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マトリックス・レボリューションズ鑑賞記録

マトリックス・レザレクションズ公開記念:過去作を考察してみるシリーズ第3弾です。

9月にリローデッドの鑑賞記録を書いてからかなり時間が経ちました。実は数日後にはレボリューションズも鑑賞済みだったのですが、考察を深める時間を取れてませんでした。かなり寝かしてしまいましたが、最新作の公開も迫ってきたので、考察を進めて整理していきます。

▼鑑賞直後の感想(ほぼリアルタイム殴り書き):

センチネル襲来シーンは格好良い

ミフネってのは三船敏郎から来てるのか(ダサいw)

VFXが20年前の映画なのにすごい(見せ方が上手い)

最後が唐突な終わりかたで良かった。

あの子供(インド人)は何者だろう?
前作まで白人と黒人だけだったのにインド人が来た意味とは?
誰と誰の子供って言ってたっけ(英語のみなので聞き取れなかった)?

ネオの考える平和=人間と機械が共生する(目新しい意見)

スミスはアノマリーを排除するプログラム(エージェント)から進化して、マトリックスに管理されないプログラム(エグザイル)になって、全てを自分に取り込もうとしている。ネオはそれを抹消することの対価として人間に手を出さないことをマトリックスに契約させる

キリスト教(ユダヤ教)における契約って何だっけ?(私の勉強不足)

ネオの身体はマトリックスに回収される

トリニティは死んでる

モーフィアスは幸せに暮らしていく

キリストの贖罪ってことでいいのかな
視力を失ったことは何かのメタファーなのか

この平和がいつまで持つと思うのか
ーできるだけ長くよ
またネオに会えるかしら
ーきっと会えるわよ
知っていたんですね
ーいいえ、全然。でも信じていたわ。信じていたのよ。

オラクルは前作で「全て最初から知っている、でも理解してないだけ」と言った。つまり理解を超えた次の次元に進んだ(レボリューション)ってこと。

ザイオンはどうなったら勝ちなのか

機械から命を狙わなければ勝ちなのか

マトリックスから人間を引っ張り出していた理由は

相手を殲滅するのではなくて共生を見つけたネオの物語ってことか

アーキテクトの思わぬ形で平和が訪れた

アーキテクトの考えたのではない形でマトリックスは存続していく

リローデッドの最後でネオが体からEMPを発射できた理由が結局不明だ!

= = =

とりあえずそんな感じかな。。。

▼あらすじを整理する(=物語の結論は):

まずは物語の大枠を掴みたいと思います。

ネオの意識は仮想世界の狭間に迷い込んでいた。オラクルの助言を受けてモーフィアスとトリニティとセラフは狭間へ行ける唯一の存在(電車男)を捕獲するためメロヴィンジアンを制圧しネオを回収する。ネオは再びオラクルを訪ねて解決につながる場所はもう知っている筈だと諭される。

モーフィアスはザイオンを襲うセンチネル軍団をEMPで止めるためにザイオンに至急戻る。何とか間に合ったが船は壊れ、次にセンチネルが攻めて来た時は僅かに残った銃火器での白兵戦を余儀なくされた。つまり戦況は絶望的であり、次に攻められたらほぼ終わりであり、別行動しているネオにザイオン(=人類)の未来は託された。

ネオはマトリックスの本山に向かう。道中でベインに襲われてネオは失明する。更にトリニティが死ぬ。スミスはアノマリーを排除するプログラム(エージェント)から進化して、マトリックスに管理されないプログラム(エグザイル)になって、全てを自分に取り込もうとしている。ネオはスミスを抹消することの対価として人間に手を出さないことをマトリックスに契約させる。

激戦の末にネオがスミスを倒したことでマトリックスは攻撃を止める。ザイオンの人類はこの現実世界で生き残る権利を得た。ネオの精神はスミスと相討ちで消え去り、ネオの身体はそのままマトリックスに回収された。

マトリックスに夜明けが訪れる。セラフはオラクルに「知っていたのですね」と聞いた。しかしオラクルは「いいえ。でも信じていた」と返答した。朝日が燦々と降り注いでいる。

オラクルというのは「預言者=神の意志を預かって民に知らせる者」(予言ではなくて預言)です。だから彼女はマトリックスで起きることを全て知っているはずです。前作(リローデッド)でも彼女はネオに向かって「全て最初から知っている、でも理解してないだけ」と言っていました。しかし今作(レボリューションズ)で彼女はセラフに「この結末は知らなかった」と言っています。これが最大のポイントです。

オラクルが知らなかった、すなわち創造主の理解を超えた次元にマトリックスは革命を経て次の段階へ進んだ(レボリューション)というのがこの物語の帰結であり、タイトルの回収になっていた訳です。

降り注ぐ朝日は新たなる世界の訪れを意味しています。こんなにも観念的な描写だけで映画を終わらせるなんて本当に素敵だし、粋です。なんというか『2001年宇宙の旅』のような潔さがあります。

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このレボリューションを実現できたのはネオがエグザイル・スミスに勝利してマトリックスに「契約」を履行させたからです。ネオがマトリックスの本山(Machine City, 機械都市)で巨大な顔を相手に取り決めたものは、キリスト教・ユダヤ教における「契約」をモチーフにしていると考えて良いでしょう。このマトリックス本山に現れる巨大な顔の名前は「Deus Ex Machina, ゼウス・エクス・マキナ」とされており日本語訳するなら「機械から生まれた全能神」となります。

Deus ex machina, (Latin: “god from the machine”) a person or thing that appears or is introduced into a situation suddenly and unexpectedly and provides an artificial or contrived solution to an apparently insoluble difficulty. Fast Facts. Related Content.(ブリタニカ百科事典より)

契約とは:ユダヤ教・キリスト教に特徴的な思想で、救いの恩恵に関して神と人間との間で交わされた約束。モーセを仲介者としてイスラエル民族に与えられたものを旧約、キリストの十字架上の犠牲を通じてなされたものを新約という。(デジタル大辞泉より)

この点から更に逆算すると、ネオがベインに攻撃されて視力を失ったのは、磔刑に処せられたキリストが受けた傷と同義であり、聖痕のメタファーだと考えるのが妥当でしょう。

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▼タイトルのレボリューションの意味:

ここで改めてレボリューションの語句の意味を確認しておきます。

revolution
1) A forcible overthrow of a government or social order, in favor of a new system
- (in Marxism) the class struggle which is expected to lead to political change and the triumph of communism
- a dramatic and wide-reaching change in the way something works or is organized or in people's ideas about it
2) An instance of revolving
- the movement of an object in a circular or elliptical course around another or about an axis or center
- a single orbit of one object around another or about an axis or center

by thesaurus: rebellion; dramatic change; single turn; turning

レボリューション
1) 暴力による政治または社会的秩序の転覆。これにより新しい仕組みを作ることを目的としている。
(マルクス主義では)資本主義社会で起こる労働者階級と統治階級の間での暴力を避けられない利害衝突。これによって政治的な変化と共産主義体制が導かれるとされている。
2) 一回転すること。
何かの物体または軸を中心とした円形または楕円形の軌道を描く物体の運動。

日本だと「革命」という言葉を聞いても「劇的な変化」くらいにしか感じられない方が多いと思いますが、本来は西洋の文脈では「過激で暴力的な方法で政治を変える」という言葉です。フランス革命であれ辛亥革命であれ宗教革命であれ、革命後の歴史にばかり着目されがちですが、そのプロセスが暴力的であったことは注意するべきポイントでしょう。だからこそ17世紀末の英国のクーデターが「無血革命である」と強調されることになります。革命は過去だけの話ではありません。現在も世界中で革命は起きていますし、日本でも日本共産党がゴールとして「革命の実現」を設定しているのが今でも公安にマークされている理由だったりします。

2つ目の「回転」については、リボルバーの派生語・関連語の類だと思うのですが、おそらく元々はこちらの回転の意味で使われていた言葉だと思われます。つまり最初は「為政者をごっそり入れ替える」という意味でrevolveが使われ始め、それがいつの間にか革命という意味としてより強く定着したのだと思われます。

したがって、レボリューションという単語の意味を正しく知っている人であれば、映画を観る前に『The Matrix Revolutions』というタイトルだけで<ザイオンの人類が決起して戦い、機械の世界を暴力的手段で打倒し、マトリックスに変化が訪れる>という物語が予想できることになります。

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確かに途中まではそうミスリードさせる展開が続きます。機械側は民衆を押さえつける政府のように圧倒的な武力で攻撃してきて、ザイオンの人々はボランティア(義勇軍)を募り隊列を結成してセンチネルの大群に決死の戦闘を繰り広げます。戦況はどんどん悪くなりますが、われわれ観客はどこかで最後には人類が勝利するのだろうと思って見ています。

しかし物語の途中で信念を持って行動したネオがゼウス・エクス・マキナと調停を結ぶことで物語のパラダイムは大胆に変わります。それまで敵対していた機械と人類は、共通の敵としてスミスを設定し、ネオがスミスを滅ぼすことが機械と人類の平和な共存を実現できる条件になります。

そしてネオはスミスを殲滅することに成功し(自分の命を犠牲にして)機械と人類の双方に平和が訪れるのでした。まさにイエスの贖罪と同じですね。そんなことは知らず戦争の終わりに歓喜する人類。あの時点でネオの犠牲を噛み締めているのはおそらくモーフィアスとナイオビくらいでしょう。彼らが安っぽくハグしたりキスしたりしないのが非常に良いです。

機械の世界であるマトリックスにも夜明けが訪れます。革命が起こったことで、全く新しい世界が始まります。オラクル(=預言者=神の意志を知る者)でさえ知らない世界、すなわち創造主の理解を超えた領域にマトリックスは突入していきます。

このように観客が想像していたのとは異なる形で革命(レボリューション)を実現したというのがこの映画の結論であり、興味深い点でしょう。

▼本作がどのくらい現実主義的か:

単純な敵味方の論理ではなく、お互いが生き残る道を探る。前時代的な勧善懲悪ではない物語の深みが本作(マトリックス・レボリューションズ)にはあります。

●この物語をSWに当てはめると:

この物語がどのくらいアクロバティックな着地を決めたのか示すためにスターウォーズに当てはめてみましょう。実際のエピソード6でルークは(アナキンと協力しつつも)パルパティーンを殺すことで帝国を退けています。しかし、もしエピソード6で本作と同じような展開にするとしたら、ダースベイダーが帝国で謀反を起こして、それを見たルークがパルパティーンに単独で交渉してベイダーを殺す代わりに帝国とレジスタンスを停戦させる、という感じになります。これを見て「なんと暗黒サイドに墜ちたな、ルークよ」とあなたは失望しますか?笑

SW6をマトリックスレボリューションズに当てはめた図

●平和のリアルな実現手段:

勧善懲悪の価値観では悪を殲滅することが解決の手段とされますが、現実の世界では一方的な殲滅というのは事実上不可能であり、「平和」とは武力の均衡を作って誰も手が出せない状態にすることによってのみ得られるものです。相手が銃を構えたら、こちらも構えるから、誰も引き金が引けない状態になるのです。核抑止力というのはこの最たる形です。

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2021年現在のチャイナの動きを見ていれば、この論理が正しいことは明らかです。チャイナに隣接している軍事力で劣る国と地域は次々と征服されています。昭和20年以降、日本が憲法9条で戦争放棄を宣言していながら未だに東亜に侵攻されないで済んでいるのは、東シナ海と日本海という自然の防壁があったことに加えて、合憲と解釈される範囲内で自衛隊を所有していること、そしてこれまでアメリカ軍に守られてきたからです。

しかし、戦後の昭和ニッポンを守ってきた日米安保条約は平成以降は東亜の台頭によって相対的に弱くなり、今やバイオ兵器や電磁波を筆頭とする「新たな軍事技術」の前に無効化される脅威に晒されています。尖閣諸島の領有権をめぐって緊張は高まる一方で、21世紀に入った頃から(2009年の民主党政権以降はより顕著に)日本の山林が大量にチャイナに買収されていて本土にも部分的に実効支配が始まっています。そして日本の大手新聞社とテレビ局の大半には経営層までどっぷり中韓の人材や思想が入り込み、連日連夜公共の電波に乗せて自虐史観を放送し愛国心を削ろうとしています。早い段階でこれらのニュータイプの戦術に対抗できる法整備を進めなければ、現状の「見せかけの平和」は失われてしまうでしょう。

さて、本作でネオは圧倒的に不利なザイオンの戦局を見て、スミスというマトリックスの急所をつき、有利な状況に交渉を進めるというリアリスト極まる対応を行いザイオンを救っています。これはかなり興味深い点だと思います。

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●ザイオンの目標を忘れてない?:

そして忘れてはいけないことがあります。それは、もともとのザイオンの活動目的です。彼らのゴールって何だったのでしょうか。

マトリックスの中での一見幸せな暮らし、つまり脳波への電気的な刺激だけの暮らしから抜け出して、現実世界で暮らしを営むこと?(第1作ではまさにこの言葉でネオはモーフィアスに勧誘され、同じくこの考えに賛同できなくて赤い薬を飲んだことを後悔した男が裏切り者となった訳ですが)

更に、マトリックスからドロップアウトした際には、マトリックスを物理的に管理する機械(センチネルなど)が障害になる(殺そうとしてくる)のですが、これらがザイオンを攻撃してこなくなればOKということ?

この場合、マトリックスの中には未だに数十億という人類が接続されていて思考活動をエネルギー源とするパワープラントとして機械に供給し続けている、つまり奴隷として人類が多く残っているのですが、マトリックスを維持するためには彼らが必要です。しかし、まだ接続されている彼らの扱いはどうなるのでしょうか?

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マトリックス(matrix=社会基盤=一般市民)から抜け出してザイオン(Zion=聖なる丘)に移住した1%にも満たない選ばれし人々(=特権層)だけが救われるのならば、大半の人類の苦役は止むなし、ということでしょうか?それって現在の世界(主にアメリカを中心とした経済界)の富める者と貧しき者の構成(=格差社会)をそのまま表しているとも言えるのですが、それで映画がハッピーエンドの雰囲気を醸し出して終わるって、とんでもないブラックジョークになっていませんか?笑

これに対するアンサーが次作の『The Matrix Resurrections』で描かれるなら相当テンションが上がりますね!同じ監督なので期待できると思います。

▼EMPを発射できた理由:

ネオが『レボリューションズ』の最後に素手でビリビリってやってたアレです。あそこだけは全然理解できませんでした。こんな時はセリフ原文の書き起こしに当たるのが一番有効です。

(Oracle’s kitchen)
Neo: Tell me how I separated my mind from my body without jacking in. Tell me how I stopped four sentinels by thinking it. Tell me just what the hell is happening to me.
Oracle: The power of the One extends beyond this world. It reaches from here all the way back to where it came from.
Neo: Where?
Oracle: The Source. That’s what you felt when you touched those Sentinels. But you weren’t ready for it. You should be dead, but apparently you weren’t ready for that, either.

ネオ:なぜジャックインしないでマトリックスに入れたのか?なぜ4体のセンチネルを考えるだけで止めることができたのか?僕には一体何が起きているのか教えてくれ。

オラクル:Oneの力は世界を超越するの。ここから全て辿って生まれた場所まで届くわ。
ネオ:それはどこ?
オラクル:ソースよ。センチネルに触れた時にあなたが感じたものもそれ。でもあなたはまだ準備ができていなかった。だからあなたは死ぬしかなかった。でもどうやらあなたはまだ死ぬ準備もできていなかったみたいね。

激ムズや。原文を読んで日本語に起こしても全く理解できない。泣

思念が物理法則を超えるのだけは勘弁してくれないだろうか。。。

ネオが念じた瞬間の脳波(微弱な電波)がセンチネルに作用したってことかしら?最近では脳波で操縦できるドローンもあるくらいですから。ただし本作の場合は、もしかしたら肉体の限界を超えて強烈な電波を発してしまい昏睡状態に陥ってしまった(脳が生体的にショックを受けた;急激にカロリーを消費した)のかもしれませんね。

▼ネオとスミスの決戦で何が起きたのか:

ラストの描写が分かりにくいと思います。

ほぼ互角の戦闘が続きましたがスミスがデジャヴを見て恐怖を覚えます。そしてそれを見て何かを悟ったネオは無抵抗になり、スミスが同化をかけて成功します。しかし直後に元ネオのスミスは爆発し、それに続いて全てのスミスが爆発していきます。戦闘の終わりを確信する機械から生まれた神。そして先程まで死闘を繰り広げていたスミスの死体の場所にはオラクルが倒れているのでした。

これは一言で表すならワクチン戦法ですね。

要するにネオは自身をスミスに変えることでスミスを破壊する方法を取得(ワクチンを獲得)し、それを全てのスミスに適用してスミスを撃退してしまったという訳です。これはスミスがデジャヴで発した言葉がヒントになっています。

Everything that has a beginning has an end, Neo.
始まりがある全てのことには終わりがあるのよ、ネオ。

この場面ではスミスが発言していますが、これは先だってキッチンでオラクルが発した言葉でした。ここから最後にネオと格闘していたスミスは元オラクルだと分かります。そんな中で膠着状態になった戦闘に一石投じる形でオラクルがスミスの言葉を通じてネオにヒントを与えたのですね。つまりスミスに乗っ取られた後でも元の存在としての機能は失う訳ではないと。スミスの内部でオラクルが抵抗していたのかもしれません。

また同じくキッチンでオラクルは「スミスはネオのマイナスの存在だ」とも言っていました。なのでこれを聞いてネオはプラスとマイナスを合計してゼロにしてしまおうと考えたのかもしれません。

Neo: What is he?
Oracle: He is you. Your opposite, your negative, the result of the equation trying to balance itself out.
Neo: What if I can’t stop him?
Oracle: One way or another, Neo, this war is going to end. Tonight, the future of both worlds will be in your hands… or in his.

ネオ:彼は何者?
オラクル:あなたよ。あなたの反対。あなたのマイナス。バランスを取ろうとする方程式の解よ。
ネオ:もし僕が止められなかったら?
オラクル:どちらにしろよ、ネオ、この戦争は終わるわ。今夜、マトリックスも人間の世界も、未来はあなた次第ね、もしくは彼次第。

「in your hands… or in his」から、オラクルの言葉ではネオかスミスのどちらかが勝つという意味なのかと思っていましたが、そのどちらでもなく、揃って死んで未来をマトリックスの神に託すというのは一本取られた、という感じがします。

Smith/Oracle: Oh, no, no, no. No, it’s not fair.
そんな、だめだ、だめだ、だめだ。だめだ、そんなのフェアじゃない。

思わぬ解決策を取られて狼狽えるスミスが哀れでした。確かにネオとのタイマン勝負かと思ったらマトリックスと共闘して潰しに来ているのでフェアではないですね。笑

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▼最後のアーキテクトの皮肉なセリフ:

最後のアーキテクト(創造主)の言葉も味わい深いものでした。

Oracle: What about the others?
Architect: What others?
Oracle: The ones that want out.
Architect: Obviously, they will be freed.
Oracle: I have your word?
Architect: What do you think I am? Human?

オラクル:他の者たちはどうするつもり?
創造主:他の者とは?
オラクル:外に出たい人達よ(=マトリックスの外側のザイオンの人々)
創造主:決まっているだろう、彼らは自由の身だよ。
オラクル:信じていいのね?
創造主:私を何だと思ってる?人間だとでも?

人間は嘘をつく、しかし美しき方程式のみで形成されたプログラムが表明する(言葉にする)のは真実のみです。なんとも潔く高潔ですね。

そしてまた人間の業の深さが浮かび上がる言葉です。

▼インド人の少女の疑問を整理する:

セリフ原文の書き起こしが一番信頼できます。

(Mobil Ave. train station)
Sati: Good morning.
Neo: Who are you?
Sati: My name is Sati. Your name is Neo. My papa says you’re not supposed to be here. He says you must be lost. Are you lost, Neo?
Neo: Where am I?
Sati: This is the train station.
Neo: This isn’t the Matrix?
Sati: That’s where the Train goes. That’s where we’re going. But you cannot go with us.
Neo: Why not?
Sati: He won’t let you.
Neo: Who won’t let me?
Sati: The Trainman. *whispers* I don’t like him, but my Papa says we have to do what the Trainman says or he will leave us here for ever and ever.

ここはマトリックスに向かう電車の駅である。
少女はマトリックスに向かうため電車を待っている。
電車男が誰を電車に乗せるのか決める。
ネオはきっと電車に乗せてもらえない。
電車男に従わないと彼女と家族も電車に乗せてもらえない。
それはここにずっと永遠に取り残されることを意味する。

(Oracle’s apartment)
Oracle: Morpheus, Trinity. Thank you for coming. One thing I’ve learned in all my years is that nothing ever works out just the way you want it to.
Trinity: Who are you?
Oracle: I’m the Oracle. I wish there was an easier way to get through this but there ain’t. I’m sorry this had to happen. I’m sorry I couldn’t be sitting here like you remember me. But it wasn’t meant to be.
Trinity: What happened?
Oracle: I made a choice, and that choice cost me more than I wanted it to.
Morpheus: What choice?
Oracle: To help you to guide Neo. Now, since the real test for any choice is having to make the same choice again, knowing full well what it might cost – I guess I feel pretty good about that choice, ’cause here I am, at it again.
Trinity: Do you know what happened to Neo?
Oracle: Yes. He’s trapped in a place between this world and the machine world. The link is controlled by a program called the Trainman. He uses it to smuggle programs in and out of the Matrix. If he finds out where Neo is before you get to him, then I’m afraid our choices are going to become difficult.
Trinity: Why?
Oracle: Because of who the Trainman works for.
Morpheus: The Merovingian.
Oracle: He has placed a bounty on your lives. You must be careful at all times. Seraph knows how to find the Trainman, he will go with you. For years, he has protected me. I hope he can do the same for you.
Seraph: Please, come.
Morpheus: Oracle.
Oracle: I know, Morpheus. I can see you’re filled with doubt, clouded by uncertainty.
Morpheus: After everything that’s happened, how can you expect me to believe you?
Oracle: I don’t. I expect just what I’ve always expected. For you to make up your own damn mind. Believe me or don’t. All I can really tell you is your friend’s in trouble and he needs your help. He needs all our help.

ネオはマトリックスと機械の世界の間に囚われている。
電車男がマトリックスに各プログラムを入れるかどうかを決める。

電車男はメロヴィンジアンの部下である。
メロヴィンジアンはネオとトリニティとモーフィアスの懸賞金を掛けた。
セラフが電車男を見つけられるので、そこまで案内する。

この時点でネオ(人間)がプログラムと同列に語られているのが面白いです。

(Mobil Ave. train station)
Sati: Are you from the Matrix?
Neo: Yes. No. I mean, I was.
Sati: Why did you leave?
Neo: I had to.
Sati: I had to leave my home too.
Rama-Kandra: Sati! Come here, darling. Leave the poor man in peace.
Sati: Yes, papa.

サティは機械の世界を離れてマトリックスに向かっている。

Rama-Kandra: I’m sorry, she is still very curious.
Neo: I know you.
Rama-Kandra: Yes, in the restaurant at the Frenchman’s. I am Rama-Kandra. This is my wife Kamala, my daughter Sati. We are most honoured to meet you.
Neo: You’re programs.
Rama-Kandra: Oh, yes. I’m the power plant systems manager for recycling operations. My wife is an interactive software programmer, she is highly creative.
Kamala: What are you doing here? You do not belong here.
Rama-Kandra: Kamala! Goodness, I apologize. My wife can be very direct.
Neo: It’s okay. I don’t have an answer. I don’t even know where ‘here’ is.
Rama-Kandra: This place is nowhere. It is between your world and our world.

父は発電所の再利用システムの統括プログラム。
母は相互作用ソフトのプログラマー。(プログラムを書くプログラム)
サティはそれらの娘。

ちょっと待って!この時点で意味不明です。プログラムが結婚して子供を持つとはどういうことなのでしょうか?プログラムを書くプログラムだからつまり子供を産める女性の姿をしているのでしょうか。そして娘はどんな役割を持ったプログラムなのでしょうか。

Neo: Who’s the Trainman?
Rama-Kandra: He works for the Frenchman.
Neo: Why’d I know you were going to say that?
Rama-Kandra: The Frenchman does not forget and he does not forgive.
Neo: You know him?
Rama-Kandra: I know only what I need to know. I know that if you want to take something from our world into your world that does not belong there, you must go to the Frenchman.
Neo: Is that what you’re doing here?
Kamala: Rama, please!
Rama-Kandra: I do not want to be cruel, Kamala. He may never see another face for the rest of his life.
Neo: I’m sorry. You don’t have to answer that question.

ネオ:電車男って誰?
ラマ:あるフランス人の部下だよ。
ネオ:君がそれを言うって僕はなぜ知っていたんだ?
ラマ:そのフランス人は忘れないし、許さない。
ネオ:彼を知ってるのか?
ラマ:私は必要なことしか知らない。もし私達の世界から君の世界へ何かを持ち去りたいのなら、そのフランス人に会わなけれなならない。
ネオ:それが今君がやっていることか?

ここも地味によく分かりません。先程のオラクルの話からフランス人とはメロヴィンジアンのことを指しているのは分かります。しかし直後の君がそれを言うって僕はなぜ知っていたんだ?って何なんでしょうか。(そう言だろうと思ったよ)くらいに捉えれば良いのかな。

最後のそれが今君がやっていることか?というのはラマが娘をマトリックスに連れて行こうとしている行為を指すのかな。

Rama-Kandra: No. I don’t mind. The answer is simple. I love my daughter very much. I find her to be the most beautiful thing I’ve ever seen. But where we are from, that is not enough. Every program that is created must have a purpose; if it does not, it is deleted. I went to the Frenchman to save my daughter. You do not understand.
Neo: I just have never…
Rama-Kandra: …heard a program speak of love?
Neo: It’s a… human emotion.
Rama-Kandra: No, it is a word. What matters is the connection the word implies. I see that you are in love. Can you tell me what you would give to hold on to that connection?
Neo: Anything.
Rama-Kandra: Then perhaps the reason you’re here is not so different from the reason I’m here.

ラマ:答えはシンプルだ。私は娘を愛してる。彼女はこの世で一番美しい。しかし私達の世界ではそれだけでは不十分だ。プログラムは目的を持っていなければならない。それがなければ、消されるだけだ。メロヴィジアンに会って娘を助けてもらうんだ。君には理解できまい。
ネオ:そんなのって
ラマ:聞いたことないかね?プログラムが愛について語るのは。
ネオ:愛は、人間の感情だ。
ラマ:違う。愛は言葉に過ぎない。重要なのはその言葉が示す関係性だ。君だって誰かを愛する人がいるだろう。その関係を保つために君は何を提供するかね?
ネオ:どんなものでも。
ラマ:それなら私がここに居るのと大して変わりないだろう。

んー。ここはワザと論理的に整合が取れないように会話してる感じがしますかね。リアルタイムで視聴してる時は私もなんとなく分かったような気分で済ませていましたが、厳密に論理に落とし込んでいくとやはり詭弁に持ち込んでいるような気が。笑

ネオは「プログラムも関係性を求めるのか」と聞いているのですが、ラマはその質問には答えず「(君も私も)関係性を維持する要素を知らない点で同じだ」という話にすり替えているように私には見えます。そうじゃなくて、人間は生命なので存在する目的そのものがリプロダクトである、だからこそ相手を求める感情(=愛)が人間には発生するのは道理になるのですが、それがプログラムにも適用できるのか?とネオは質問しているのに、ラマはプログラムは関係性を求めるということを前提に話を進めています。

まあ雰囲気重視ということでここは先に進みます。

(Matrix: inside a subway train)
Seraph: That’s him.
Trainman: Get away! Get away from me!
Seraph: We don’t want trouble.
Trainman: Get away from me!
Seraph: We need your help.
Trainman: I can’t help you. No one can help you!

セラフが電車男を説得するが、電車男は拒否する。
電車男はネオを助けることで面倒に巻き込まれたくない。

(Matrix: a subway stop [Stellma?])
{the Trainman prepares to jump across the tracks in the path of the LOOP train}
Seraph: Oh, no.
{the train passes, the Trainman is gone}
Seraph: Damn it.

電車男はセラフを振り切って姿を消す。

(Mobil Ave. train station)
Neo: When is the train due?
Rama-Kandra: It’s already late. It’s not like the Trainman to be late.
Neo: You think it has something to do with me?
Rama-Kandra: I cannot say. Who knows such things? Only the Oracle.
Neo: You know the Oracle?
Rama-Kandra: Everyone knows the Oracle. I consulted with her before I met with the Frenchman. She promised she would look after Sati after we said goodbye.
Neo: Goodbye? You’re not staying with her?
Rama-Kandra: It is not possible. Our arrangement with the Frenchman was for our daughter only. My wife and I must return to our world.
Neo: Why?
Rama-Kandra: That is our karma.
Neo: You believe in karma?
Rama-Kandra: Karma’s a word. Like ‘love.’ A way of saying ‘what I am here to do.’ I do not resent my karma – I’m grateful for it. Grateful for my wonderful wife, for my beautiful daughter. They are gifts. And so I do what I must do to honour them.
Sati: Papa, the train!
Rama-Kandra: Yes! Get your bags, quickly!
Neo: Can I carry that for you?
Rama-Kandra: All right.

メロヴィンジアンがマトリックスに匿うのはサティだけ。
オラクルがサティの面倒を見る。
ラマが機械の世界に戻らなくてはならないのはカルマだから。

これも初見ではあまり理解できていませんでした。ラマは離れてでも娘を生かしたいと考えています。そこで目的のないプログラム(=機械の世界では削除される)である彼女をマトリックスの世界に匿おうとしていたんですね。

これも何か神話で原型があるのかしら。<神々の世界で生まれたが役に立たない神(明確な用途がない存在)が人間界に下って生きながらえる>みたいな物語。ギリシア神話などでは神には必ず何某かの名目がついていたと思います。火の神とか、水の神とか、美の神とか。そういう能力がないけれど神の形に似せて作られたものが人間というのはあるかと思います。

Trainman: Hurry it up, I’m late!
{Kamala and Sati pass, Trainman stops Neo}
Trainman: Who are you?
Rama-Kandra: He’s a friend.
Kamala: Rama!
Trainman: I know you. So that’s what they wanted.
Neo: I need to get back. I’ll pay you anything you want.
Trainman: Oh?
Neo: One way or another I’m getting on this train.
Trainman: Oh, no, no, no. You’re gonna stay right here until the Merovingian says different. If I know him, you’re gonna be here for a long, long time.
Neo: I don’t want to hurt you.
Trainman: You don’t get it. I built this place. Down here I make the rules. Down here I make the threats. Down here, I’m God. *to Rama-Kandra* Get on the train, or you’ll stay here with him.

サティが予想していた通り電車男はネオを駅に置き去りにする。

はい、ここまで詳しく読んできましたが、インド人が採用されたのはぶっちゃけ雰囲気重視だったのかなーと思うようになりました。当時はインドがものすごいスピードでIT分野に進出していましたからね。笑

用途が定められていないプログラムが電脳空間(マトリックス)で自由に暮らすというのは面白い考え方ですね。

▼まとめ:

後半はやや散漫な考察になりましたが、

物語全体としては、キリストの贖罪をベースに、リアルな世界情勢を反映させた展開が興味深い作品だったと思います。

とりあえず自分の中では整理がついたので、これで心置きなく12月の新作『The Matrix Resurrections』に臨めそうです。

もし本作の公開が無かったら、おそらくマトリックス三部作のリローデッドとレボリューションズは視聴しなかったと思うので、良い機会になりました。率直に言って、この第2作と第3作は大変面白かったです。とても得をした気分です。

前作の感想もリンクを置いておくので、興味が沸いた方は読んでください。

マトリックス・リローデッド鑑賞記録(1)〜感想編〜
普通に視聴しただけで感じたことです。私は基本的に日本語の字幕や翻訳を信用していないのと、映像の隅々や俳優の表情を見るときに字幕は邪魔になるので、オリジナル言語が英語の作品は「オリジナル音声かつ字幕なし」で視聴します。しかし英語上級者という訳ではないので、その時点での感想をありのままに書きました。

マトリックス・リローデッド鑑賞記録(2)〜原文考察編〜
リスニングだけでは理解できなかったことを、原文セリフを綿密に翻訳しながら深い考察を試みています。特に終盤のアーキテクトとの会話を取り扱っています。

了。


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