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話を聞きながら

今日はすこし、仕事のはなしを。

「あ、わたしはインタビューをなりわいにしてもいいのかもしれない」と思った、出来事がある。

80代のレジェンド・盆栽職人に話を聞きに行ったときのこと。

取材の待ち合わせ場所には、担当の編集者・スドウくんが緊張の面持ちで立っていた。何度も何度もオファーをし、やっと受けてもらえるインタビューなのだと言う。
わたしも彼らとは初めての仕事だった。菓子折りの袋を両手で持つ編集者の顔をちらと見ながら、「あんまり引っぱられないようにしよう」とだけ決めた。

そうやってスタートした、盆栽職人・木村正彦さんへのインタビュー。
伝説か、はたまたおとぎ話のような逸話の数々や品々(盆栽!)を前に圧倒され、夢中になって話を聞いていたら、約束の時間はあっという間に過ぎていた。

取材先をあとにし、「あれはすごかった、これも素晴らしかった」と興奮して話をしていると、スドウくんのボスであるヨコタさんが言った(同行してくれていた)。

「アズアズさん、話を聞くのがうまいですね」

……へ?
正直に書いてしまうと、そう思った。
楽しくおしゃべりをして、興にのった木村さんが取材には関係のなさそうな秘密の話まで披露してくださって、お互いにいい時間を過ごせたようでよかった。
そう思っていた。
話の聞くのがうまいとか下手とか、考えたことがなかった。

「そうかなあ〜?」
頭をかきながらも、実は嬉しかった。何がうまいのかはちっともわからないが、いい時間を過ごせたうえに、褒められたことに。

こうしてわたしたちは、たくさんのインタビューをした。

件の木村正彦さん。インタビューを長い文章にまとめるのも初めてのことだった。自分が体験したこと、心が動いたことを書いていったら、予定よりも長くなった。
編集チームと一丸となって、泥んこになって取材。このときに矢野智徳さんにインタビューすることができてよかった。野原や風の見え方が変わりました。
祐成陽子さんには、笑顔とパワーとハッピーをたっくさんおすそ分けしていただきました。軽やかにへいちゃらに。そして、おしゃれに。
普段、校閲に関する取材は受けないという柳下恭平さん。特別にお話を聞かせていただきました。このインタビューもまとめるのに難儀した〜!
まずは一緒にまちを歩いて、植物たちと仲よくなるところから。村田あやこさんとともに目を凝らしていくと、本当に仲よくなれた気がするので不思議。
九州へも行きました。大活躍のダンサーyurinasia(ユリナジア)さんに会いに。気さくにインタビューに応えていただきながら、実際に踊ってみせてもらったときには鳥肌が……!
ものすごく奥が深い書体の世界。藤田重信さんのお話。文字の宇宙を浮遊するかのごとく、原稿と向き合いました……! 興味のある世界が広がりました。
瀬川信太郎さんには、関心の赴くままに話をうかがいました。聞けば聞くほど楽しい郷土玩具の世界。途中で出てくるにゃんこと瀬川さんの写真がお気に入り。
土がカタチになっていくシーンを、感じたままに書きました。陶芸家・吉田直嗣さんにお話をうかがえたこと、いまの自分の糧になっている。
先日アップされた記事。指揮者・三ツ橋敬子さんのお話もあっという間に時間が経っていました。指揮者は背中にも目がついている……!?


10名のインタビューイが並ぶ。こんなに取材をさせてもらったんだなあ。

大元はメガネのJINSさんによるメディアで、「見る」はいろんなことに置きかえられるし表現ができるとして、『「見る」の開拓者たち』という連載でのインタビューだった。
この連載、27回をもって更新休止となるそう。
ちょっとさみしいけれど、たくさんの学びと気づきをもらえた機会に感謝。

またどこかで、人の話を聞こうと思います◎

special thanks to Camp inc. 横田 大 & 須藤 翔

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