【提言】「従業員サーベイ」の本質

飲食事業をチェーン展開するA社の経営幹部と先週ZOOM会議を開いていました。その幹部から今年は従業員満足度調査(サーベイ)は実施しない方針であることを耳にしました。

理由を尋ねると、「コロナ禍においては、会社に対する正しい評価はできないと考えているから」というものでした。

なるほど、まだこのような発言がされるとは、私たち外部のサポーターである経営コンサルタントの力量不足を痛感する次第です。

そもそも従業員へのサーベイやアンケートは「会社を評価」するために実施するもの、と捉えるのは本質ではありません。こういった捉え方が広く浸透してきた背景には「従業員満足度調査」という、会社が従業員に与える人事待遇や給与面の効果(外的な報酬)を測定し改善につなげるという制度設計からサーベイが企業に導入された経緯があります。その結果は回答した従業員に開示されることは稀で、回答したメリットもほとんど与えられません。

A社では、コロナ禍の影響で給与や人事待遇などへ不満が出ているから、サーベイをしたら「点数」が下がり、それは会社に対しての適切な評価とは言えないだろう、と想定した結果の「実施回避」判断なのでしょう。

では、本来のサーベイとはどういう思想で実施すべきなのでしょうか?

従業員サーベイは、従業員のエンゲージメント、つまり自社でどれくらい成長できているか?どれくらい自社のステークホルダーに貢献しようと考え行動しているか?を測定するものであり、いわば「リーダーシップのあり方」「組織やチームの競争力」そして「人材育成」の度合いを測り、結果として従業員の成長を支援するために実施するもの。というポジティブな活用のために実施をするのが位置づけでなければならないのです。

ですので、A社の経営幹部からの「今年は会社に対する正しい評価はできないからやらない」という発言はとても残念に思います。

むしろ反対にこのような厳しい時期だからこそ、従業員のエンゲージメントを高めるためにもサーベイを実施して、現状を把握しその結果を捉えてリーダーは自分たちのあり方、コロナ禍での将来像を部下に明示しなければならないのです。


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