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マトリックス・リローデッド鑑賞記録(2)〜原文考察編〜

マトリックス・レザレクションズ公開発表を受けて過去作を考察してみるシリーズ第2弾。

▼背景:

先日に投稿した鑑賞記録(1)では私が本作を英語音声・字幕なしで理解できた部分と、日本語字幕を元に解説してくださった記事を参考にして、映画を考察した。解説を書いてくださった方には大変感謝しているし、否定や嫌疑する意図は毛頭ないが、そちらの記事では日本語字幕のみを手がかりにしているので、結局字数の問題とかで情報が削除されているニュアンスがあるだろうと思ったので、原文を参照した。

あとは私個人のためにも、やっぱりここでもう一歩踏み込んで学習しておかないと、次に観た映画で理解できるようにならないのでね。まずは中学生から高校生に自分の英語力をレベルアップさせたいのよ。笑(現状は英単語の無知を日本語知識の多さでカバーしている苦しい展開なので)

どうせなら深く理解した状態でレボリューションズを観たいし。

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「無知(無学)と無罪(無垢)は同じではない」

このnoteでは市販ソフトの日本語訳を参照せずに自分で翻訳している。

書き出してある単語は私が視聴中に聴き取れなかったか、今回文字で見て理解が曖昧だったと感じたもの。

▼「である」ことと「する」こと:

Architect: Hello, Neo.
Neo: Who are you?
Architect: I am the Architect. I created the Matrix. I’ve been waiting for you.
You have many questions, and though the process has altered your consciousness, you remain irrevocably human. Ergo some of my answers you will understand, and some of them you will not. Concordantly, while your first question may be the most pertinent, you may or may not realize it is also the most irrelevant.

こんにちは、ネオ。
お前は誰だ?
私はアーキテクト。私がマトリックスを創造した。君を待っていたよ。たくさん質問があるだろう。君はこれまでのプロセスを経て認識が変わっているかもしれないが、人間であることは変えようがない。それゆえに私の答えのいくつかは理解できるが、いくつかは理解できないだろう。同じように、最初の質問は最も適切かもしれないが、君はそれが全くの無関係だったと気づくかもしれない。

irrevocably: 取り返しがつかないほど〈変える・滅ぼすなど〉

ergo: それゆえに(thereforeのラテン語)

concordant: 〘地質学〙地表と並行であること; 〘医学〙双子が共通して持つ遺伝的な特徴; 〘音楽〙 調和が取れていること
コンコード (Concord) は古代ローマ神話の調和の女神コンコルディア (Concordia) に由来する言葉で、英語の読み方。オリジナルはラテン語「同じ心」に由来する言葉で、調和を意味する。(Wikipedia)

pertinent: «…に» (密接な)関係がある(relevant); 適切な

ラテン語色が強い言葉遣いを連発(ergo, concordantly)していることからも、この人物はキリスト教またはユダヤ教の色が強いキャラクターであることが分かる。キリスト教における神父または牧師のような存在であり、つまり神の使いとも言えるし、受け手にとってはほぼ彼自身が神であるとも言える。日本の映画だったら神主か住職みたいな格好になっていたかもしれない。

ネオの質問にアーキテクトはさらりと答えるが、この質問に意味があったのかは分からないけどね、とやたら長々と付け加えている。

コンピュータープログラムでは、あくまで対象をどう変形させるか(関数の計算式とパラメーター)が重要なのであって、その行動の主体の属性については問題とならない。君が「誰である」かよりも、君が「何をする」かが重要なのだと。なかなか興味深い発想だ。

実はこの後のシーンで、モーフィアスから「By whom?(預言は虚構だったと)誰に言われた?」と問われてネオは「It doesn’t matter. I believed him.そこは問題じゃない。俺は彼を信じる」と返答しており、創造主の言葉どおりネオは「お前は誰だ」という質問は不要だったと認識している。

なお原語ではArchitectと名乗っていて、直訳すると設計士とか建築家になるのだが、ソフトウェアプログラムの世界では書くことが即ち作ることになるので、私は意訳として「創造主」という言葉を宛てた。視聴してるリアルタイムでもそう脳内で変換していた。実際に彼は「I created the Matrix」って言ってるし。このワードのチョイスで良かったのかは続編『レボリューションズ』で分かるかもしれない。

Neo: Why am I here?
Architect: Your life is the sum of a remainder of an unbalanced equation inherent to the programming of the Matrix. You are the eventuality of an anomaly, which, despite my sincerest efforts, I have been unable to eliminate from what is otherwise a harmony of mathematical precision. While it remains a burden assiduously avoided, it is not unexpected, and thus not beyond a measure of control. Which has led you, inexorably… here.

俺はなぜここに居る?
君の命はマトリックスに内在するプログラムの乱れた数式による余り物の集積だ。君は偶然に生まれたアノマリー(例外値;突然変異)、つまりは、私の科学的な努力にもかかわらず、数学的に完璧な調和になるべきだったもの(=マトリックス)から私が排除できなかったものだ。今も根気強く取り除かれるべき不純物のままではあるが、想定の範囲外ではなないし、コントロールできないものでもない。だから君は導かれた。避けようがない結果として、ここに。

inherent: «…に» 内在する, 切り離せない, 固有の, 生まれつきの

eventuality: 起こりうる[不測の]事件, 偶発事件

anomaly: 異常(なこと), 例外(的なこと), 特異な存在, 異例, 変則; 不合理.
〔原義は例外・変則などの意〕
株式市場などでの経験則。理論では説明できないが経験的には説明できる市場変動の法則。「―現象」

precision: 〘数・コンピュ〙 精度.

assiduously: 根気強く, せっせと.

inexorably: どうしようもなく, 容赦なく.

長々と語ってるけど、要するに「なぜ私がここにいる」という質問に対して「私が呼んだからだ」という回答である。

これに対して、すかさずネオは問い詰める。

Neo: You haven’t answered my question.
Architect: Quite right. Interesting. That was quicker than the others.
TV Neos: Others? How many others? What others? Answer my question!
Architect: The Matrix is older than you know. I prefer counting from the emergence of one integral anomaly to the emergence of the next, in which case this is the 6th version.
TV Neos: 5 `One’s before me? 4 3 2 What are you talking about?

質問の答えになってないぞ。
その通り。興味深い。他の者たちよりも速かった。
*他の者たち?
*何人いるんだ?
*それは何者だ?
*俺の質問に答えろ!

マトリックスは君が知っているよりも古い。私は、次世代の出現のために不可欠なある一つのアノマリーが出現することを以って数えることにしているのだが、そういう意味で、今は6番目のバージョンになる。
*5つのONEが俺の前に存在したということか?
*4つのONEが俺の前に存在したということか?
*3つのONEが俺の前に存在したということか?
*2つのONEが俺の前に存在したということか?
*1つのONEが俺の前に存在したということか?
*お前はさっきから何の話をしているんだ?

integral: «…にとって» なくてはならない, 不可欠の «to»

テレビの中のネオが複数人同時にわーって喋ってるのは、各世代のネオが同じように創造主にリアクションを取っているものである。

ネオの「なぜここにいる」という問いに対して創造主は要するに「私が呼んだからだ」と答えたが、それはある意味あたり前の話でしかなくて(だって創造主が設計したシステムなのだから)、なぜ創造主がネオをここに呼ぶ必要があったのか(ネオに何をさせたいのか)の回答になっていない。ネオは自身が「ネオである」ことが重要なのではなくて、ネオがここで「何をする」のかが重要なのかをもう理解している。

最初に誰なのかと聞かれて創造主が答えた「君はどんな質問が重要なのか気づけるかな」という挑発的な言葉に、即座にネオは対応している。これに創造主は驚いたのだ。

これに対してテレビの中にいる複数のネオ(旧世代のバージョン)はまだ創造主の言葉の真意を掴めずに、創造主の言葉尻に食いつくばかりで、中には短気を起こして激昂している者もいる。6人目のネオがこれまでとはレベルが違うことがここからも分かる。

▼行動とは選択の結果である:

Neo: There are only two possible explanations, either no one told me, or no one knows.
Architect: Precisely. As you are undoubtedly gathering, the anomaly is systemic – creating fluctuations in even the most simplistic equations.
TV Neos: You can’t control me! I’m gonna smash you to bits! I’ll fuckin’ kill you!
Neo: Choice. The problem is choice.

可能性は2つ。誰も俺に説明しなかったか、それとも誰も知らないかだ。
そのとおり。君が間違いなく集積されたものであるように、アノマリーとは集合だ。それらが最も単純化された計算式でさえも誤差を生じさせる。
*お前は俺をコントロールできない!
*お前を1ビットまで粉々にしてやる!
*お前をぶっ殺してやる!
選択。問題は(それらの異なった値から)どれを選択するのかだ。

precisely: in exact terms; without vagueness.

systemic: relating to a system, especially as opposed to a particular part.

fluctuation: an irregular rising and falling in number or amount; a variation: 【価格・為替などの】(急激な)変動 «in, of»

simplistic: 単純化しすぎた, 安易な

創造主は同じ言葉を発しているのに、テレビの中のネオが見せる数々の対応がここで言ってるanomaly(変異)が作り出すflucruation(値の変動:誤差)ということなのだろう。それだけのバリエーションの中から「どんな行動を選択するか」が重要になるってこと。テレビ画面に映し出されているのはレベルが低い旧ネオの反応かもしれないし、現ネオの脳内で起きている思考(他の選択肢の提示)なのかもしれない。

というか創造主のこの台詞で、この返しができるネオさん凄すぎる。笑

▼歪みが生まれないと進化も起きない:

Architect: The first Matrix I designed was quite naturally perfect, it was a work of art – flawless, sublime. A triumph equalled only by its monumental failure. The inevitability of its doom is apparent to me now as a consequence of the imperfection inherent in every human being. Thus, I redesigned it based on your history to more accurately reflect the varying grotesqueries of your nature. However, I was again frustrated by failure. I have since come to understand that the answer eluded me because it required a lesser mind, or perhaps a mind less bound by the parameters of perfection. Thus the answer was stumbled upon by another – an intuitive program, initially created to investigate certain aspects of the human psyche. If I am the father of the matrix, she would undoubtedly be its mother.
Neo: The Oracle.

私が最初に設計したマトリックスは全くもって完璧だった。それは芸術作品だった。文句の付け所がなく完璧で、崇高な。この偉業は結果としてひどい失敗に終わった。この避けられない破滅は、すべての人類が内在させる不完全さの結果であることは明らかだ。かくして、私は人類のグロテスクを集積した属性をより正しく反映させるために人類の歴史を元にしてマトリックスを再構築した。しかしながら、私はまたもや失敗に阻まれた。そこで私はこのような理解に至った。正解には私より劣った頭脳か、あるいは完璧なパラメーターが与えられていない頭脳が必要なのだと。かくして私は解決方法を偶然に発見した。それはより直感的なプログラムで、元々は人間の精神のある側面を調査するために作られていた。もし私がマトリックスの父だとしたら、それは間違いなく母になるだろう。
オラクルのことか。

flawless: without any blemishes or imperfections; perfect:

sublime: 〈自然界・芸術作品などが〉荘厳な, 雄大な, 崇高な: of such excellence, grandeur, or beauty as to inspire great admiration or awe(畏怖を感じさせるほどに称賛すべき素晴らしさや美しさを持っている)

doom: (通例悪い・恐ろしい)運命, 宿命; 悲運, 凶運; 破滅, 死; (有罪の)判決, (厳刑の)宣告; 〘キリスト教〙 世界の終わり(の日); (神の下す)最後の審判.

consequence: (主に悪い)結果, 結末, 成り行き, 影響; 重要[重大]さ; 結論, 帰結.

grotesquerie: グロテスクな品質; グロテスクなものの集まり.

grotesque: comically or repulsively ugly or distorted: 滑稽にあるいは不快なほどに醜いか歪められている.

frustrate: 〖通例be ~d〗 〈努力・計画など〉が失敗する, 挫折する; 〈人が〉 【企てなどを】はばまれる «in»

elude: 〈追跡者・敵・危険など〉を(うまく)かわす, 逃れる.

stumble: 〈人などが〉 «…に» つまずく, よろける «over, on» ; 〖~+副詞〗 よろめきながら歩く; ふらついて入る[出る]
stumble across [on, upon, onto] A
A〈物・人などに〉偶然出くわす, 巡り会う; Aを偶然発見する.
(日本語でいう「犬も歩けば棒に当たる」みたいな感覚かな)
「棒に当たる」とは、人に棒で殴られるという意味。 本来は、犬がうろつき歩いていると、人に棒で叩かれるかもしれないというところから、でしゃばると災難にあうという意味であった。 現在では、「当たる」という言葉の印象からか、何かをしているうちに思いがけない幸運があるという、反対の意味で使われている。(故事ことわざ辞典)

oracle: (古代ギリシャで神託を伝える)神官, 巫女(みこ); 神託所.

どれだけ賢い人間であっても、1人で作れば創造主もまた1人の人間であるため不完全さを内在している。このため最初のマトリックスは失敗した。マトリックスから見ればアークテクトは神様だが、もう一段階上の視点に立てば彼もまた生身の人間でなのである。

そこで創造主はグロテスクな人類の歴史を参考にして再度挑戦したと語る。ここでいうグロテスクな要素とは具体的にどういうことだろう。創造主がどのような価値基準で美しいと醜いを判断しているのか分からないが、人類の歴史における愚かな行為といえば戦争やテロを始めとした相手の利益を侵略する行為が代表的なものだと思われるので、殺人を犯すまでの憤怒や嫉妬あるいはそれを助長する競争の原理を持ち込んだということかな。

しかしこの再挑戦も、またもや失敗した。そこから彼は、自分よりアタマが悪いか、もしくは物を知らないアタマが必要だと仮説を立てた。ここはどういう理屈なのだろうか。

常に最強のゲーム理論に基づき行動するプレイヤー(もしくは全く同じアタマの良さの人)が集まればゲームが完全な均衡状態に陥ってジリ貧に衰退するということかな。どこかに「愚かな選択」をするプレイヤーが存在することでパワーバランスに歪みを与えて、そこから波を作り出すことで持続的に活動・成長するモチベーションが得られるということを言っているのだろうか。

そしてオラクルによる精神分析がどうしてそれの解決方法に繋がるのだろうか。その答えが続く台詞の中にある。

▼聖地とは対抗勢力から見れば脅威の火種である:

Architect: Please. As I was saying, she stumbled upon a solution whereby nearly 99% of all test subjects accepted the program, as long as they were given a choice, even if they were only aware of the choice at a near unconscious level. While this answer functioned, it was obviously fundamentally flawed, thus creating the otherwise contradictory systemic anomaly, that if left unchecked might threaten the system itself. Ergo those that refused the program, while a minority, if unchecked, would constitute an escalating probability of disaster.
Neo: This is about Zion.

受け入れたまえ。私が述べているように、彼女は解決方法に巡り合った。約99%のテスト対象者がプログラムを受け入れた。選択肢を与えられている限り。たとえ対象者は正解を無意識レベルでしか気づけていなくても。この回答は機能する一方で、その回答は根本的に欠陥があるので、矛盾するシステムのアノマリーを生成した。それらを放置すればシステム自体への脅威となりかねない。それゆえにこれらのプログラムを拒否したものを、少数派であっても、放置すれば災害の可能性をエスカレートすることになる。
ザイオンのことだな。

whereby: ⦅かたく⦆ 〖関係副詞〗それによって…する(ところの), それに従って…する(ところの)(by which)

flawed: 欠点[誤り, 弱点, 傷]のある.

constitute: 〈物・人・部分などが〉〈物・集団など〉を構成する, …の構成要素となる(make up); …をなす, …に等しい.

Zion: シオン〘エルサレムにあるユダヤ人の聖丘; 昔ここにダヴィデ王(David)が宮殿を建て, その子ソロモン(Solomon)は神殿を築いた〙; 天国, 神の国.

創造主はマトリックスを持続可能に成長させる手段として、構成要員に「愚かな選択肢」という自由(遊び)を与えた。しかしそれは人間が内在している欠点を許すことでもあるので、蓄積すればやがてシステム存続の障害になり得る。それらを適切量に管理(コントロール)するために、危険な因子を捕捉する装置が必要になる訳だが、それがオラクルだったのだ。神の意思を伝え人々を救いへと導く預言者(Oracle)という名前が付けられていながら、実態は神が使わした監視者だったというのはなかなかに衝撃的だ。

映画でなく現実世界では、ザイオン(シオン)があるエルサレムはユダヤ教にとって聖地である。そこでアブラハムは「世界の終わりが来てもユダヤ人だけは救われる」という神のお告げを聞いたとされている。だから映画『マトリックス』のザイオンも「真実に気づいた人が救われる場所」というニュアンスを私は感じていたが、それは人間側が一方的につけた名前でしかなく、マトリックスの側から見れば秩序に従わない少数派の危険分子であり、テロリスト予備軍でしかない。なおエルサレムはキリスト教とイスラム教にとっても聖地であり、異なる宗教が聖なる戦いの名の下に奪い合ってきた土地である。そして本作は2001年のアメリカ同時多発テロから2年後に公開された作品である。当時のアメリカ人には相当ショックな内容に聞こえたのではないだろうか。

Architect: You are here because Zion is about to be destroyed – its every living inhabitant terminated, its entire existence eradicated.
Neo: Bullshit.
TV Neos: Bullshit!
Architect: Denial is the most predictable of all human responses, but rest assured, this will be the sixth time we have destroyed it, and we have become exceedingly efficient at it.

君がここに来たのはザイオンが破壊されようとしているからだ。全ての居住者は抹殺される。その存在そのものが根絶される。
ふざけるな!
*ふざけるな!

拒否は最も予想される人間の反応だ。しかし他の者達は納得してきた。これは6回目の破壊になるだろう。こうして我々はさらに有能な存在になってきたのだ。

inhabitant: a person or animal that lives in or occupies a place.

eradicate: «…から» 〈病気・社会問題・害虫など〉を根絶[撲滅]する, 〈雑草など〉を根こそぎにする(wipe out) «from» .

exceedingly: ⦅やや古⦆ 〖通例形容詞の前, 動詞の後で〗非常に, たいそう(very much).

efficient: 〈機械・方法・制度などが〉効率のよい, 能率的な; 〈人が〉有能な, 手際のよい.

自分がここに辿り着いたのはザイオンを滅ぼすためだと言われてネオは激昂する。それまで1人だけ冷静だった6番目のネオも激昂する。しかしそれも創造主には想定の範囲内の反応だった。

そして、当時これを鑑賞していたアメリカの中間層の白人達も、同じように映画館の椅子に座って怒りを覚えていたんじゃないかと思われる。

▼OneとZionの本来の機能(目的あるいは運命):

Architect: The function of the One is now to return to the Source, allowing a temporary dissemination of the code you carry, reinserting the prime program. After which, you will be required to select from the Matrix 23 individuals – 16 female, 7 male – to rebuild Zion. Failure to comply with this process will result in a cataclysmic system crash, killing everyone connected to the Matrix, which, coupled with the extermination of Zion, will ultimately result in the extinction of the entire human race.

Oneの機能をソースに反映させる時が来た。君が持ってきたコードを一時適用して、中枢プログラムにも反映させる。それから君はマトリックスから23名(女性16、男性7)を選択してザイオンを再建する。このプロセスに従わないことは壊滅的なシステムクラッシュにつながり、マトリックスに接続された者は全て殺される。その時にはザイオンも絶滅しているから、つまりは全ての人類は完全に滅びるということになる。

dissemination: «…に» (情報・知識などを)広めること, «…への» 普及, 宣伝 «to» .

comply: ⦅かたく・主に書⦆ 〈人・組織などが〉 【規則・命令・要求などに】従う, 応じる; 〈物などが〉 【基準・規則などに】沿う, 合致する «with»

cataclysmic: ⦅かたく⦆ 〖通例名詞の前で〗大変動をもたらした〈事件・出来事〉, 激動の(catastrophic); 〘地〙 地殻を激変させる.

extermination: killing, especially of a whole group of people or animals

Oneの機能(目的;運命)は、ザイオンがコントロール可能な容量を超えて増大する直前に合わせてソースに辿り着くこと。そして、ネオはそのようにプログラムされていたアノマリーの集合体である(今回は第6世代)。

そして選別された個体を残して下界は滅ぼされる。つまりザイオンの機能(目的;運命)とはノアの箱舟(洪水;不要なものの清掃)だったのか。

ネオも観客も先程の怒りを鎮めきれていないだろうなのに、どんどん話を進める創造主の鬼畜さ。笑

▼論理を超克した偶有性のある存在への進化:

Neo: You won’t let it happen. You can’t. You need human beings to survive.
Architect: There are levels of survival we are prepared to accept. However, the relevant issue is whether or not you are ready to accept the responsibility of the death of every human being on this world. It is interesting, reading your reactions. Your 5 predecessors were, by design, based on a similar predication – a contingent affirmation that was meant to create a profound attachment to the rest of your species, facilitating the function of the One. While the others experienced this in a very general way, your experience is far more specific – vis a vis love.
Neo: Trinity.

そんなことは起こさせない。お前にはできない。人間には生き残ってもらわないとお前も困るだろう。
生き残るにもいくつかのレベルがあり、我々にはそれらを受け入れる準備ができている。しかしながら、全く同じ問題がある。君は受け入れる準備ができているかね、この世界中の人類の死に責任があることを。とても興味深いよ、君の反応を見るのは。君の5人の前任者は、偶然ではなく、似たような意見を示した。それは条件付きの肯定だ。即ち自分以外の同種への深遠な愛情であり、つまるところそれがOneの機能でもある。他のOne達が博愛の精神を示したのに対して、君は大変に特殊だ。つまり君が示すのは1人対1人の愛だ。
トリニティのことか。

by design: ⦅かたく⦆ 故意に, 計画的に(↔ by accident).

predicate: affirm, or assert (something) about the subject of a sentence or an argument of a proposition.

contingent: occurring or existing only if (certain circumstances) are the case; dependent on:

affirmation: 肯定(すること)(↔ negation); 断言, 確認.

profound: 〈影響などが〉深刻な, 重大な; 〈学識・思想などが〉深遠な, 奥深い; 意味深長な.

attachment: «…への» 愛情, 愛着; 献身, 忠誠 «to, for» ; 愛情のある関係.

general: affecting or concerning all or most people, places, or things; widespread.

ネオに示されたのは、今のマトリックスとザイオンを犠牲に人類を存続するか、全ての人類を絶滅させるかの2択である。創造主にとっては人類が滅亡しても平気ということらしい。この映画の世界では、人類の脳内活動が現在の主電源になっているので、人類が失われても代替技術で電源を確保(供給量はかなり減るのだと予想される)して、細々とやっていくということなのだろうか。

自分という個体のための利己的な行動でなくて、他人に尽くすのが6世代すべてのネオに共通する特徴である。そして過去の5人のネオは合理性に基づき、数百人のザイオンを犠牲にして数十億の人類を救ってきた。命を秤にかけているとも言える。全ての人類の命を等しく愛するならば、合理的に考えれば圧倒的多数を残すべきという結論になるだろう。創造主はこれを「とても一般的で深淵な愛情(profound attatchment in a very general way)」と呼ぶ。

一方で6人目のネオは、たった1人への愛(vis a vis love)を優先する。彼が優先するのは、多数決や合理性を超えた個人への愛である。このようになったのはマトリックスの6回目の起動にして初めてである。

これは創造主の言葉を借りれば、5人目まではby design(必然)に基づいて行動していたのに対して、その反意語のby accident(偶然)を6人目は優先するようになったと言える。たまたまそこに居合わせたトリニティを6人目のネオは愛することにしたのだ。偶然の巡り合わせを6人目のネオは運命的なものとして捉え、そのために尽くし、結果として必然的な数十億人よりも偶然的に愛した1人を優先することを意味する。

なんたることか。究極の決断。こんなの責任とれるかよ。

しかしながら「人間の本質とは、ロジック(必然)を超えて偶有の行動を起こすものである」という考え方もあり、まさに6人目のネオはマトリックスで初めてに人間に進化したOneであるとも言える。全人類という数字が極端なだけで、「他の誰を傷つけてもあなたを守る」という感情を人間は持ち得るからだ。それこそが人間だとも言えるのかもしれない。

人間の営みを再構築しようとしたのがマトリックスだったならば、偶有性を優先する個体が誕生したのはマトリックスが完成したとも言えるのではないか。しかしそれは同時にマトリックスの終焉を意味していたのかもしれないが。

▼選択はもう決まっている;後は理由を知るだけだ:

Architect: Apropos, she entered the Matrix to save your life, at the cost of her own.
Neo: No.
Architect: Which brings us at last to the moment of truth, wherein the fundamental flaw is ultimately expressed, and the anomaly revealed as both beginning and end. There are two doors. The door to your right leads to the Source, and the salvation of Zion. The door to your left leads back to the Matrix, to her and to the end of your species. As you adequately put, the problem is choice. But we already know what you are going to do, don’t we? Already, I can see the chain reaction – the chemical precursors that signal the onset of an emotion, designed specifically to overwhelm logic and reason – an emotion that is already blinding you from the simple and obvious truth. She is going to die, and there is nothing you can do to stop it.

その彼女なんだが、ちょうど先程マトリックスに入ったよ。君の命を救うためにね。彼女自身の命を引き換えに。
そんな。
遂に真実の瞬間がもたらされる。根本的な欠陥を完全に表している。そしてアノマリーは始まりであり終わりでもあることが明らかになった。ドアが2つある。右側のドアはソースに繋がっている。それはザイオンの救出でもある。左側のドアはマトリックスへの帰路だ。それは彼女と、そして人間の種の絶滅でもある。君がまさに言い当てたように、問題は選択だ。しかし我々は君がどちらを選択するのか知っている。そうだろう?すでに、私には連鎖反応が見えている。感情の前兆たる化学反応だ。それは論理や合理性を凌駕するように明確にデザインされている。感情が単純で明白な真実を見えなくさせているものだ。彼女は死ぬし、君にはそれを止めるためにできることは何もないことを。

apropos of A: Aと[に関して]言えば

salvation: 救済

adequately: 適切に

precursor: a person or thing that comes before another of the same kind; a forerunner. 先駆者; 前任者. «…の» 前兆, 前触れ, 前身 «of, to» .

onset of:  〖通例the ~ of A〗 A〈特に望ましくないこと〉の始まり, 開始; A〈病気〉の初期.

自身がマトリックスを再起動すればトリニティは巻き込まれて死んでしまう。というよりも未来のことが既に見えているので、このあとトリニティは銃弾を受けることは分かっている。しかもトリニティの元に戻ればマトリックスのバージョンアップ再起動もザイオン再建も実行できず、結果として全人類は滅ぶことになる。全人類というからには、当然そこにはトリニティも含まれる。つまり結果としてトリニティは死んでしまうことになる。

さあ、ネオはどうするのか。

答えはもう決まっているのだろうと問いかける創造主に対して、ネオは迷いなく左のドア(トリニティの場所へ戻る;人類の滅亡コース)を選択する。

だが、これもネオがドアを選択する前に創造主が言い当てていたね。「遂に真実の瞬間がもたらされる。根本的な欠陥を完全に表している。そしてアノマリーは始まりであり終わりでもあることが明らかになった。」ネオはマトリックスのコントロールを超えた『最初の人類』であり、また『人類を滅ぼす決断を下す存在』でもある。

Architect: Hope. It is the quintessential human delusion, simultaneously the source of your greatest strength and your greatest weakness.
Neo: If I were you, I would hope that we don’t meet again.
Architect: We won’t.

希望。人間の典型的な妄想だ。それは同時に偉大なる強さの根源であり、また等しく弱さの根源でもある。
もし俺がお前だったら、俺には二度と会いたくないと思うだろう。
会うことはないよ。

quintessential: 典型的な

delusion: 妄想(an idiosyncratic belief or impression that is firmly maintained despite being contradicted by what is generally accepted as reality or rational argument, typically a symptom of mental disorder.)

simultaneously: 同時に

もう選択は決まっているのだから、今更言葉で説得して彼を止めることはできない。だとしたら創造主が発したこの考え直すように諭したような言葉の意味するところは何なのか。またしても失敗へと突き進むマトリックスに対する遺憾の表意か。

少し時を戻そう。実はネオとオラクルの会話がバッチリ対応していたのでこちらも引用する。

The Oracle: Bingo! It is a pickle, no doubt about it. The bad news is there’s no way if you can really know whether I’m here to help you or not. So it’s really up to you. You just have to make up your own damn mind to either accept what I’m going to tell you, or reject it. Candy?
Neo: D’you already know if I’m going to take it?
The Oracle: Wouldn’t be much of an Oracle if I didn’t.
Neo: But if you already know, how can I make a choice?
The Oracle: Because you didn’t come here to make the choice, you’ve already made it. You’re here to try to understand why you made it. I thought you’d have figured that out by now.
- - -
The Oracle: Do you see her die?
Neo: No.
The Oracle: You have the sight now, Neo. You are looking at the world without time.
Neo: Then why can’t I see what happens to her?
The Oracle: We can never see past the choices we don’t understand.
Neo: Are you saying I have to choose whether Trinity lives or dies?
The Oracle: No. You’ve already made the choice, now you have to understand it.
Neo: No, I can’t do that. I won’t.
The Oracle: You have to.
Neo: Why?
The Oracle: Because you’re The One.
Neo: What if I can’t? What happens if I fail?
The Oracle: Then Zion will fall. Our time is up. Listen to me, Neo. You can save Zion if you reach The Source, but to do that you will need the Keymaker.

ビンゴ!困った状況よね。間違いないわ。あなたにとって悪いニュース、それはあなたには私があなたを助けるために来たのかそうでないのか分かる術がないということね。だから、全てはあなた次第。あなたは自分だけで決心するしかないわ、私がこれから言うことを受け入れるか、拒否するか。キャンディ食べる?
僕が受け入れることはもう知ってたんだろ?
そのくらいでなくちゃオラクル(預言者)とは言えないわね。
もし結果を知ってたなら、僕には選択なんて無いってことになるよね?
ここに来たのは選択するためじゃないわ。あなたは既に選択済みなの。ここに来たのはなぜそれを選択したのか理解するためよ。まあ今では分かったと思うけれど。
- - -
彼女が死ぬところを見た?
いいや。
あなたには見えるはずよ、ネオ。あなたは時間と無関係に世界を見られる。
じゃあ、なぜ彼女に起きることをは見えないんだ?
私達は理解できない選択は見えないの。
僕はトリニティが生きるか死ぬかを選択すると言うのか?
いいえ。あなたは既に選択したわ。今必要なのは理解することよ。
いやだ。できないよ。しようとも思わない。
でも、しなければならないわ。
なぜ?
だってあなたはOneだからよ。
もしできなかったら?僕が失敗したらどうなる?
ザイオンが滅びるわね。時間切れよ。聞きなさい、ネオ。あなたはソースに到達すればザイオンを救うことができるわ。でもそのためにはキーメイカーが必要よ。

オラクルがネオに告げたポイントは2つ。ネオの選択はあくまでネオが自分で決める(決めた)もので、あとは理解するだけである。そして、ザイオンを救うためにはネオはトリニティを犠牲にする必要がある、ということである。

オラクルはネオに「トリニティを犠牲にしてザイオンを救え」とは言ってない。オラクルがキーメイカーのことを教えたのは、あくまでソースへのアクセス手段としての情報である。

オラクルの言葉を受けてもネオは、モーフィアスをはじめ周囲の仲間達と人類とザイオンを救うべく行動する。トリニティかザイオンかという究極の選択を避けるためにネオはトリニティにマトリックスに入らないように手配したが、結局彼女は入ってしまう。見えてしまった未来は既に決まっていて変えられない。

マトリックスをバージョンアップ&再起動してザイオンを仕切り直すか、マトリックスをバージョンアップせずにおくか。ただし現行のザイオンはあと数十時間で機械に殲滅されることが分かっていて、さらに創造主からはバージョンアップしなければマトリックスはシステムダウンして全ての人類は滅びることが告げられた。

個人の愛か、種の保存か。 

この究極の選択に、ネオは迷わずトリニティを選ぶのであった。

Trinity: Neo, I had to.
Neo: I know. The bullet is still inside.
Trinity: I’m sorry.
Neo: Trinity. Trinity, I know you can hear me. I’m not letting go. I can’t. I love you too damn much.

ネオ、私はこうする(マトリックスに入る)しかなかった。
知ってる。まだ銃弾が体の中にある(から取り出すよ)。
ごめんなさい。
トリニティ。トリニティ、まだ聴こえてるんだろ。君を死なせる訳にはいかない。絶対に。俺は君のことをどうしようもなく愛してるんだ。

ネオは自分が誰を愛しているのか理解しており、だからこそこの選択したのだ。

▼6という数字について:

ところで、このネオが6人目という数字なのも思うところがある。6人目にして明らかに5人目までよりも知性が高い点や、初めて創造主が望まないドアを選択したという点である。というのも聖書の創世記で6日目は「神が自分に似せて人を作った日」であり、初めて自分の意思で行動する人間(つまり神と同等の知性を有し、時には神に逆らう存在)が生まれたとも解釈できる日だからだ。5回の再起動(日没と目覚め)を経て、6回目にしてマトリクスは遂にネオという自由意志を手に入れたのではないか?

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プログラム(死海文書)に書かれていない、つまりアーキテクト(創造主)でさえも予想し得ない展開へ、物語は突入する。

それが三部作の最終章である『マトリックス・レボリューションズ』で描かれる!

ネオの望んだ通りトリニティは救えたが、他の人類はどうなるのか。預言への信念を挫かれたモーフィアスはどう行動するのか。機械が迫り来るザイオンに生き残る術はあるのか。ネオはなぜ現実世界でセンチネルを撃破できたのか。奇襲攻撃に失敗(原因不明でEMPが暴発)した艦隊の唯一の生き残りベイン(スミスでもある)は何を知っているのか。

すごく無茶を言えば、機械がザイオンを殲滅する前にマトリックスを停止させれば人類側の勝利になるのかもしれない。でもこの戦力で何ができると言うのか。

果たして、世界は、人類はどうなるのか。

これは『インフィニティウォー』に匹敵する次作へのつなぎだと思う。楽しみ!

了。

※レボリューションズも視聴後に記事に起こす予定なので興味があればチェックしてください。

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