マトリックス・リローデッド鑑賞記録(1)〜感想編〜
マトリックス・レザレクションズ公開発表を受けて過去作を考察してみるシリーズ第1弾。
字幕なし英語音声で視聴していたが、ラストでいきなり難しくなった。笑
特に最後の白髪のおじさんとの会話がネタバラシであり超重要そうだったので整理しておく。おそらく初見時の私は、英語ネイティブの中学生くらいの理解度だったと思われる。笑
⚠️この記事には #ネタバレ を含みます。
▼初見でわかったこと:
白髪のおじさんはアーキテクトだと名乗った。さしずめマトリックスの創造主といった所だろう。ネオがこの部屋に来ることは仕組まれていた。オラクルも含めてマトリックスで出会った全員が意味までは知らないがネオをこの部屋まで届けるという役割は理解していてその信念に従って行動していたらしい。現実世界で描かれていない人物(オラクル、キーメイカー、エージェントスミス、創造主)は肉体が実在する人間ではなくて、マトリックスのプログラム(の擬人化)なんだと考えた方が良さそう。
ネオは6人目の救世主。つまり創造主は過去に5回同じようなことをしてきたらしい。創造主は「過去に美しいロジックだけで作ったマトリックスは失敗だった」と言ってるので、プログラムを遊ばせて生まれたカオスや突然変異を発生させている(進化論を実践している?)模様。ネオがトリニティを愛してることがネオの個性らしい。つまりロジックだけの世界を越えるのは愛の力ってことね。(パワーオブラブは第1作でも示されていたなあ)
右のドアは彼がソースに到達して世界を滅ぼしてやり直す。左のドアは今の世界に戻ってトリニティと会えるけど人類は滅びる。で、ネオは左のドア(滅亡ルート)を選択してしまった。愛とか希望とかいう感情にまかせて。これは過去の5人とは違う行動だった。(第1作でモーフィアスの手にあった錠剤はどっちだったっけ?)
果てしてトリニティは予知夢の通りに一度死んでしまうのだが、そこからまさかの直接心臓マッサージ(!)を施術して蘇生させる。未来はこれから誰もが予想していなかった展開(創造主が青写真を引いた運命とは異なる物語)へと雪崩れ込んでいく。
⬅︎ TO BE CONTINUED...
▼初見でわからなかったこと:
創造主は最後にネオが破滅を選んでも、なぜ平気な顔をしていた?
創造主の目的は完璧なマトリックスを作る遊びってことでいいのか?
マトリックスのアップデート失敗がなぜ人類が滅亡につながるのか?
▼解説サイトを読んで理解を深めたこと:
さすがに取りこぼしがありそうだったので日本語の解説サイトを一度確認してみた。読んでみたら、私の認識で大体あってた。安心した。笑
ただし理解してない、というか単語を知らなくて聞き流していたから、曖昧なままか、もしくは理解してなかったことに初めて気づいたポイントも複数あった。
こうやって書き出してみるとずいぶん具体的になった。まとめると私は「創造主はマトリックスのアップデートのためにザイオンに突然変異プログラム(アノマリー)を捜索させている」「ザイオンはノアの箱舟である」という部分を読み取れないでいたって感じだった。
👆こちらのサイトを一読させていただきました。ありがとうございました。
▼改めて、疑問点:
しかし私が初見で抱いた疑問はいずれも答えが出てない気がする。
最後の疑問は本当に意味が分からない。創造主の立場から考えれば、ネオが協力を拒んだらさっさと殺して(マトリックスの中で無敵でもザイオンに侵入して物理的に殺せばすぐ実現できる)、マトリックスの中から別の適任者を探して育成して、彼にマトリックスをアップデートをさせれば良いだけ、つまり第6世代の実験をやり直して従順なネオが発生するのを待てば良いだけ(今回のネオは尖りすぎた失敗作だったからトライアンドエラーの精神で損切りすれば良いだけ)ではないのだろうか。
ザイオンにいる人間というのは、マトリックスから飛び出した存在だ。彼らはマトリックスのプログラムではない部分で人間社会を成長させて、マトリックスにバージョンアップを提供する外部装置みたいなものである。
一方でマトリックスにはまだ何十億人という人類が接続されてエネルギー供給源になっているはずだ。第1作で「気づく」前の状態のネオと同類の個体である。つまり代わりはいくらでも居るはずだ。今回の6人目のネオがマトリックスのバージョンアップを拒否しただけで、何十億の人類が滅んでしまう理由が分からない。
もしかしたら、映画のラストで生身のネオが電磁波でロボットを機能停止させていたので、そこらへんが鍵になってくるのだろうか、とは思うけれども。このままネオを放置したらマトリックスを壊してしまうプログラムになっている、とか。(マトリックスが停止すればそこに接続されている人類が生命活動を維持できなくなるというのはありそう)
そもそも創造主はなぜ「人類が滅亡する選択肢」を用意していたのだろうか?プログラマー的な視点で考えればここでそんな分岐処理を入れる必要はなかったのではないかと思ってしまうが。
なお創造主は原語ではArchitectと名乗っていて、直訳すると設計士とか建築家になるのだが、ソフトウェアプログラムの世界では書くことが即ち作ることになるので、私は自分の感覚を信じて「創造主」という言葉を宛てた。このワードのチョイスで良かったのかも続編で分かるかもしれない。
▼ここで観賞後の考察:
いやあこの作品さ、、、興行的には失敗作だったみたいな扱いになってるし、2021年の新作レザレクションは1作目からの続編(つまりゴジラシリーズにおける1984年版やVSメガギラスのような位置付け)みたいな噂も見かけたんだけど(ネタバレ回避したくてあんまり記事などは読んでない)、、、
マトリックス・リローデッドめっちゃオモロイやん!!(今更www)
この記事を執筆時点でレボリューションは未視聴なのだが、ワクワクが凄いことになっている。劇場公開当時は私はあまり映画を観てなかったんだけど、これは惜しいことしたかも。笑
👉作品テーマ(ノアの箱舟):
第1作は『不思議の国のアリス』だったけど第2作は『ノアの箱舟』なのね。
ノアの箱舟で男7女16とそれなりに大人数を選出しているけど、ザイオンにいるのは白人と黒人ばかりでアラビア系やインド系そして東アジア系の顔がほとんど確認できないのは、いかにも2003年頃のアメリカの社会情勢を反映しているようで興味深い。少なくとも5人目のネオは白人と黒人だけ選んだってことでしょう。
それで監督はそういう保守的な思想を持っているのかと思いきや、近年では兄弟そろって性転換手術で姉妹になっているとかリベラルな側面もあって、本当に面白い。(笑ってはいけない)
これで2010年ごろの作品だったらもっとザイオンに東アジア系が出てくるだろうし、2020年近辺ならアラビア系とインド系も出てくるだろう。ちょうどポリコレの圧力を逃れることができた最後の世代なのかもしれない。ディズニーがスターウォーズで世界観をぶち壊してまでダイバーシティに配慮した『最後のジェダイ』がアメリカで大議論になって、一方でフルフェイスのヘルメットで顔を隠して、バディには肌が緑色のパペットでお茶を濁した『マンダロリアン』が自由に創作できて高い支持を得たのはご存知の通り。うーん色々と見えてきて本当に面白い。
もしかして映画で描かれているマトリックスは複数ある中の一つで、たとえばこれは北アメリカ地域のもので、アジアやインドやアラビアやヨーロッパなど世界の別地域には別のマトリックスが存在するのかな?(キリスト教圏ではない文化でも実験するというのは有用そう)
👉作品テーマ(AI開発):
第1作は「現実だと思っていた世界が全て仮想現実だったらどうする?」という物語が1999年当時はすごく新しく感じた。続編ではその設定やメッセージを引きずってアクションを展開するだけなのだと勝手に思い込んでいたのだけど、いざ視聴してみると「進化論をAI技術の開発に応用する」というこれまた2003年の人工知能開発のトレンドをメインで取り扱った物語だったとは興奮した。
ちなみに当時はAIがまだバズワードとして社会に定着する前だったが、2001年にシックスセンスの子役でキューブリックとスピルバーグの共作という話題作があったので言葉自体は知られていた気がする。
モーフィアスが神の預言(prophecy)を信念として常に泰然としている姿は、映画の中では一貫して『正しそうなもの』として描かれるのに、最後にマスターマインドから事実を知ったネオに「全ては嘘だった:黙示録ではなかった:人間により仕組まれたプログラムだった」と断言されて、彼が落胆する展開はかなりアツい。今まで救世主だと思って彼に尽くしてきたのにこれはショックだよね。モーフィアスがこんな顔をするのは1作2作を通じて初めてだったと思う。
👉作品テーマ(創世記):
ネオが6人目にして初めて創造主が望まないドアを選択したというのも少し気になる。というのも聖書の創世記で6日目は「神が自分に似せて人を作った日」であり、初めて自分の意思で行動する人間(つまり逆らう存在)が生まれたとも解釈できる日だからだ。5回の再起動(日没と目覚め)を経て、6回目にしてマトリクスは遂にネオという自由意志を手に入れたのではないか?
なんだろう、西洋の映画は聖書をモチーフにして深みを作れるから本当に羨ましいよね。これが日本だと本来は古事記や日本書紀とかをトレースしてウィットとエスプリに富んだ物語を創作できそうなものだけど、肝心の国民にそこまで深く理解されてないから殆どで空振りしてしまうのが歯痒い。一方で源氏物語や枕草子のようなニュアンスを湛えた作品は大衆受けする傾向があるのは、それらが戦後教育で排除されなかったからだと思うんだよな。それだけに残念。
👉アクション描写:
実は、冒頭のバイクジャンプ+爆発とビル落下のシーンが第1作と全く同じクオリティで正直つまらないと思ったのよ。白状すると、2ヶ月前に一度挑戦してそこで私は視聴を止めてしまっていた。笑。その時にこう判断した。これ時間の無駄だわって。ごめんなさい。
だって映像は第1作と同じか少し劣化したクオリティで、しかもバイクジャンプとビル落下と銃弾スローモーションという第1作のコピーみたいなアクションが続いて、しかもそれがネオの夢オチって。てめえふざけんなって気持ちにもなりますよ。(実はこれは予知夢だったと後から分かってめちゃ興奮するおばかさんがここに居ます)
でも『レザレクション』のニュースが飛び込んできて、作中にリファレンスがあったら自分で気付きたいから、改めて視聴することにした。そして我慢して観ていたら、途中からまずは物語の面白さに引き込まれ始めた。そして中盤からアクションの質がグンと上がったのよ。これは意外な喜びだった。なんだ、めちゃ格好良いじゃん!笑
本作の視聴は私にとってまさにReloaded(やり直し)であり、私の中ではマトリックスのResurrection(復活)でもあった。
高速道路のアクションシーンは本当に良い。全体のテンポや見せ方が本当に上手い。第1作はビジュアルの決まり具合がまるで攻殻機動隊のトレースのような完成度で、1コマでも良さが分かったのだが、本作は一連の流れの中で相乗効果で盛り上がるようによく練られている。野球に例えると、第1作がソロホームランと三振の連続で勝利するゲームなのに対して、第2作はヒットや盗塁で打線がつながって勝利するゲームに似ている。
予告編やテレビ番組で紹介されるような短い切り抜きではこれは分からない。マトリックスリローデッドは2021年に観ても全く見劣りしない完成度だし、あれだけ簡素なプロップでここまで「観られる」ものにしているのは驚異的なことだ。当時は白髪ドレッドヘアーのグラサン兄弟がやたら宣伝されていた記憶があるのだが、大事なのはそこじゃない。もし未見の方がいらしたら、あんなのは添え物ぐらいだと考えた方が良い。シーン全体の長さもテンポも展開も全て完璧。映画史の中で、もっと評価されるべきアクションシーンだと言える。(私の中ではミッションインポッシブルローグネイションを超えた)
一方でネオとエージェントスミスの格闘シーンは、キャラクター造形や人数など、とりあえず配置するだけ真似しやすい特徴があっただけに、その後に様々な映画で真似されて、技術の進化とともにより高クオリティなフォロワーが多く輩出されてしまったので、今になって観ると多少は見劣りするのは避けられないところだ。同じ顔が並んでいるから画面的に面白いだけで、多人数の格闘アクションとしては至って普通。まあ元々がジャッキーチェンのトレースみたいな所があるから、これは仕方ないだろう。
ちなみに同じ格闘シーンでもキーメイカーを奪取する屋敷での戦闘はスローモーションの使い方が効果的で良かった。高速道路シーンに通ずるものがある。当時は全然宣伝に使われてなかった気がする。
👉セクシー描写:
事前情報をほとんど入れずに見たんだけどモニカ・ベルッチが出てきて私は歓喜して変な声が出た。キスするだけで服着てるのになんでこんなにエロいのか。本作でも、しっかりファムファタールとして存在感バツグンだった。映画の物語には大した意味を持たなかった(トリニティに警告しただけな)ので、本当に彼女が必要だったのかは分からない。笑
逆にセクシー全開で来たのがトリニティ。ネオとのセックスシーンも結構長くて驚いたけど、それ以上にエレベーターで同僚が降りた直後にディープキスを始めた時の方がオラびっくりして面食らっちまったぞ。ネブカドネザル号ではプライバシーの問題でセックスできなかったから欲求が溜まりまくっていたのだろうか。笑
ザイオンの集会でモーフィアスの心揺さぶる演説の後、いきなりアフリカンで野生的なリズムに乗って住民が全員でダンスをするのには笑った。安全な場所とはいえ、あんなに大騒ぎしてたらそりゃロボット軍団にも見つかるでしょうよ。いかにも00年台前半らしい(まだ90年代の性格を引きずる)当時で一番刺激的な音楽をガンガンに鳴らして、みんなが官能的なダンスに溺れていく。そして真夜中になるとちゃんとお行儀よくみんな個室に戻る。なんだその可愛い設定は。笑
いずれもSFコミックに出てくるお色気要素って感じで良かった。笑
▼原文を読んでみる:
さて、先に紹介した解説を書いてくださった方には大変感謝しているし疑うつもりは毛頭ないが、そちらの記事では日本語字幕のみを手がかりにしているので、結局字数の問題とかで情報が削除されているニュアンスがあるだろうと思ったので、原文を参照した。
すでに記事がかなりの長さなので別の記事に分けたいと思う。
この続きは(2)でお会いしましょう。
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了。
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