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スナイダーカットはテネットである

断言します。2作は酷似しています。

証明するために両者の特徴を書き出します。

⚠️ネタバレ注意:この記事は映画『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』と『TENET テネット』の結末に言及しますのでご注意ください。

▼比較:

スナイダーカットのラスト:
・決戦の場所がロシアの荒廃した原子力村である。
・悪が立体パズルを組み立てて最終兵器を完成させる。
・最終兵器が発動したら世界は終わり。
・登場人物が時を逆走する。
・時はあくまで巻き戻るだけでパラレル世界にはならない。
・逆走するときの音楽はエレキギターでエコー強め。

テネットのラスト:
・決戦の場所がロシアの荒廃した原子力村である。
・悪が立体パズルを組み立てて最終兵器を完成させる。
・最終兵器が発動したら世界は終わり。
・登場人物が時を逆走する。
・時はあくまで巻き戻るだけでパラレル世界にはならない。
・逆走するときの音楽はエレキギターでエコー強め。

ほら。なんと、完全に一致するではありませんか。

舞台や映像的な特徴だけでなく、音楽まで!笑

▼舞台と仕掛け:

それまでアメリカが舞台だったスナイダーカットも、世界を股にかけていたテネットも、最後はロシアの荒廃した原子力村に行きます。まるで「都市で戦闘すると迷惑がかかる」という理由で善玉も悪玉も揃っていそいそと荒野に移動する『ドラゴンボール』のようです。あちらは鳥山明先生が「本当は市街地を描くのが面倒だっただけ」とのちに暴露していますが。笑

冷戦の宿敵だったロシア(ソビエト)を筆頭とする社会主義国家にアメリカと西欧の資本主義国家が勝利してから数十年が経ちました。一時期はハリウッド大作にマネーの力とダイバーシティの看板を掲げて強引に割り込んできていたチャイナやアラビア諸国の影響も最近は反動なのか鳴りを潜める傾向があり、そうなるとアメリカ映画で持ち出されるのは専らロシアの荒廃した田舎です。まあアメリカの仮想敵なのでチャイナ・アラビア・ロシアが筆頭になるのは必定で、チャイナとアラビアは現在の緊迫した世界情勢ではリアルに見えすぎて笑えないので、「過去の国」であるロシアが多用されるという側面はあるのかもしれません。なんというかアメリカにとって、チャイナは現在係争中の相手なのに対して、ロシアは元恋人で今は普通に話ができる関係って感じがします。笑

とにかく、事実としてスナイダーカットとテネットは最終決戦の土地に「ロシアの田舎の荒廃した原子力施設とその周辺の村」を選びました。夜間と日中という照明条件の違いはありますが、「廃棄された施設でヴィランが悪の企みを実行しようとするので、それを阻止する」というプロットは完全に一致します。

しかもそのヴィランの企みは「現代科学を超越した技術の立体パズルを組み立てると実現する」という仕掛けも、ひとたびヴィランがミッション達成すれば世界規模で人類が滅亡するという点も、そしてそれを時間の逆行を駆使して阻止するという点も、全部がそっくりです。これは言い訳できないレベルでしょう。笑

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👆しっくりきすぎてて草。

▼時間旅行の扱い:

これまでタイムトラベルものと言えば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に代表されるように時間軸がパラレルに展開する(同じ時間に重複して存在できる)のがお決まりでした。最近では『アベンジャーズ:エンドゲーム』でもこのルールを取り入れています。昔から日本人に馴染み深い『ドラえもん』もこのタイプです。

一方で2020年に公開された『TENET テネット』は時間を逆行させるという違ったルールを長編映画でメインに扱った最初のエポック的な映画でした。それまでもテープを逆再生する映像効果は、たとえば音楽系のMVで水に飛び込む様子を逆回転させるとか、あるいは野球の珍プレー好プレーなどで、一種のお遊び的な要素で取り入れられるなど見かける機会は多かったかもしれません。しかしそれをメインテーマとして丸々1本の映画を作ってしまったところがテネットは衝撃的でした。

しかしテネットに先行すること3年。本来の公開予定だった2017年の時点で、まさにそういう時間逆行の仕掛けをクライマックスの最重要ファクターとして既に採用していたのがスナイダーカットなのです。

これはデボラ・スナイダーが雑誌のインタビューで語ったのですが、スナイダー監督とノーラン監督は2013年頃から意気投合して良き友人であり、ノーラン監督はこの数年来ずっとスナイダーカットの公開に向けてサポートしていたことを明かしています。もしかしたらお互いにアイデアを出し合って「逆再生でアクション映画が撮れたらクールだよね」みたいな話をしていたのかもしれません。笑

ちなみにWikipediaによると、両作品の制作を始めた時期も近いです。これは状況証拠はかなり揃っていると言えるでしょう。笑

Following the release of Man of Steel (2013), director Zack Snyder outlined the basis of the DC Extended Universe (DCEU), which centered around a five-film arc including Man of Steel, Batman v Superman: Dawn of Justice (2016), and a Justice League trilogy.
スナイダーはMoSのリリース後の2013年にDCEU全体の物語を設計した

Writer and director Christopher Nolan conceived the ideas behind Tenet over the course of twenty years, but began working on the script in 2014.
ノーランは20年来のテネットのアイデアを2014年から脚本にした

おやおや、これは「テネットのアイデアを先に公開されることを嫌がったノーランが、ワーナーに圧力を掛けてスナイダーの映画を潰し、タイムトラベルを使わないジョス・ウェドン版を2017年に劇場公開させて、自身の2020年のテネットを映画史に残る作品にした」という創作サスペンスが書けそうではありませんか?まさかのノーラン陰謀論。笑

▼音楽:

音楽については、聴ける環境がある方は数十秒で良いので意識して一度両者を聴き比べていただきたいです。少しテンポは異なりますが、サウンドの作り方やメロディの展開が似通っていることが分かります。(下記リンクは分かりやすい位置まで時間調整してあります)

どうでしょうか?

メロディが同じ音階を階段のように上がっては下がるのを規則正しく繰り返す感じとか、全体にモワッと広がるオーケストラにエフェクトのかかった電子音がリズムを刻む感じが似ていると思いませんか。

特に音響に関しては、この奥行き感のあるサウンドが、テープの録音スピードを駆使したような効果があり、それで時間を操っているような印象を与えられると両作品の音楽担当者が考えて、結果的に似てしまったのかもしれませんね。

ZSJLの音楽が録音されたのは2020年がメインだと考えられるのでTENETの方が制作時期が早かったとも言えますが、実はZSJLのトム・ホルケンバーグは2016年時点で作曲自体は完成させており後はオーケストラを招集して録音するだけだったとも発言しているので、音楽もまたどちらのアイデアが先だったのか判別がつかない状況です。さすがにZSJLのために全曲を完全に作り直したとは考えにくいと思うので。

Wikipediaだとどちらとも取れる記載でした。

Tom Holkenborg, also known as Junkie XL, composed the film's score; he had previously worked on the score for the theatrical version of Justice League, before being replaced by Danny Elfman following Snyder's departure and Whedon's arrival. When Holkenborg was rehired to score the film in early 2020, he decided to restart and make a brand new score for the film, which consists of fifty-four tracks and is three hours and 54 minutes long.
ホルケンバーグは2020年前半に再雇用されてから新曲を作っている

Varietyの記事によるとワンダーウーマンとアクアマンとサイボーグとアポコリプスとバットマンのテーマは追加で作曲したとも読み取れる記述ですが、フラッシュには言及がありませんでした。

個人的には2020年の作業というのは、ラストバトルでの『Come Together』にそっくりな曲など契約の都合で使えなくなった部分と、エピローグで追加された部分の対応がメインだったのかな、と私は予想していたのですが、実際にはどうだったんでしょうね。

▼王道ゆえに似るのか:

以上が、スナイダーカットとテネットの類似性を整理してまとめたものとなります。

さて。実は数ヶ月前にも私はスナイダーカットとエヴァンゲリオンの類似性を指摘した記事を書きました。笑。これは何故でしょう、普遍的なテーマを最適な描写で表現しようと思うと、どうしても似通ってきてしまうということなのでしょうか。割とそういう筋はあるのかもしれません。

了。

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