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創作

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形を問わず、フィクションをあつめています。
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2020年9月の記事一覧

どんぐりパンはいかが?(創作)

どんぐりパンはいかが?(創作)

「どんぐりパンはいかが?」

やわらかいパンにどんぐりをしきつめて、少しこげめがつくくらいまで焼いたのが、どんぐりパンです。

パンやの店長はりすです。まいにち工房をはしりまわって、パンを焼きます。どんぐりパンはいちばん人気のメニューで、これをもとめてお客さんはやってくるのです。

「いらっしゃいませー。どんぐりパンが焼きたてです」

お会計をするのは、うさぎです。しゃべってばかりいるのでレジにた

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来世では私を鳥にしてください(ショートショート)

来世では私を鳥にしてください(ショートショート)

※フィクションです。



「自分の体で飛ぶのが夢だった」と男は言った。

死後の世界。絵空事だとばかり思っていたが、そんなものがまことにあったのだ。

何者かが目の前にいた。神なのか、仏なのか、はたまた閻魔大王なのか。ひとつ言えることは、そんな生前の常識ではかれるようなスケールのものではないということだ。きわめて超越的な、なにか。

それがおもむろに口を開き、質問を投げかけた。

「来世はなに

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秋風にさらわれる(小説)

秋風にさらわれる(小説)

とおくで電車の音がする。仕事終わりの人間の疲労感とか、冷房の臭い風があの鉄の塊に閉じ込められて高速移動しているのだと思うと何だか面白い。

夏が終わって、秋が顔を覗かせていた。夜は風がつめたくて気持ちがいい。エアコンなんて要らない。ありのままの風がいちばん好きだ。

コンビニで200円のプリンを買った。表面の薄皮みたいな部分が好きで、最初にスプーンで剥がしとって食べてしまう癖がわたしにはあった。

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