役に立てればと参画を決めたんです。ただ、周囲のメンバーからは、柄にもないなと言われました(笑)。

アクセンチュアとジャパンハート双方のニーズが一致し、協業へ

――最初はフェイスシールドの生産から始まったわけですが、マッチングプラットフォーム「Heart Stock」を開発し、ジャパンハートとのパートナーシップを組むに至ったのは、どういった経緯でしょうか。

「Heart Stock」の開発は、フェイスシールドをより多くの医療・福祉機関や医療従事者の方々に届けるためには、提供側と受領側をマッチングするプラットフォームのような存在が必要だと考えたところから始まりました。

すぐに企画し、試験版をつくりはじめたのですが、実際に活用していくためには、それを主体として運用してくれる団体や組織を探す必要がありました。というのも、アクセンチュア自体はコンサルティング会社なので、事業戦略や目的達成の手段をアイデアとして提供はできますが、事業を主体として運営していくことに関しては経験や制度もなく、非常にハードルの高い挑戦になってしまいます。それならば、外部にパートナーとなる団体や組織を探し、我々が構築したプラットフォームの運営を託した方がいいと考えたんです。

パートナーは、①医療物資の寄付や支援を募り、それを継続的に寄付・提供していること、②寄付先や寄付を募るコミュニティが広いこと、③寄付者と医療機関をデジタルでつなぐことにニーズがあることなどを基準に探しました。そうしてリストアップした団体や組織の中で、最有力候補であると感じたのが、ジャパンハートさんでした。

そして、ジャパンハートさんのホームページの問い合わせに、我々が開発するマッチングアプリを使っていただけないかという熱いメッセージを送らせていただいたところ、お返事をいただき、協業を進めることになりました。


――社会貢献活動では、自治体との協業が多い印象です。なぜジャパンハートを選んだのでしょうか。

もちろん、自治体系の組織も候補にもありました。ただ、いち早く医療現場に物資を届けなければならないという状況で、スピード感があることは大きなポイントでした。その点は、自治体よりも独立した団体の方が優れているだろうと思ったんです。

また、ジャパンハートさんは、過去にも企業との協業でイベントなどを開催されているという経験があります。それを見て、企業とのコラボレーションにもおそらく慣れているだろうという前向きな印象も持ちました。

追い込まれる医療現場から、想像以上の感謝が届いた

――パートナーシップが開始してからは、どのように開発プロジェクトを進めていったのでしょうか。

基本的には、業務のフローをどう定義し、その中でどう構築すれば使いやすい仕組みになるかといったことを重視して開発しました。要件定義を決めるのには時間がかかりますが、ジャパンハートさんは当時コロナのクラスター支援というご多忙の中で我々のミーティングに参加しているため、できるだけ負担を減らそうとアクセンチュア側で仮説をたくさん立て、ジャパンハートさん側には短時間で判断してもらうといったことを重ねていきました。

苦労したのは、ジャパンハートさん主体でアプリケーションを維持運営できるようにすること。そのために、システムのコーディングなど専門知識がなくても更新できる、ノーコードアプリをツールとして活用して開発を行いました。そこは、たとえアクセンチュアのご支援期間が終わった後も、ジャパンハートさんに自立してアプリを継続活用いただけるように、あえて苦労を選んだところです。

――現時点で100件以上がマッチングしていると聞いています。具体的には、どのような内容のものがマッチングしているのでしょうか。

カテゴリは大きく2つあり、医療物資系か日用品系かに分かれます。医療物資は言わずもがな、マスクや消毒液などです。日用品は、現場が疲弊している医療従事者の方々に「現場を支えてくれて、ありがとう」という気持ちを届けるために寄付されるもので、なかでも特に化粧品が喜ばれていますね。

寄付品は、ジャパンハートさんから企業にお声がけいただくようにしていますが、それによってたくさんの物を集めることができました。それは、まさにジャパンハートさんのブランドの凄さを感じたところです。現在もたくさんの寄付をいただけており、「Heart Stock」を継続運用いただいていることに非常に感謝しています。

――寄付品を受け取った医療従事者の方々からは、どのような声が聞かれていますか。

印象的だったのは、「まだ見捨てられていなかったんですね」という言葉。これは、クラスターが発生してしまっていた病院に勤める医療従事者の方からいただいたコメントで、想像以上に感謝されたことに驚きました。その反面、クラスターが発生すれば、そこまで追い込まれてしまうのだという現場の厳しさを感じました。

現場にピンポイントで寄付品が届いたことによって救われたというコメントは、我々の活動が何かしらの助けになっているのだと感じたときに、このプロジェクトを始めて本当に良かったなと思いましたね。

新型コロナウイルス感染症クラスター現場のジャパンハート看護師


ビジネスと社会貢献活動には共通項が多く、経験が役立つ

――このような成果につなげることができたのは、なぜだと思われますか。企業とNPOの協業といった視点で、お聞かせください。

我々コンサルティング会社は、目的をいち早く達成する手段やアイデアを提供することが得意ですが、それに応えて物事を進めていこうとする姿勢が相手になければ、プロジェクトはうまく進んでいきません。

その点ジャパンハートさんは、志が非常に強く、推進していくパワーもすごく、むしろ我々の方が牽引してもらっているような感覚でした。共通の目的をしっかり掲げ、我々は成功確率や効率を上げる手段を提供し、ジャパンハートさんがそれを実行していく。その役割分担が、うまくシナジーとして合ったのではないかと考えています。

――社会貢献活動に携わってみて、加藤さんご自身の考え方に変化はありましたか。

今回のプロジェクトを通して、大きく2つの学びがありました。ひとつは、ビジネスで得た知見や経験は社会貢献活動にも大いに役立つということです。社会貢献やNPOの活動であっても、ビジネスと同じでいかにユーザーや支援する相手のことを考え、有限なリソースの中で目的を達成していくかが求められます。それは、まさに企業活動にも通じるものがあるなと感じています。

もうひとつは、社会課題の解決といったことにより直接的に触れられたことで、企業活動の先にある社会的な意義に結び付けた提案ができるようになったということ。今は企業活動の先に社会意義がなければ生き残っていけない時代になっていますが、社会課題の現場でリアリティをもってニーズを聞くことができた経験が、ビジネスのプロジェクトにも生きていると感じます。SDGsなどが広く叫ばれている中で、表面上の知識ではなく、具体的な活動に参画して現場の視点を持つということが、今後ますます重要になってくるのではないかなと思っています。

―最後に、今後の展望をお聞かせください。

ジャパンハートさんとのパートナーシップによる「Heart Stock」の開発プロジェクトは、当初1年間の予定でした。しかし、想定以上の成果が表れていることから、2年目として、さらに新たな分野でも貢献できるように計画を進めています。

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