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やっぱり、司書になりたい

「司書」との出会いと小さな挫折

私が「司書」という仕事を知ったのは、通っていた小学校の司書の先生がきっかけだった。
穏やかで優しく、面白い本をたくさん紹介してくれた先生。どうして私の好みがこんなにわかるのかと不思議でならなかった。幼い頃から本の虫だった私にとっては、本について何でも知っている先生は憧れの存在だった。
いつしか、「先生みたいな学校司書になりたい」と思うようになった。

高校へ進学した私は、悲しい現実に直面する。司書資格は大学で規定の単位を修めれば取得できるが、司書の求人があまりなく、学校司書に至ってはもっと少ないということを知ったのだ。
司書で身を立てるのは難しいかもしれない。
いつしか司書になりたいという夢は薄れ、大学を卒業した私は中学校の国語科教員になった。

図書館管理を任されて

赴任した学校は小規模校で、私は唯一の国語科教員だった。そして、国語科だからという理由で学校図書館の管理を任された。日常の業務は支援員さんがやってくださっていたため、最初は、本の発注などほんの少しの業務をやっていた。
相変わらず本が好きだった私は、だんだんと図書館業務全般をやるようになった。蔵書管理システムの使い方も、本にバーコードや背ラベルを貼る仕事も、はじめは支援員さんに教えてもらいながらやった。本に携わっている、それだけで私は大きな喜びを感じるようになった。

司書教諭資格を取りたい

お世話になった支援員さんの異動と前後して、新型コロナウイルス感染症で学校が長期休校になった。生徒が来なくても我々は出勤しなければならない。授業も学級経営も実質的になくなり、有り余った勤務時間を私は図書館の整理に費やした。
一人で担当することになった図書館を、もっと使いやすくしたい。毎日本の配置換えや分類の訂正に勤しんだ。

そんな日々の中、司書教諭資格を取りたいと思うようになった。司書教諭とは図書館教育の専門性を持った教諭のことで、大学で単位を取ることで取得できる。大きな学校では必ず一人はいなければいけない役職なので、いずれ転勤した際に求められる資格だろうとは思っていた。しかし、何よりも専門的な知識を持って図書館業務にあたりたいという思いが強かった。

選んだのは完全通信制の大学。先生と学生の二足のわらじを履く生活が始まった。平日は仕事でいっぱいなので、休みの日に集中して課題レポートに取り組んだ。
レポートを書くために勉強をしていくと、自分自身がいかに無知なまま図書館に関わっていたかを思い知らされた。同時に、専門的な知識を身につける面白さの虜になった。実務で悩んでいたことやよく分からなかったことが勉強することではっきりと分かる。この知識は明日仕事で使えそうだと気づく。学生時代の勉強とは違う、学びの楽しさをひしひしと感じた。
だいぶ予定を詰めたつもりだったが、無事半年で司書教諭取得に必要な単位を取り切った。

司書にも手を伸ばす

すっかり勉強の面白さにやみつきになっていた私は、ここでもう一つ挑戦することにした。この大学には司書課程もあったので、思い切って司書資格も取ることにしたのだ。
司書教諭の勉強をするうちに、自分が司書への憧れをなくし切ったわけじゃないことに気づいた。いつか図書館に関わる仕事がしたい。そのための準備を始めた。

司書は必要な単位数が多かったので、1年半かけて受講する計画を立てた。引き続き、平日は仕事、休日はレポートの日々となった。

司書資格の課題は司書教諭資格よりも難しかった。学ぶ内容が幅広く、課題の内容として求められるものも高くなっていた。
情報関係の科目は何度も教科書を読んで理解しようとした。大量の辞書や事典を見比べながらレファレンス課題に答えたが、十分な解答ではなく、悔しい思いをしたこともある。一つのレポートを書くのに、山ほどの資料を読み込んで構成を組み立てたこともあった。

この期間、私は病気退職、2度の引越し、結婚を経験した。生活が目まぐるしく変わる中でも勉強した。精神的に参っていてもレポート締切に間に合うように課題に取り組んだ。オンライン授業の日に体調が悪くて、横になりながら受講したこともあった。

なぜ大変でも頑張れたのか。一つはせっかくかけた学費がもったいないから。無職のときは貯金を切り崩し、結婚後は夫から資金援助を受けて勉強していたから、絶対に無駄にはしたくなかった。
しかし、一番大きいのは司書の勉強が楽しかったからだ。知らないことを知る喜びや、難しい課題をやり終えたときの達成感を糧に、次へ次へと進むことができた。その結果、予定通り1年半で全ての単位を取り切った。

そして、現在

司書資格取得の目処が立ったところで、私は新しい仕事を探し始めた。求人を探し、いくつか面接を受け、あるところから採用の連絡をもらった。

私は今、中学校の学校司書として仕事をしている。

たまたま資格取得見込みの時期に求人が出ていたこと、たまたま私が教員時代に図書館の実務経験があったこと、そのほかたくさんの巡り合わせの結果、私は夢を叶えてしまった。

いつか役立てばいいと思っていた司書資格がこんなにすぐに役立つとは驚きだが、勉強してきたことが報われてとても嬉しい。
もちろん、司書教諭の勉強で得たことも、教員として得た経験も役立っている。

本に囲まれ、生徒に囲まれながら専門性を活かして働ける今の仕事は本当に楽しい。毎日が喜びに溢れている。大変でも頑張ろうと思える。そしてその頑張りが報われていると感じる。

私の知識や経験は、私の宝物であり、私の武器だ。
これからも日々勉強の精神で楽しく司書の仕事をしたい。

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