海沿いの小さな町。髪が多めな旅館の女将さんが、開口一番に言う。「ここに嫁いで来たことで、こんなに髪が増えた」と。海産物がいいんでしょうか、と当時は生返事だったが、今はその理由を知りたくてたまらない。(99文字) 深夜、自転車で帰宅していると、向こうからすごいスピードで平行移動するものが。自転車か? よく見ると一輪車だ。さらに観ると、乗っているのはスーツ姿のお兄さん。ネクタイを乱舞させ一輪車で夜を疾走する気分。(100文字) 家の近くの緑道を抜けたところで突然。少年が小さな
スマホを忘れてきた。 気がついたのは、熊谷駅。早朝に実家を出て、父にクルマで送ってもらい、別れたあとだった。 改札に向かうエスカレーターを上がりながら、「あれ?」となった。 目の前に、公衆電話が現れた。 たしかテレホンカードがあったはず。手帳には、父と母の携帯番号が記載してあった。 父に電話するも、出ない。運転中だろう。 母に電話すると、出たが切れてしまった。もう一度かけ直す。 このあたりで、慌てていた気持ちがずいぶんと落ち着いていることに気がついた。 「今日はスマホなしで
自宅から、自転車をこいで10分。板橋区の住宅街に突如現れた畑。 待ち合わせ場所となっている畑には、すでに人がいる。ここの主だろうか。約束をした友人は、まだやってきていないようだ。 先に挨拶をし、収穫を手伝いに来たことを告げる。 ここは、THE HASUNE FARM。有機野菜がすくすく育っている。 自宅の近くに、こんな素晴らしい有機の畑があるなんて……! 興奮しながら畑の主とおしゃべりしていると、道のほうで大きなエンジン音がした。 約束の人がやってきたのだ。 この人は、大
ステッカー。 どうしても、その流れに乗れない自分がいて、さみしさを感じていた。 パソコンに貼る人。ノートに貼る人。冷蔵庫に貼る人。 それらの行き場所を決めている人がうらやましいとも思っていた。 同じところにたくさん貼る、ということでいいんだろうか? センスがない私は、自分を満足させられないだろう。 パソコンやノートなど、持ち歩くものに貼ってしまうと重量が出る。格安航空券を利用し飛行機に乗っている私には、手荷物7キロの壁が立ちはだかる。1グラムでも死活問題だ。 ステッカーひ
つぐみちゃんが猟師になった経緯などは
「心があるかどうか」 仕事をするうえで、どんなことを大事にしたい? という話題での玉井さんのことば※。たとえ自分発祥でなかったとしても。ともに働く人たちに向けて、気持ちを送れるかどうかは自分次第なのだ。(100文字) 玉井さんの釣りについて野反湖へ。やさしい眼差しが変わる。自然の中へ入ることの緊張感をともなう目。湖に膝まで浸かって釣りをしていると、別の釣師がやってきた。距離感をはかっている。いつもよりもっとずっと。(100文字) ひとり野反湖の遊歩道を歩く。熊鈴の音が遠く
目を覚まして体操。ラジオを聴きながら部屋を整え、朝ごはん。10時、カフェ「アサマヒュッテ」へ。通勤時間は1分。コーヒーを飲みながらパソコンに向かう。途中、ハエが遊ぼうとアピール飛行。おのおのに過ごす。(100文字) さわやかな、雨の中の、寒風吹きすさぶ……。あらゆる紅葉が見られる。けれども、とりこぼしている風景や物語もたくさんある。眼の前のことを「非日常」で済まさずに、日常の延長線上にいることをかみしめたい。(98文字) 薪ストーブのある暮らし。最初は薪のくべ具合や火の様
夏にがんばったカラダが、秋になっていく。 今朝は特に、起きるのがつらかった。 過ごしやすい気候になって、カラダがもっと眠りたいと感じているのだろう。 「がんばれ、がんばれ」と言って起きる。 なんとか寝床から抜け出し、仕事にとりかかる。今日はやることが多いのだ。 原稿を書いて提出し(ちょっと遅れてしまっていた)、別のプロジェクトのメールマガジンの素案を提出。週明けにお世話になる方へのメールを送り、しい茸農家さんの新しいパンフレットの素材をデザイナーさんへ。 冬物の衣類ケ
横断歩道の隅に腰かけ、机や椅子に紙を貼ってなにやら主張しているおじさんがいる。それが何を示すのかがわからない。発信している人がいるのに受け取れない。街や人は馴染みがあるのに、ことばだけ見えない不思議。(100文字) ソウルでは、遊歩道を見つけて散策。昔は鉄道が走っていた道だったみたいだ。ここは自転車もキックボードも禁止。歩く人だけの道。植栽もいい感じ。両サイドには魅力的な飲食店が並ぶ。その一軒に思い切って入る。(99文字) 韓国を共にした友人は、よく一人で海外旅行をする。
ごはんでふりかえる9月。 今年の初物。新鮮なサンマは肝がおいしい。納豆と、友人が贈ってくれたタケノコのアチャールをのせた冷奴とで一杯。 9月前半は、料理の意欲が高かった。 YOUTUBEの料理ドラマ「ひとりごとエプロン」を観て、胸肉の唐揚げが食べたくなって作る。蒸し焼きにしたブロッコリーに粉チーズと胡椒。インゲンにはマヨネーズと大葉胡椒(大葉唐辛子)を和えて。 ビール用のグラス、新しい子を迎え入れました。気に入ってます。 気温が高い高い……。牛乳を注ぎ足して作っているヨ
ネオな海藻の販売を手伝うため百貨店へ。この香り高い海藻を知ってから、すっかりファンになっていた。はりきって参加。普段、一人黙々と机に向かうことも少なくないわたし。接客という仕事、嫌いじゃないのよね。(99文字) 売り文句を変えながら、目の前のお客さまをこっそりと観察する。赤いワンピースと大きめのお帽子でエリザベス女王のような素敵なマダム。柄物のスーツを着こなす紳士も。目も楽しい。つい口にする「素敵ですね」。(99文字) 多くの店舗が入る百貨店。なんというか、店員さんたちが
秋が来た。まだまだ残暑が厳しく、額からつたう汗がそれを認めてくれないが、そう思い込むことにした。 この秋は、自転車に乗るぞ! 15年ほど前に思い切って購入したロードバイク。先日やっと整備したので、なるべくたくさん乗りたい。 長い距離にもチャレンジできるようになりたい。 まずは3キロ、5キロ……と近所の移動距離を伸ばしているところだ。 「今日は思い切って巣鴨まで行ってみよう」 調べると自宅から巣鴨までは、11キロ。 時刻は15時。ここから出かけたら、到着は夕方になる。 い
何年も前のことになるが、アンティークショップでボトルをもとめた。 大きすぎず小さすぎずで、ボテッとしたフォルムが可愛らしく、気に入った。 ただ、そのボトルにはふたが付いていなかった。 けれども手にしたそのとき、わたしは高らかに宣誓した。 「あなたに合うふたを必ず見つけてあげますからね」 花瓶として使ったり、和紙を丸めて飾ったりもできたろうに。 なぜかわたしは初めから、このボトルにふたを見ていた。 その後、別の店で見つけた小さな木製の栓を購入。いそいそとボトルにあててみ
カメラのキャップがどこを探してもない。あきらめた数週間後、急遽実家に帰ることになる。迎えに来た父の車の後部座席に乗り込む。「いやあ〜すまんねえ……あれ?」。お尻にあたったこれは、キャップじゃないか!(100文字) 取材の帰り。総武線の車内。向かいには若いお嬢さん。千葉駅から御茶ノ水まで。約1時間。ずうっと。笑っている。スマホに向かって微笑んでいる。推しを愛でているのかしら? なんだかこちらも嬉しい気持ちになる。(100文字) ラジオで耳を持っていかれた話。「今ハマっている
友人へのおつかいがてら、横浜へ。約束の時間まで神奈川県立図書館へ。汗をかきながら坂を登る。上からは日傘をさしたマダムたちが降りてくる。新しい図書館はパソコンを広げる人にもやさしく、仕事もはかがいく。(99文字) 「えいや!」と、15年乗っているロードバイクを坂の上の自転車屋に持って行き、メンテナンスを依頼する。思いのほか早く対応してもらえた。少し早めにピックアップに向かい、最終チェックを受ける愛車を眺める。(99文字) 夕方、公園を散歩。「あ、そういえば」。コンビニでみか
ぐっっっっっっすり眠った。 いつもより深く眠りすぎたのか、すこし頭痛を感じる。 2日前に受けたセラピーを思い出す。 韓方よもぎ蒸しとタイ式セラピー。 よもぎを煎じた蒸気を下半身を中心に体全体に浴び、発汗してデトックスするよもぎ蒸しと、内臓と子宮のマッサージを体験したのだ。 *** 年下の友人・タカハシちゃんがある日突然、カラダと心のケアをする人になっていた(突然というのは、わたしの見方。もともと彼女は、おいしいごはんをつくる人であった。そこから本質を見つめつづけ、カラダ