古典手強し
近藤康太郎さんの『「あらすじ」だけで人生の意味が全部わかる世界の古典13』を読んだ。
タイトルがあまりにも大言壮語で、編集者の「売りたい」意図がまざまざ感じられる。とはいえ内容は一貫して刺激的で面白く、古典に向き合うモチベーションブースターとしてこれ以上ない書籍だった。
近藤康太郎さんについては『三行で打つ』を読んだ際に知った。「文章術」という具体的な切り口で読者を呼び込みつつ、著者の生き様や人生哲学を炸裂させた書き口が大変好ましい。本書及び「おいしい資本主義」を芋づる式に購入した。いわゆる“著者買い“。
近藤さん自身は新聞記者でありながら、新自由主義社会やそこでくたびれている人々に対して少なからぬ違和感を持っている。三行及び古典どちらに関しても、このような感情が通奏低音として流れる。
せっせと情報を集める。負けないように、割を食わないように。しかしそうならざるを得ない側面があることについても、近藤さんは認めているように思える。本人も出世欲や地位、名誉を欲した瞬間があったことを告白しているし、弱肉強食でバズったもん勝ちのような昨今では、「いかにうまく立ち回るか」「いかにコスパ良くメリットを得るか」に人々の意識が集中するのは仕方ないだろう。
そういった背景も踏まえ、古典は「実生活において大変オトク」だという面を前書きで強調している。おそらく本心から。
その上で、手前では「お得だ」と思わせて本書を読ませながらも、「実際はそれ以上に大事なことや面白いことがたくさんあるよ」と語りかけてくる。
『三行』もそうだが、ポップで耳馴染みの良い切り口で読ませ、その中で本質を伝えるという技が非常にうまい。Mrs.GREEN APPLEみを感じる。
本書は全13作品の古典を各章で扱っている。内容としては下記の通り。
こうしてみるとロシア文学はやはり古典が強いのだなという印象。傑作古典が生まれる背景になった要素にも着目したいけど、世界史の復習が全く手についておらずなので、のちに集中して確認しよう…。
何はともあれ上記全部、Amazonでほしい物リストにぶち込むこと請け合い。著者の社会人時代のエピソードも踏まえた各章どれも「のけぞる」ポイントが多い。新人時代にベテラン上司の椅子ぶっ壊して顔面に一撃入れたエピソードなんておもろすぎた。
上記以外にも引用でさまざまな書籍や音楽の引用が登場するので、知らなかったお気に入りの名文も見つけられそう。
本を読む人たちにとって、古典は憧れであり、読了を拒まれる壁であり続けている。とりわけ人生の節目や「うわ〜」って落ち込んでいる時ほど、無性に古典が読みたくなるものだ。そして私はその度に、ブックガイド的なものを買っている。
佐藤優さんの『一生モノの教養が身につく世界の古典 必読の名作・傑作200冊』であったり、三宅香帆さんの『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』であったり。
ブックガイド本をひとしきり読み、ちょっとわかった気になり、『白鯨』、『存在の耐えられない軽さ』、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』などを買い、冒頭少しでダウンして積まれてゆく。悔しい。
しかしなんだって古典等を扱うガイド本はこう長い名前ばっかりなんだろう。あれか、こうやってタイトルで懇切丁寧に説明しないと買ってくれないと思われてるんだろうんか。
以下、日記。
十数年ぶりに動物園に行った。ビル群で暮らしてると、動物がこんなに多種多様に存在するって忘れがちだよな…キリンがすこぶる愛らしい。
体調を崩した。コロナでもインフルでもないらしく、ウイルス性の風邪ですねとお医者さん。症状は完全に胃腸炎なのだけど…腹壊して発熱しがちなのどうにかしたい。
スマホのケースとフィルムを変えた。機種変更をしたようで気分が良い。
少しずつ紅葉が始まっている。
あっという間に今年が終わる。
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