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日立金属リストラ3,200人、ジョブ型雇用へ移行か

日立金属従業員削減概要

10月27日、日立金属が2022年までの中期計画の中で、来年度末までに3200人の人員削減を行うと発表したことが、波紋を呼んでいます。2019年度末の連結人員数が3万5400人ですから、これは全体の9%に相当する大規模な人員整理になります。

日立金属が全従業員数の約10%を削減とのこと。

この中でアフターコロナ要因として注目すべきは、自動車と航空機でしょう。報道によれば、日立金属の今期の減益見通しの中で、自動車の電線材料の減損損失が20億円、航空機エネルギー事業の特殊鋼製品で68億円だといいます。リモートワークが定着し、移動や出張が手控えられるアフターコロナの世界では、過去とは違った需要構造になることが予測されています。

リモートワークが定着し、移動や出張の手段が控えられる。国内外のミーティングもテレビ会議を利用すれば問題ない。Skype, Teams, Zoomなど低コストで利用可能。場所を問わず大人数でも扱える。

需要構造が変わるため、親会社の日立製作所が採算の取れない子会社の売却先を探しているという。

従業員を家族のように扱うのが、昭和の時代に経済を牽引していた日本企業の特徴です。メンバーシップ型雇用とはその名の通り、従業員を組織のメンバーとして扱うことを意味します。

従来のメンバーシップ型雇用とは、一つの会社でずっと勤めることが前提で、その代り社員を家族のように大事に扱う。リストラをしない代わりにその人のために仕事を見つけていくため、事業が多角化して不採算事業が生まれやすい。それが今回のリストラへ踏み切った最大の要因のようだ。

ジョブ型雇用はそのための準備のようなもので、1人1人の従業員が何のプロなのかをはっきりさせることから始めます。たとえば、「この従業員は航空機向け材料知識のプロ」「この従業員は自動車向け電線の商品企画のプロ」といった具合に、その人ができるジョブをはっきりとさせるわけです。

メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移行を行い、スマートな組織にしたいようだ。不採算事業からは撤退し、その分利益の取れる分野へ投資する。また、その分、その分野で活躍できる人材を(外部などから)取っていく。

昭和的働き方の終焉

メンバーシップ型雇用からジョブ型への移行は、一言で言えば、昭和的な働き方の終焉を意味する。

日立金属の一件に関してはもう1つ、さらに別の側面での特殊事情があります。それは西山CEOの出身母体である日立製作所が、経団連の中西宏明会長の出身母体でもあるという点です。

重要人物が大胆にジョブ型に移行しようとしているのだから、終焉は近い。この期に及んで、「正社員と非正規」「正社員と契約社員と派遣社員」などと、人の立場を雇用形態で断絶させるような考え方は時代遅れだし、このような考えでは、もはや日本は成り立たない。

トヨタの社長が「終身雇用はもう維持できない」と何年前から言っている。日本で時価総額トップの社長がそのようなことを言っているのだから、もはやジョブ型移行は待ったなしだ。

皆が同じ雇用形態で働き、必要に応じて仕事をアサインされる、という形態が時代に合っている。

メンバーシップ型雇用の偽善

最近、ANAや三菱重工が業績悪化のため、一時的に社員をトヨタに出向させようとしているらしい。

しかし、ANAや三菱重工が手厚くするのは正社員だけではないか?正社員には手厚くもてなし、非正規は採算が取れなくなったら切る。もしくは、正社員の雇用と給与を保障するため、非正規を切る。そうではないだろうか?

確かに、これが昭和の時代だったらまだ分からない。ほとんど皆正社員で一つの会社でずっと働くことを前提に、色々なポジションでその会社で使えるスキルを身に着け、上を目指す。皆同じ条件で手厚くもてなされているので、確かに、家族型経営(メンバーシップ型雇用)と言っても、問題ない。

むしろ、それは素晴らしいシステムだったように感じる。この恩恵を日本は今まで受けてきたのだから。

しかし、最近ではめっきり非正規率が増えた。女性が2人に1人、男性が4人に1人が非正規だ。

割合で言うと、3~4割が非正規である。

ANAも三菱重工も、非正規は多いはずだ。正社員を今までの家族型経営(メンバーシップ型)で雇用し、一方で、多くの非正規をジョブ型に近い形で雇用し、正社員を守るための調整に使われたり、正社員の雇用と賃金が危うくなれば、何事もなかったかのように、非正規を切る。

非正規の家族や生活などお構いなしだ

今日本ではこのような偽善が蔓延している。ANAや三菱重工がもし非正規を切って、かつ社員をトヨタなどへ出向させる、というならば、これ以上の偽善はない。

子どもたちはそういう大人を見抜くので、日本にとっても未来は暗い。

ジョブ型雇用へ移行するならば徹底的に

よく外資系企業では日系と外資のいいとこどり、と言われる。

どういうことかというと、年功序列を採用し賃金が上がりにくい構造だが、一方で簡単にリストラする、というのが日本の外資の特徴だ。

いいとこどり、とはつまり経営者視点から見たら、ということだ。

しかし、今の日本の雇用形態は、一方は家族型経営(メンバーシップ型)で社員を大切にすると言いながら、一方で簡単に派遣や非正規を切る。

これは偽善者の成せる業なのだが、こんなトンチが本当に今日本で成り立っている。

冒頭で話したように、もう全社員を家族のように扱うのは時代に合わないので、徹底的にジョブ型へ移行しないとだめだ。中途半端に正社員を雇用し続け、一方で非正規を切る、というのでは誰のためにもならない

皆が同じ舞台で働けること、皆が同じ雇用形態で快く働けること、その上で皆が上を目指せること、失敗に寛容であること、何度でもチャレンジができること、そのような社会をぜひ目指していってほしい。

新たな日本の幕開けになるように。

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